第17話―掌握する人心は誰がどこまで4―

鼓動がざわめく。

糸が切れたように倒れている自分の本体にではなく

五穀舞を狼藉しようとした。

未遂となり、男の思考や価値観が流れ込む。


「グヴッ!」


そして相違の人格を合わせる。

否応なくと魂と魂の結合させて独特の拒絶反応が起きる。

吐き気を催したがすぐに他人に染まりに慣れ親む。


「う、うそ……」


「くっ……五穀舞?」


口を覆っている彼女は顔を蒼白する。


「あれだけ叫んでいたのに突然……倒れて……

動いていない。動いてないよ……

早く救急車を呼ばないと危険かも。緊急事態だよ」


「無用だ」


「む、無用?」


怯えた声と視線が……痛い。


「俺は、いやアイツは気絶しているだけだ。

明日には目覚めるはず。ンなことより邪魔者は居なくなったなぁ。へへっ」


「ッ――!?」


一歩を前にするとビクッと五穀舞は肩を揺らす。

後ずさりながらも微量の悲憤がメラメラと燃やし

相手を見据える。

それが五穀舞のできる敵愾心と反撃かもしれない。


「ぐうぅっ!?なんでこれで興奮して愉しいと喜びにあふれるんだよ」


「ど、どうしたの」


「なんでもない。

チィッ!興醒きょうざめだ。こんな睨んでくるような女なんかには関わるかよ。

面倒くせぇ。他の女でも抱くとするか」


「………………はぁ、恐かった」


ヤツの性質性を感化されていく。

あってはいけない妄執に取り付けられそうになる。

こうして煩悩を抱える俺は、いつまた眠る人格の

思考や感情がどうなるか俺にも予想はつかない。


(この身体の持ち主は母親から虐待を受けたりヒドイ人生をたどってコイツも苦労していただな。

だからって女の子を道具のように嫌がるのを見るの心の底から愉しみは反吐が出るが)


気を変えた気まぐれな男が身を翻して。

様子を確認しようと振り返ってみた。

もう身の危険が無くなったことに安堵する五穀舞は、抜け殻の本体のもとまで接近して

手首を触れる。脈とか測っているのかなと怪訝に思ったが俺は頭を振る。

疑問は後回し。


(まずは、この男をどうにかしないと)


この男の異様なこだわりが手に取るように分かる。

読める、熟知してしまう。

これが強姦を途中まで失敗したとしても諦めていないようで、またの機会をコイツは狙っている。


(そうは……させるかよ!)


俺は駆け出した。

中夜になる広い公園広場を飛び出す。


(マジモンの悪だよ滝川一忠たきがわかずただ!)


この身体を奪われた不全の名は滝川一忠。


(この滝川一忠をこれ以上の暴挙しないために手っ取り早いのは自殺すること。

でも奴を殺すことには……躊躇うためらいがある)


息を切らして寝静まる住宅を抜けていき。

夜の街に飛び込む。

あまり好きになれない喧騒な繁華街。


(この滝川一忠はよくモテる。

でもその軽薄な言動を顧みないから愛されない。

そのトラウマから女の子をとっかえひっかえ心変わりされる前に)


唯一、ちりばめる星の下に心が洗われていく。


(五穀舞に優しくされて惚れた?

無駄に容姿だけはいい。でもアプローチ知らないからコイツ自身がこれしか女の子を……)


ここへ遊ぶために俺はここへ来たのでは無い。

ここで人として踏み外すような決行するために。

ひしめく通行人を縫うようにして進み。

繁華街の一角で寂しそうに立つ雑居ビルへ入る。


「すぅー、ハァー。

バカだよ滝川一忠、お前をここまで人格に構築していた痕跡を閲覧しても」


階段を上がりながら廊下を趨走しゅそうする。


「気持ちはシンクロしているから痛いほど理解していても。最大の理解者となった俺が断言する。

お前は……俺よりも陰キャだ!」


このビルは放置されてるままで誰もいない。

不良が溜まり場としては最適なスポット。

ドアを蹴り上げて屋上へ。

ひかえめな夜風に打たれながら歩を進める。


「頭を冷やせ。もし後遺症を残してしまえば謝る。

ごめんなさい……俺は謝ったからなぁ。

だから、あやまち背けるなよ」


ポケットから探り、滝川一忠のスマホを取り出して文字を書きつづる。

文字をしたためたスマホを床に置き、靴を脱ぐ。

それからフェイスを登り超えて屋上の端に降りる。


「五穀舞を守らないといけないから強行な手段。

褒められるものではないけど俺がそうするべきと感じたからそうする。非道な選択する、ここで!

まさか滝川一忠、そんな事されて怒らないよな」


俺は手を広げて飛び降りた。

高さは三階なのでそれなりになる。

怪我はまぬがれないが一命は助かるだろう。


「悪意の限りしてきた罰だ。

報いを受けろ!」


空中に落下していく恐怖に心が打ちひしがれるのを耐えて敢行。

雑居ビルからの飛び降りて数秒。

とうとう地面が眼前に迫る。

俺は地面に強い衝撃と共に意識を断つのであった。

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