第19話―好奇心からの接近2―

思いもしない訪問者。

美少女が見舞いにくるとは佐伯蒼璃さいきあおりは柔和な笑みを浮かべて手を挙げる。


「再会した記念にまだ話を続けたいなぁ。

思ったよりも元気そうでなによりだよ。

どうかな、部屋は出れるかい?

場所を変えたい。第二ラウンドの会話を……ねぇ」


「はい、分かりました。

もう完治していますから部屋を出れます」


それは良かったと応え、身を心配してくれる。

こうやって会話を交わされた最後に訊いたのはいつ頃になるか。

古い記憶を手繰り寄せるように探していると病院の一階にもう降りていた。


「最近、別に目新しいシステムでもないか。

病院かなり総合商業施設になっているよね」


「えっ。ただの病院だとは思うのですが」


「ほら、まわりを見てよ。

日用品や雑誌類も揃えている売店がある。

もう独立してもやっていけるだけの内装がある食事コーナーがあるじゃないか」


「あぁー、なんか納得です」


さすがに規模のある病院内だからニーズに応えようとコンビニはある。

つい同意はしたがそれでも小さな施設がひとつの

建物に集約させて鎮座したとするには首を傾げざる得ないかな。


「食事はここにしよう。いいかい」


「ああ、はい」


門をくぐって辺りの客席が空いている。

テーブルを決めて腰掛ける。敷地の外を眺める彼女の向かいになる。

注文を頼んでから店員が去ると佐伯は肘を席についたまま指を組んでアゴを乗せて見つめてくる。

どこかデジャブある。


「キミは中津なかづからあげ。好きかい?」


「はい?えーと、話の筋が見えないのですが」


「だ、か、ら!中津からあげ。

好物なのかって私はキミにそう訊いているんだよ。ちなみに私は好物だぜぇ」


だろうね。

出し抜けに言うんだ。そんな大分県の名物の土産としても購入する中津からあげ大変に美味。

俺はこれを真面目に応えていいものか。

汗がうなじ流れるのを感じながら言葉の裏を読もうとして分からず焦る。


「俺は高校生ですよ。

からあげ好きじゃない人はそうそう居ませんよ」


至って普通すぎる回答。


「ごもっとも」


「ハァー。それで本題に入ってくれませんか」


「おぉー!そうだったね。

なら単刀直入に訊かせてもらおうかな?

キミは五穀舞を助けたよね」


どう返答されるかウキウキしながらも佐伯さんは

不躾ぷしつけなまで聞いてくる。


「あまり他の人に喋らないと言うなら」


「……ふーん。そんな緩すぎる条件でいいのか」


「条件って、ほどものは……偉そうにいえる立場にはありませんし。それに」


これを本人に告げていいものか。


「それに?なんだって」


前のめりになって距離感が近い。

無警戒ではなかろうかと俺は極度な緊張しながら。表面にはあらわにしないよう取り繕いを意識して口を開く。


「貴女がそこまで悪そうにみえないから」


「……はっ?はは、あっははは。

これは傑作なこと」


言いたくなかったんだよ。

やっぱり腹を抱えて、おかしそうに笑う彼女をせめての反撃と俺は恨めしそうに見る。

店内にまでよく響いた抱腹絶倒した彼女が手刀を作り口元の前でやや謝罪の態度を取る。


「ハハ、予想の上斜めな発言をするものだよ。

でも忠告させてほしい。

いいかい。キミのように表よりも裏で会話ばかりでする。話していて性格や性質が気高い」


妙にも口を引き締まりながらの指摘。


「俺が気高く、あるはずがありませんよ」


「うん。それで私が言いたいのは安易に人を信じてはいけないことだよ。

たとえ私のような美少女のような男でもね」


「そうですが……はい?」


俺の聞き間違いだろうか。


「まだ若いね。

キミには容姿で人の中身を判断しがいがちな決定とする楽観視を強くて当然としても。

でも、ゆっくり人なりを見てだね――」


「あの!佐伯さんって……その、男なのですか」


「んっ。ああ、そうか言わなかったか」

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