第15話―掌握する人心は誰がどこまで2―

努力が嫌いだった。

遂げるために努め励むこと。

その労力は浪費と思っていた。


「一つのモーメントとして活発になるとくすぶっていた気持ちも爆発している……。

成長する、負けずに見返してやる。

嫌い努力をやろうとするのは感化されて」


痩せようとランニング、

成績をよくしようと無理のない勉強時間のスケジュールを組んだりしている。

どんよりと暗くて汚い部屋をキレイにして緩やかではあるが改善していている。

ヒマがあれば掃除。まだ部屋にはうずたかくゴミで積んでおり散らかっている。


「よし。とりあえずはスペースを開けておいた。

さて勉強でも。知らない単語の二つでもおぼえるか」


無尽蔵の気力はない。

気力には集中と点化する。限度があり有限。

行動を起こそうと消費するからこそ努力を継続的にするには原動力を燃さないとならない。

燃やすというのが真理だと俺の中ではこうした表現はピッタリ来る!

真理は大げさ。かもしれないが少なくとも俺の中ではこれが真理だ。

原動力の火をいつまでも燃やすには材木など必要。

五穀舞に異能を乗り移ったのは、材木の活動エネルギーを補給しないとい継続は厳しい。


「知らない単語カードには……えーと読み方は〈懐玉かいぎょく〉すぐれれた才能を持っていることか。

では次に分からない言葉は〈克己こっき〉。

おのれの欲望や邪念を、うちつこと……か」


あまり負担や疲れもならない単語を調べていて

克己という言葉がどこか心に響くものがあった。


「こうしてシミジミと琴線に触れる終わりにして。

作業の掃除でもするか」


そろそろ他のこともしたい。

乱雑となる物を片付けを始めた。


「変わったからには腐ったものは捨てないと。

まずは処分。……エロゲがいっぱいだな」


我ながらよく実物のこんなにも買ったものだ。

もう遊ばない作品があって捨てるかと箱を手にしてホコリを払う。

しかし捨てるのは出来なかった。


「……別にエロゲが腐るものじゃない」


棚に並べていく。

エロゲの良さに性欲を処理するだけしかないと見られがちだが感動させる作品もある。

シナリオの良さもあるのだってあり、年齢制限がつくエロゲだからこそ踏み込んだ描き方がある。

深い恋愛の描写とか。


「それに好きなのは各ヒロインが攻略して推しの

キャラを結ばれるまでの過程がけっこう好きだったなぁ……。

こうやって並んでみれば。

高校生だからかストーリー性の作品が多いこと」


ここまで熱心に購入したものだ。

――片付けて勉強を軽くこなした翌日。

放課後になって今日も五穀舞を捜していた。

また異能で原動力を補給するため。

心の温かさをまた体験したい目的ではなく。


「単純にどこで眠りについているか分からないからなぁ。危なかしいし起こさないと……んっ?

あそこにいるのは同級生のバカにした奴か」


ここにはいないだろう。体育館の裏庭に回ってみていた俺は女の子を囲むようにする男子高校生の三人を目撃した。


「オレサマに付き合ってくれないなら。

オレサマと付き合ってもらうぜ」


彼女の視点から向かいの位置の男子高校生は下劣そうな笑みを浮かべて迫っている。

圧力を掛けられて女の子を誘えないのか。

俺は、ことなかれ主義。かかわらず立ち去るのみ。


「おい!寄ってたかって一人の子供をナンパして

恥ずかしくないのか!」


あー、どうして勇ましく声を掛けたのかな俺は。


「なんだテメェは。あっ、斑鳩じゃねぇか。

ハッ、偉そうなデブがッ!!

生意気な口を聞きやがって。どっか行け」


鼻で笑われたり怒ったり忙しい人たちだ。

ともあれ見下されたら俺も黙りたくないし相手にしてやろうではないか。

でも3対1なのは分が悪いので助けを求めよう。


「誰か来てくれえぇぇーー!

女の子が襲われているぞォォォッ」


「なっ、テメェ。覚えてろよ」


「チッザコのくせに」


「覚えてやがレェ」


捨て台詞を吐かれて三人は走って逃げていく。

テンプレな捨て台詞を実際にいたのか。

なんだか別の意味で驚いていると声を掛けられていた女の子は俺の視界に移るよう横から前にと回る。


「ありがとう助けてくれて。

見ない顔だけど新入生とか?勇敢ようだね。

助けてもらってだけど私は子供じゃないから!

それだけになるけど。

また会うことあればじゃあね」


小さな女の子はコチラが応える間をおかずまくし立てて喋る。

それから手を降っていき去っていく。

暁光高校の制服だった。

あの口調から察するに中学生がコスプレしたわけでないのか。

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