第6話―フィクショナル国立高校その5―

わたしは特別なチカラを持つ。

持て囃される事はあった。

だけど同じ覚醒した人たちと比べれば劣る。

性格も含めて。

――でも安定した職業につけれる。

異質の特別、それを手にした大半の若者は大きな

使命感や社会正義に燃やすかもしれない。

――わたしは、そのへんは乾いていた。……いつまで平穏に暮らせるか分からないから。

不意に手にした特別が入学の条件。

――大それた夢なんてない。しいていうなら安定した生活が夢。

これで恩恵を預かれる。

戦うことはしたくない。

支援や開発などで専攻していこうと思う。得意分野は後で見つければいい。

フィクショナル国立だって入学したのも特別になれた権利を上手く活用したに過ぎない。


「ねぇまいってどこかドライな部分があるよね」


「えぇー、どこがドライなの。もうヒドイなぁ」


隣で一緒にストレッチするのは容姿端麗の友人。

片方だけ結んだ髪型はワンサイドアップ。

似合う女の子と他愛のない話題を当たり障りないようする。


「そうなんだよね。アータシも分からない何故か。

なんていうか親しみあるのに距離感がある」


「もしかしてディスられているのかな?

そんなルナには罰を受けてもらうか。

こちょこちょ」


「あっはは。ま、待ってストレッチ中しないで」


わたしがフィクショナル高校に通ってから分かったことがある。

同世代では安定した職に就くことを考えている現実的な主義はごくまれ。

犯罪者や鎮圧して秩序を維持するためではない。


「ふーふん。参ったか」


「降参……で何の勝負していたっけ?」


ルナは手を挙げて敗北宣言。


「さあ。それよりも赤烏高校には負けないよう張り切って行こうね」


「おうよ。でもエリート様と合同か……余計なプレッシャーとかで気負いそう。

あと動きやすいようにポニーテールお願いね」


「はーい」


空のような飛び抜けた明るさで応えて。

わたしの心中は少しため息をこぼす。

それはこれで楽しいは楽しいけどずば抜けるほど仲がいいわけがないのだ。

わたしの中で嘉手納かでなルナは充実した学生生活を送るために交友を一定、、に築く友達。


「なんか隣が騒がしいよね」


「だね、それを言われてみたら。

男子の方から賑やかという雰囲気ではないよね。

ちょっと待ってね。耳をすませるから」


「ほぉー、それが舞の異能ですか」


「その異能って?」


「知らないのか舞。

けど取り扱う作品が昔とは違っていれば少ないのは当たり前か。

常人には持たない人智を超えた特殊能力でいわゆる超能力と同じ。

それぞれが違う特殊能力は個性を持つものだね」


「そ、そうなんだ。あはは……」


ついていけない熱意に苦笑で返すしかできない。

オシャレには余念がないのが友達の嘉手納ルナ。

今時の流行にも精通している。

そんなイメージに反してルナは古い作品をこなよく愛しており詳しい。

きっとその数ある作品での知識がなにかだろう。


「そうなんだ。つまりはフィクショナルのこと」


「さすが理解に追いつくのが、お早い!

けどフィクショナルと異能を一緒にするか」


肩をすくめるルナ。


「どこか間違っていたの」


わたしは首を傾げて尋ねてみた。

あざとい過ぎないかな。

同性には嫌われる動作だったがそれに機嫌を損なうことはなく白い歯を見せる。


「ううん。

おおむね当たっているけど。創作と比べると夢がないからフィクショナル言わないで欲しい」


「あはは。なんか、ごめんね」


ならいいのでは。

こだわり強くて少し辟易していると隣が大きな歓声や誹謗が聞こえてきた。

振り返ってみると男子側でなにやら試合を繰り広げているようだ。

合同実技をそっちのけで女子たちが男子の隔つ線を超えて走って向かう。

しかし全員がそうではなく冷ややかな人もいて耳を傾けて「決闘らしいよ。デブとイケメンの」っと、

そんな言葉をキャッチした。


「うわぁー。

野次みたいなの飛んでいるけど見に行きたいなぁ。ねぇ、行かない舞?」


「うーん、どうしようかな。

あそこで繰り広げているのって決闘らしいよ」


「リアルで決闘しているのッ!?

ちょっとワクワクする。すごく見たいよ!行こう」


「そ、そうだね。

もう合同実技するどころ……なさそうだし」


わたしはルナと別け隔てている線を超えて決闘の人垣に進むことにした。

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