第20話―好奇心からの接近3―

起きた出来事の終始をあるがままを語った。

俺が物音がする方へ向かい残酷な光景を。

学園では高嶺の花とされる五穀米が性被害に遭ったことを。


「へぇー。そんな事が……これを知ったからには

秘密にはできないよ」


黙って聞いていた少女。もとい少年は微笑から一転させて笑みを消し淡白な態度できた。

これに俺は裏切られたことに怒りが沸騰した。


「チィッ、容赦ねェよなァ美少女の男よ!

男のくせに女の格好しやがってよ。キメェんだよ」


「ホワイ!?まるで不良だよキミ」


「うるせぇ!あっ。すみません……これも説明させていただきます」


正直この代償まで明かすつもりは無かったが面罵めんばを浴びせたことの謝罪としてのケジメ。

異能として望まずして手にした〖人心掌握〗を。


「――へぇー、得心したよ。

あんな罵詈雑言をしたのって」


「はい、お察しの通りです……こんな俺は元々は別のクズの人間だったんです」


「今は違うみたいな言い方だね」


「はい。少しはマシになりましたが、犯罪予備軍でした。

五穀米に何度も乗り移ってからは心が洗いました」


そう。これは人格というパズルを滅茶苦茶にさせる

危険なチカラ。

二つある似たパズルを混ぜ合わせて元に戻そうとしたパズルは片方へと一つ一つのピースがどれが正しいピースかは分からず記憶を頼りに、はめていく。

そしてピースが混ざった中で組み戻したものは、

それが元のパズルであると頷いて満足する。

だが肝心の在るべきピースは違う。

それが今の俺だ。もう失った俺という一部のピースは、どこかへいった。


「洗ったね。それはなんというか……恐ろしい。

私のフィクショナルも闇系統にあたるよ」


「闇系統って?属性なんかあったのですか」


「いや無い。ただの分かりやすく説明するため。

便宜上みたいに呼んでいるだけさぁ。

外道みたいなフィクショナルが闇系統」


「はぁー、なるほど」


外道みたいなフィクショナルか、言い得て妙だ。

たしかに俺のはとくにそれが顕著な外道だ。

他者を入りこんで勝手に所有物とする。


「なら外道中の外道ですよね……俺のは」


「どうしてそこまで卑下をする。

兎にも角にも相手を入院させたのは褒められたものではないが聞かなかった事にしておく。

あの滝川一忠はどうなった教えるよ」


飛び降りてからの苦痛で悶え苦しんでいると時間切れになってから滝川一忠がどうなったか知らない。


「知っているのですか?」


「ああ、その前にキミの学校でどう噂されているかだけど――」


「そんなことよりも滝川一忠の方を!

アイツが無事に平穏と暮らしていい性格ではないのです」


いつまた五穀米に魔の手を伸ばすか分かったものではない。


「そんなこと切って捨てるか。

ふっ、なら教えよう。キミが立てた計画に逆らわず遂行していた……と私は思うね」


佐伯蒼璃さいきあおりは目を閉じてしまう。

声をかけない方がいいかなと俺は待ち、数刻してから彼は目をおもむろに開けると話を再開させる。


「キミの残していたスマホが決め手となった。

まずは手順を話すか。

監視カメラが犯行の一部始終をしっかりとあった。警察は滝川一忠をわいせつ行為で調査する流れになり、飛び降りた現場に駆けつけるとスマホが」


よくそんな詳細を知っているなあと俺は感心する。

そして間、髪かんはつを容れず彼は言葉を発する。


「押収したスマホは証拠を犯行をたどれる。

おっとロック画面なんか解除はそう難しくないぞ。

それでキミが用意した遺言書があらゆる事実を

語られていた」


そこまで知っているのはスマホを彼も読んだのか?

どうあれ滝川一忠が悪事をあばいた。


「自殺未遂であるが死のうとする人間がわざわざ

嘘なんて書かない。

それも犯人であるなら尚更なおさらにね。

彼は逮捕されることになったよ」


それが聞けて溜飲が下がる思いだった。

ならこれで被害を受けたすべての人たちに報われる事になる。いや、ならない。

でも罪として通ったなら少しは楽になるはず。


「これで終わったか。

なんか事件を追ったような気分になったなぁ」


「調べているうちに高揚してきたね。

まるでミステリー!

では最後にキミは暴漢を追い払ったと噂があるよ」


まるで他人事として俺はそれを聞いた。

いやだって暴漢を追い払ったというほどスマートでも強くもなかったのだ。


「そのフェイク、誰が流しているのですか」


「これを流したのは五穀米」


「五穀米がっ!?」


「そうとも。どうにもキミの知名度を上げさせるのが恩返しとか考えているんじゃないのかな」


そんなはずが無い。

こんな底辺でゴミのような俺なんかのためにするはずがない。


「嘘でしょうソレって……。もし恩を感じているなら現に見舞いに来ないのは、おかしいでしょう!」


俺はどうしてこうも悲観的になって怒りが爆発しているのか。


「キミの言うとうりかもしれない。

考えなんて見えないけど、単に知らないだけか。

それとも見舞いするの後ろめたさ感じているとか」


「あっ……」


有り得る。

恐るべき異能を行使をして、中に飛びこんで追憶にある最高の記憶媒体を見てきた。


「であるとしても後はキミが聞くといいよ。

そろそろ帰らせてもらうよ」


「あっ!親切に教えていただき、

ありがとうございます」


席を立ち俺は頭を下げて謝意を伝える。


「いいさぁ、別に……それよりも。

キミといると面白そうなことになる。

よければ会おう。また」


ゆるやかな動作で席を立ち、手を振りながら謙虚な姿勢を示した。

注文の伝票を手にして解決を済ませる。

出ていこうとする彼を出入口まで俺は見送った。

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