第7話―フィクショナル国立高校その6―


どうのこうの意見としてスルーで聞いてくれず。

無視して手合わせの流れへと進む。


「えー、それでは赤烏高校の期待される外山脩造とやましゅうぞう

ブイエス、暁光高校のヒヨコ斑鳩平次いかるがへいじ

両者それでは構えて、構えて」


審判を務める教諭よ、最後のそれは相撲すもうか?


「あの、こんなこと言いたくないのだけど戦いたくありません。俺は後方部なんですが」


「見苦しいですよ暁光高校の生徒」


「卑怯だぞ、イケメンのくせに」


「もし敵に出会したらどうするのです?

こうやって命乞いするのかい。

ハッ、これは生きるための立ち回りにも役に立たないか。

実践を想定して技術を上げるのがフィクショナルの

教育制度ではないか」


減らず口を。

審判を務める我が校の教諭は頼りにならない。

この無茶な対戦。組み合わせに止める気配はない。

クソッ、嫌な一日になりそうだ。


「バトル、はじめぇぇぇぇぇっ!」


戦いの火蓋が切られた。

どうする、どうする……棄権だ。


「お、俺なんか身体のちょう――がァッ!」


棄権を告げようとして封じてきた。

先読んでの攻撃。外山は開始早々と木刀をなんのためらいもなく投げた。

ほとんど投擲のモーションの予備動作さえなくと。投げる読ませないに加えて投げた速度まで目に見えない尋常ない技術だ。

カッコわるく顔面に見舞う。


「こうも叫ばれたら参る。卑怯とか罵ってくれたようだが、なら俺は木刀を使わずに相手しよう。

暁光ぎょうこう高校の貴方を相手しよう。

これならいいかな」


「な、ナメがやって……ぜってぇ痛い目を遭わせてやらァ!うおぉぉぉーー」


雲泥の差。その実力差がある対人戦に意義はない。

でも武器を投げてそれを棄てやるから掛かってこい

煽られて沸々と怒りが湧かないはずがない。

眼前には悠然と立っているだけ。

こちらは剣術はからきし。でもリーチはある。


うな雷轟雷撃らいごうでんげき


武器の長さを活かせば勝機はある。

勝負になると俺は思っていたが外山はここでフィクショナルを切ってきたのだ。


「か、かみなり……地面から身体に集まるように上がっていく。落ちていくんじゃなく」


「どうもフィクショナルを使いとは対戦は不慣れなのか。

あらゆる条件が重なって起きるものだ。それが自然の摂理や科学では説明がつかない超常現象を意のままに操れる。

それさえ理解外なのがフィクショナルだ。

憶えておくんだな暁光生徒の」


「くっ!」


「まだ終わらない。

いくぞ、カンタンにやられるなよ戦いは始まったばかりなんだから」


すると赤烏高校が地面を蹴ると姿が消えた。


「ハァ!?」


右頬から凄まじい威力が叩き込まれる。

ビリビリと。雷も追加で頬を焼くような痛み。


「あぁぁァァ……がァあぁぁーーッ!」


なんて加速力なんだ。


「あの噂の真偽はどうあれ。貴様は姉さんに対してみにくい心を向けている」


あの噂って。二次元と同等の美しさを誇る愛宕美桜をまた見ようと探し回ったことか。

風を切り裂くような弟と共に凄まじい回し蹴りを鳩尾にモロに食らう。


「があァ!!」


「身の程知らずが。

貴様が会う権利があるとでも思っているか」


反撃しないと。

俺はとにかく竹刀を振り回して当たれと願いながら振るう。

しかし呆れた表情。

それらを最低限の動きだけで避けていく。

わざわざ距離を置くという警戒に価値もないと言い放たれたような屈辱だ。


「あたれ……当たれよ!どうして当たらない!」


「積み重ねてきたものが違いすぎる」


「あっ?」


「どうした。素の声が漏れているぞ」


回避すること飽きたのか手刀で俺の攻撃を弾き返していく。

目と鼻の先なのに、近いのに、どうして、

こんなにも……遠く感じるんだ。


「なんでッ!?

こんなに遠いんだよぉぉぉーー!」


「それを何度も味わってきたからだ」


「味わってきた!?」


「そうさ。ここまで身に付くまでに血を吐くような努力した」


そして敵からも反撃をしていく。

雷を纏われた手刀

突かれる。腕と胴体と足に正確に攻撃を続ける。


「いッ――!」


「辛酸を舐めてきた。それが俺を強く昇華した!」


攻撃をしても躱され防いでいき、反撃され避けられず雷までも一撃が同時攻撃。

どうにかなれと大上段に構えて振り下ろす。

しかし白刃取り。そんな技を披露するような芸当を決めると軌道を変えた。

俺はその重たい力に引かれて転倒しそうになる無防備な姿を晒す。

外山はそれを見逃さず両手の手刀をきらめかせて首を左右から同時に打った。


「がァッ――」


「姉さんに近づくなぁ。

貴様には地面でいずる人生だ」


意識は希薄になっていく。

今度は学校で。

俺の意識は、またも失うのであった。

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