第8話―光が薄くて後ろぎたない―

夢を見ている間の世界。

意識がまた現身の世へと還ろうと。

そのまま眠りつきたい。だが没頭していたのが目を覚まされるように意識を別にして進行していく。


「……嫌だな。

またクソのような人生を向き合うのは」


外山脩造とやましゅうぞうに挑まれた。

一方的に。

実力差があると知りながら、手加減されていた。

だが無様な姿を晒すようにした痛めつける目的であったが。一撃も与えず完全な敗北を喫した。

おもむろに目を開ける。少しでも現実を避け。ゆっくりと開けて見えたのは。


「花は綺麗だな」


真っ先に目にしたのは窓枠に付けたたなの上に飾られている観葉植物の花だ。

それから遅れて滅多打ちされた記憶がフラッシュバック。思い出した屈辱が込み上がっていき弱い自分に耐えれなくなる。

俺は嗚咽を堪え切れず漏らすしかなかった。


「勝てる……わけがないだろう。

なんだよ異能を使いやがって!

俺が異能を使わないのは戦闘には役に立たないからなんだぞ。

うぅっ……俺もあれだけチート異能があれば……」


どれだけ泣いて弱音を吐いても手を差し伸べるなんてない。

俺のようなキモくて性格が腐っている奴なんかは。

更に、追い討ちをかけるように顔を出してくれる人は誰も来なかった。


――それからは。

保健の先生はフィクションのように慈悲の心は誰にも隔てもなく持ち合わせておらず。

戻ってくれば『うわぁー』と顔を顰めていた。

そんな扱いには慣れている。だから気にしない。

帰宅時間は一人で帰路に就く。

鍵を回してドアを開けて靴を脱ぐ。

家族はいるけど離れている。

母は離婚して父親は『お前なんか生きている価値はねぇんだよ』とボロアパートだけ借りて放り込んで後は好きにしろと言わんばかりに父親は別の家で家庭を築いて今はそこにいる。


「ほんと。よく生きているよな……エロゲでもして嫌なことを忘れるか」


家族から捨てられた俺の生活は廃棄物そのもの。

部屋はゴミで散らかして放置したまま。

片付けるのも億劫だ。

乱雑の物を漁って求めのゲームのパッケージを発見する。


「あはは。あった、あった」


暗い歓喜しながら俺は夜までそのゲームを没頭。

ストレスを発散するため夜は買い貯めたカップ麺を三つほど食べてから

ポテトチップスも口に放り込む。

そしてコーラーを浴びるように飲む。

そんな暴飲して暴食しても体調不良で倒れることもない。


「俺は……死にたい。

心や見た目もモンスターのようになっていくのが耐えれないのに自分を終わらせる度胸なんて無い」


自己嫌悪で潰れそうになる。

抗えようのない現実を変えようなんて心はあったが

どうしても変えられない現実はある。

改める環境がない俺はそれを知っても自分のクソのような人生さえ終わらせる覚悟はない。


「もっと。もっと夢中になるものを……」


屈辱しか受けていない。

俺はその受けてきた事実を忘れさせるだけの刺激を求めていた。

大きな刺激が性的興奮だった。

それがエロゲであり数少ない娯楽。

俺は床に散らかっているゴミを手に突っ込んで探って目的のものを手にする。愛宕美桜のプロマイド。

俺は在りもしない愛宕美桜と一つに交えるのを妄想にふける。

なんて醜い生き方をしているんだろうか。

責めて惨めになって泣きたくなる思考を恐れ、

直視しないよう片隅に投げ捨てて欲望のままに。

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