第11話―五穀舞その2―

美少女なったからには満喫しよう。

周りからチヤホヤされて文武両道な才媛。

いわゆる勝ち組だ。

好き勝手してやろうと思っていたがそんな捻じ曲がった感情は何処いずこに。


「ただいま」


五穀舞は幸せ者だった。

それは勝手に入り込んで記憶や感情を覗いた感想。

俺が客観的に。

または主観となる五感から心境の判断して


「ふーん。おかえり舞姉まいねえさん」


リビングから出迎え出てきた五穀舞の妹。

活発そうな顔立ちや普段着。

シルクのごとくサラサラで指通りがよさそうなショートヘア。


「わあぁーっ!そう怒らないでミズナ。

許して……ねぇ。

これは深い理由があってミズナの約束を破ったわけじゃないの。

どうか愚かな五穀舞をどうか慈悲を」


「はい、はい。もう分かったから。

ほんとうはボクそんなに怒っていないのに」


「えっ?なになに舞姉さん大好きだって!えへへ」


「目をキラキラしないで!この……シスコン」


「嫌われた。ガーン」


なぞるように言葉が出てくる。


「その効果音いる?それより舞姉さん。

それより。

いつまで玄関にいるの。

そんなところで突っ立ってないで我が家に許可とかいらないのに早く入りなよ」


「おぉー、そうだね。ついついカワイイ妹を愛でていたら忘れてしまった」


「ハァー。ボクに心が騒ぐ言葉とかないのかな」


どう接するかは決まっていた。

従われて五穀舞が動き出す。それを知っており俺はいつものように振舞ってみせた。

いや逆に乗っ取られるような感覚だった。

妹には怪しまれなくて第一関門は突破した。

さてここからだ。

五穀ミズナをどうやって抱きついてその柔肌を触れてやるか。

ことごとく上手くいかなかったが今度こそは二人きりならそれは容易だ。

警戒していない。

食べ損ねた分のディナーを味わってやれると想像するだけでヨダレが出る。

――やめて!妹は関係ないでしょう。そんな事したら……わたしは貴方を全力で止める。

たとえ、わたしがわたしを殺してでも……。


「ど、どうしたの舞姉さん?なにか嫌な事された」


「えっ……嫌なこと?ううん別に無いけど。

おっと、ミズナに不安がられるとは姉として失格だな。あっはは」


「そう。とにかく顔を洗いにいったほうがいいよ。

辛いことあったら何でもいいから話してよ。

ボクらは家族なんだし……さぁ」


そういってスポーツ少女の五穀ミズナはリビングへと戻っていく。

ひどく悲痛そうな顔していたなあ。

表情させたことに疼痛とうつうを伴って襲う。

不顔を洗おうと居室を出ていき洗面所に。

洗面台の鏡に向き合っていると。


「泣いているだと!?も、もしかして意識ある。

五穀舞なのか……まさか!意識があるのか」


鏡に映っている頬を濡らして伝う水滴。

心配して泣いたからミズナはあんな顔をしたのか。

ンなことよりも五穀舞に呼びかけるが返事は変えることはなかった。


「ははっ、驚かせるなよ。

ヒヤヒヤしたんじゃねぇかよ。

でも……意外だよ。

頑張っているんだな五穀舞。

お前が母親から愛情を向けなくなってから長くって、再婚した父親からは襲われそうに。

未遂でよかったよ……」


どうやら五穀舞は隠したかった悲しい過去。

暗い過去を告げた相手はいないようだ。

うつむいた顔を上げる。

向かい合って幸せの環境を整備してきた五穀舞は実父を亡くなってから強く生きることをいている。


「めげずに努力したんだな。

唯一の家族のミズナために……か。

なんて、まぶしいんだ」


また、泣いているのか五穀舞?

これは俺が涙腺を崩壊しているものか。

鏡はありのままを移している光景をどうも俺は困惑している。

虚像を映しているのか初めて俺は鏡という真実だけの道具を疑いを覚えた。

誰の涙か俺には存じない。

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