第5話―フィクショナル国立高校その4―

合同での実技。

予定されていた今日がその日。

どうせ模擬戦に渡される武器でボコられるだけで

俺に深くまで関わることなく終わる。

そう思っていた。

気怠いながら体操着を着替えてからグラウンドに。


「お前は……そうか。

薄々とここの在学していることは知っていたが。

まさか同学年とは。これは天の導きなら感謝しないといけない」


他校との混ざってから少し経ってから。

すぐに目を付けられた。

偏差値が60以上を超える生徒だけしか入学されるフィクショナル養成の国立【赤烏せきう】に在る証のエンブレムを刺繍した体操着。

イケメンはどんな格好でも洗練されているなと関心する余裕がない俺は戦々恐々。


「はぁ!?どうして姉さんのイケメンがここに」


「なんだろうな。その不名誉な覚え方は……

まあいい。お前がここへいるなら模擬戦を申し込んでも問題は無いだろうなあ」


「い、いや問題しかありません!

恐れながら俺なんかが相手にしてもなりませんよ」


このイケメンの事はまだ記憶が新しく残っている。自分では止められないバケモノへと変身。

してしまい暴れているところに駆けつけたのが愛宕美桜。

それから遅れて愛宕美桜と行動していたと思われるイケメンだった。

イケメンがエリート赤烏の学生だったなんて。


「普段はフェイクが混ざる噂を鵜呑みにするつもりは、これぽっちも無いが……

嫌でも悪評は聞き及んでいるぞ」


「は、はぁー」


「どうやら巷では。

肥満体型の怪しい若い人が徘徊しているって付近で目撃者がそう言っていたぞ」


「つまり怪しい若い人が俺だって決めつけているのですか!?濡れ衣だソレは」


「ああ。それだけだと特定したと決めつけるには弱いだろうな。

だけど暁光ぎょうこうの制服している。

それに太っていて不衛生な顔や髪。

事件の現場を回っているとあれば、お前だと疑って当然だろ!」


ぐっ、痛いところを突いてくる奴だ。

河川敷の川が流れている辺りや茂みを出くわさないかなと期待して昼夜を歩いて回っている。

悪い噂が出回るほどにそれだけ頻繁にしていたのかイケメン野郎のセリフからしたら。


「そ、そんなこと噂。噂を信じるなよ!」


歯ぎしりする気持ちを表に出さないようにして。

卑屈になりながらもイケメン野郎の周りについている三人のうち一人が人差し指を向けて主人に肩越しに振り返る。


外山とやまさんコイツ偉そうですよ。

俺が立場という奴を教えてあげますので代わってください」


このイケメンは外山という名前なのか。苗字だな。


「いや、コイツは僕がやらせてもらいたい。

溜飲が収まりそうになくてこればかりは代わってやる訳にはいかない。

この肥満野郎は、事件で命を助けてくれた恩というものがない!」


コイツとか感情を隠しきれず剥き出してきたぞ。


「それは出過ぎた真似を。

あの恐れながら……事件とか命を助けたとは?」


「さあ武器を持って始めるぞ肥満野郎」


外山……しゅうぞう?だったか、ともかく。

イケメン野郎は腰巾着からの疑問を耳には入っていない装って勝負を申し込まれた。


「断ります!」


こんなの付き合えるわけがないし勝負を自分から誘ってくることは強いからの自信からきている。

負けるなんて微塵もない様な顔つき。


「なにっ!?ここまで虚仮こけされて黙っているというのか。まだフィクショナルを使いたくて自惚れる歳だというのに」


で、それに俺はというと運動神経からきし絶望的であるから端的に評価つけるなら弱い。

その弱さが勝負に応じるはずがない。


「自惚れって……そんなの強い異能とか持っている奴がそうだけの話。はい、これ論じて勝った!

それじゃあ」


この場を逃げるなら一方的な感情ぶつけて話は終わりだと背を見せて離れれば声なんか掛けない。


「こんな手を使いたくは無いが……致し方ないか。

コイツを捕らえるように」


「「はい!」」


い、いくらなんでも横暴すぎないか!?

傍観していた腰巾着その二と三に脇を腕に回してガッチリと捕まってしまう。


「それで外山さん。どうするのですか」


手が空いている腰巾着そのいちがたずねる。


「そのまま逃げないように監視しておくように。

俺はその間に二人分の剣を持ってくる。

お前が扱う得物は剣でいいな」


「それより解放してくれ。こんなの実技じゃなく

公開処刑じゃないかッ!?

おーい誰か助けてくれぇぇぇーーー!!」


惨めにも叫び上げて助けを求める。

こんな手を使いたくはなかったが惨めであろうと傷つきたくはないのだ。


「おい何をしている。

複数で痛めるのが赤烏のやり方が」


そしてピンチに助けを求めに応じるのは先生。

た、助かった。

指導する立場として止めてくれるだろう。

慌てふためくだろうイジメてきた連中は。

しかし外山イケメンは華麗に紺色の髪をかき上げて動揺の色を一切みせない。


「いえ、これは彼が僕らに挑発しておきながら逃げようとして捕らえたのです」


「そうなのか?」


どうも怪しい展開になりそう。

教師の男性はどちらが非があるのか慎重な顔。

そこで外山イケメンは畳み掛ける。


「はい。しかし挑発行為に雁字搦がんじがらめしたのはやり過ぎました。解放してくれ」


「「は、はい」」


解放されたけど、外山イケメンの畳み掛けは終わっていない。


「それで暁光の先生さん審判をお願いしてくれませんか。

我々は挑発されて少なからず憤っています。

それで解決方法は一体一で対決して晴らそうと思います」


「私情で試合するというのか。それは」


いくら挑発した側が非はあっても試合でその怒りを晴らそうとするのは賛同しかねる。当たり前だ。


「はい。ですが勝負を申し込んできたのは、そもそも彼が先です。

それを引っ込めてバカにされれば許容ができないのは当然。

それにです。不正しようとするのではなく正々堂々と試合のルールに沿って晴らすことに正常な判断だと存じます」


なんてことを言うんだ。

いくら理路整然を並んで説いても無理だ。だって、

それって私情なんだし。


「いいだろう。認める」


「はぁ……はあぁぁぁぁぁーーーッ!?」


我儘わがままを聞いていただき、ありがとうございます」


俺は素っ頓狂な叫びを上げるしかなかった。

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