第4話―フィクショナル国立高校その3―

異能に使えるようになれ少しは優遇される。

その少しには日々の生活に追われるなかで勉強は変わらない。

勉学を励まないとならない。


(ここでも勉強か。

これだけ日々の生活に変化がないと異能者であることも忘れるし、偏差値で異能者であっても進学校のように分けられていると特に)


教壇に立つ先生のつまらない話を聞き逃しながら。

欠伸を催す。堪えて淡々と板書する。

とにかく書けば覚えるだろう。

いつか暗記とかしたら、こんなのはなんとかなる。

ここまでと電子音の教室を鐘が鳴り響かせた。


「よし、今日の授業はここまでとする。

いいか昼食を摂るように。

日頃ならそう催促していたが今日は特別演習があるんだからなぁ、体力つけろ!

同じ大分県内から合同実技を五限目があるぞ」


「あの先生もしかしなくても赤烏せきうの生徒?」


挙手して質問するのは五穀舞。

陽キャにしてはなんて積極的な勤勉だろう。


「そうだ。

どうしたんだ五穀舞。お前にしては、珍しく前向きじゃないか?」


「先生、それは私の悪口ですか?」


古い表現するなら、五穀舞はカチンときていた。


「ハハハ。おっと失敬した。

ともかくエリートの赤烏に負けないよう反逆的な

精神で挑めよ」


「はーい」


間延びに返事をする五穀舞。


「お前たちが積み重ねてきた技術を披露するためにもベストコンディションを怠らないよう。

開始するのは同じグラウンドだがもちろん男女は別々に別れて距離を置いて模擬戦をする」


おぉー、嫌だ嫌だ。

なにが悲しくて野郎共と戦闘の訓練とか付き合わないとならないのか。

それも他所よそから暁光高校の敷地をまたいでの実技なんて。

取り組んでいるのか非合理的の極みじゃないか。


「あの、やっぱり後方部も参加しないとならないのですか」


「ほう、そういうことか五穀舞。

質問を投げかけてくるのは疑問に思ったが辟易しているからなのか。

いいか!後方部と戦士部が同じクラスにしているのは同じ視線を持つために教育制度にしているんだ」


異能を養成する教育機関。ここは、二つの学部に分けられている。

【戦士部】主に前線に立ち、迫ってくる敵を真っ先に戦う技や戦法などを学ぶため武力や瞬時の判断力を重点的とした学部。

【後方部】サポートや後方から狙撃など徹する役割をこなす学部。

治癒、遠距離、支援、サポートなど様々なため一括りされて呼称される。


「消極的なのは認めますけど。

そこまで嫌ではないのですが……」


「痛みを感じない後方部。

前線で傷を負いながら戦っている仲間を信用や理解はあるか?

いやオレはないと思うね。

後方部は背負うものぞ五穀舞よ」


「わたしを意味もなくフルネームで注意されている事に不満なんですが先生」


テンションが高くなるのは戦士部だけで後方部の俺も含めて強制参加をすることに消極的だ。

流し目を見れば分かることだ。

ほとんど眉を顰めた顔を浮かべている。


(やりたくねぇ)


先生の有難くもない、決してありがたくない説明は以上のようでそのままドアを開けて出ていく。

昼飯が終わればエリート校の赤烏高校生と合同。

どうにか仮病とか欠席をなんとか出来ないものか。

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