第21話―忌むべき過去と現在の在り処―

今日から復学。

歓迎されるはずがなく教室は変わらない。


「あの太いの来たんだ」


「あっ、居たね。なんか」


まぁ、これが当然な反応だろうよ。

助けた五穀舞は俺のために知名度を向上を図ろうが芳しくない。

同じ暁光ぎょうこう高校に通う女の子をふしだらな視線を送れば近づこうとしない。


「変に期待するべきし、ではないから」


誰も聞こえないよう声量を落とした弱音。

寝顔を隠そうと腕を囲む寝たフリするスタイル、

今日はそれをする気分にはならなく席を立つ。

廊下でも徘徊しよう。

雑念とかを無心になろうと出ようとして教室に入ってきた五穀舞と出くわす。


「「……」」


運が悪い。

変に無音で向き合っているのも周囲からどう見られるか。


「あの……」


「グフフ。今日のゲームは何しようかな」


「えっ。えーと?」


「近いうちに可愛い女の子。来ないものかな」


どちらも望ましくない。

接点があってはならない。我関せずと話すことなんてあるはずが無く、振る舞わう。

独り言をつぶやきながら五穀舞を横切って廊下。


「やっぱり独りでいるのが俺なわけだし。

彼女をこれ以上の関わりは持つべきではない。

これを機に断つ。それがお互いのため」


これからも赤裸々に直視する状況を作らなせないし

自然消滅するだろうと俺は読んでいた。

――今日のカリキュラムが半分まで経過した正午。

まず結果をいうなら五穀舞がそうとしない体質のようであった。


「私を避けていること。まるで他人のようにしていること、そして先までの言動がうやうやしいことも含めて話を訊かせてくれない?」


「なっ、なんだと……」


いわれなき誹謗と蔑視を浴びせられる空間に鬱憤を払おうとして俺は廊下を歩いて曲がり道で五穀舞が

待ち伏せていた。


「さぁ、行こうか」


「ハァッ。どこに……でしょうか?」


「盗み聞きされないたり偶発的に言葉をキャッチされない場所を変えようと行っているの!」


「ああ、なるほど。

えっ?結局どこにいくのですか!?」


それに応えず先を促す。

とりあえず理解したのは人の少ない場所へと移ろうと誘っている。

こんなの付き合い切れない。俺は逃走を試みる。


「んっ?……はいぃぃーー!?

待ってえぇぇーー。どうして逃げるの」


悲しいかな。教室の女神であられる五穀舞さまは

文武両道であられる。


「はぁ、はぁ……」


すぐ追いつかれた。悲しいかな。


「追いかけっこ終わりのようね。

さあ私と来てもらおうか……斑鳩平次くん?」


元々こちらは体力なんてそれほどない。

毎日ランニングされる五穀舞が追跡されて逃れる訳が無い。


「不敵に笑って……五穀舞さんは悪役ですか?」


「フッフフ。もしかすると相手を追い詰めるの好きかもしれない。

って、いけない変な道が開きそうになった」


「そんな言葉も口にされるんですね。

間違っても教室でしないでください」


「どうして?」


可愛いく、純情そうな疑問な声音、首を傾げる。


「どうしてって……よく省みてください」


「かえりみる。私は後ろや先のことを見据えるなんて器用なことは不得意なものでね。

目の前で起きている今という時間と場所でしか

見れないんだよね」


「とても感無量なセリフだ。

ですから腕を離してくれませんか」


「イヤ……かな。

また逃げ回られると昼食の時間が終わるからね」


左様ですか。

俺は五穀舞に捕獲されてしまい連行される。

通りすぎる生徒たちからの奇異な視線が痛い。

捕獲して連れられたのは空き教室だった。


「それでこんな俺になんの用なのですか?」


「不機嫌な態度されると少し悲しい」


肩を落としながら顔を俯せる五穀舞。

これはあまりにも。


「あからさま過ぎませんかね」


同情したくなるほど寄り添えたくなるだけよ落ち込んでいるのを見せつけられた俺は呆れて指摘。


「えっへ」


舌を出してウインクの五穀舞は誤魔化そうとする。


「えっへ、ではありませんよ」


「ねえ、知っていた?空き教室を余裕教室だって」


「へぇー、タメになるし知らなかった。

じゃあ本題にしないか」


こんな可愛らしい表情でグラとはしない。

たとえ教室の天使様であっても愛宕というズバ抜けた美少女を見てから耐性がついていた。


「そうだね。なら改めて私を助けてくれて、

ありがとうねぇ。あの時は嬉しかったよ。

それで時間はない?お礼させてほしいの」


「な、なにをするつもりなのですかっ!?」


「ま、待って。なんか私が変なことするような返しは止めてくれないかな。

ご飯を奢るだけだよ」


まさか五穀舞から誘ったことは食事なのか。

今月は手元が不如意ふにょういなので食費を抑えれてご馳走にありつけるのは素直に嬉しい。

ここは断るべきなのだが毒親からの仕送りだけでは困難していた中での甘い言葉。

貧困ゆえのさが

この誘いを受けない理由はなく。

むしろ垂涎すいぜんたるセリフであったため俺は歓喜に踊るだけの魅力的な提案であり断る理由はあるはずが無くて。

俺は身を置いている環境から二つ返事するしか残されていなかった。

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