第3話―フィクショナル国立高校その2―
完治まで期間はかからなかった。
退院してから翌日。
制服に袖を通してカバンを持って家を出る。
あれから異変はなかった。
病院の検査でも特に問題はなく通うことに支障はないこと。
慣れた歩き道を
「おはよう。おいおい、あのデブまだいたのか」
「だな。せっかく居なくなれば少しはこの地域が
聞こえようがしに俺の悪口をよく言う。
通学路でこんな陰湿な陰口するのは同じ制服を着ていて向かうのも同じ。
こんな心ないことセリフは日常茶飯事だ。
「……でも心は支障はあるんだぞ」
後ろにいる連中からは聞こえないよう呟く。
俺は気分を切り替える。
「ねぇ、知っている。
この付近に愛宕美桜サマが舞い降りたって」
同性にさえ人気だ。普通なら美少女に
「舞い降りたって天使か女神のどちらかなの?」
「どっちも同じじゃない。
もう人の域を超えているの愛宕美桜サマは。
あー、目撃者を聞いて回らないと」
「サマ付けか。
でも女子の私でもあの美しさは異常よね。
化粧とか生まれつきで片付けれないものがあるし。
どんな異能がまでか伏せている」
「こんなこと吐き気がするから言いたくないけど
客観的にみれば愛宕美桜サマの存在は最強の兵器であるから外部やら情報を流さないよう
徹底しているって動画で観たわ」
会話と風景の雑音に歩いて進む。
アイドル的な存在だな愛宕美桜は。
その圧倒的なほど容姿には異性は惹き寄せる魅力はあっても同性からは嫉妬されない。それは男性でも同じだろう。
同じく男でもチヤホヤされるイケメンを見ると嫌な気持ちとかなる、それが妬みなんだけど。
(人気者だな。
愛宕美桜と隣にいたイケメンの会話から姉弟みたいだけどそれを知らないと変な噂とかされるよなぁ。
それを弱み握ってみるのは……そんなことすれば
イケメンの雷が落ちるなぁ)
勝手にいろいろと思考がはかどる。一人でいると案外に孤独といった寂しく感じない。
その孤独から憶測とかエロゲとかで楽しむわけだ。
「愛宕美桜サマに会えないかな」
また見知らぬ女の子の誰かが口にする。
(妬まれない……そうか。そもそも妬まれないほど
遠い存在感でいるからか)
杵築市から電車を乗って降りるのは大分市。
そこにフィクショナル専用に設立した学校がある。
つまりフィクショナルだけしか入れないのが、
フィクショナル国立大分市、
一学年の定員数は約40人ほど。三年制であまり普通の高校とは変わらない。
しかし異能を使えるようになるのは少数なため平均数はあまり期待できない。
「入りたくないな……ハァー」
俺がカリキュラムを受ける教室なのが一年四組だ。
座席は後ろの位置。
門をくぐり抜けて俺を視界に入っていた連中らは、
顔を歪める。
俺が入ってきたらコレだ。先程までの雑談を中断。
「どうして
「くたばった。おいおい情報はデマかよ」
「一掃のこと誰かがそうしてくれないかな。
ほら夜に背から刺すのは」
もう少しは言葉を選んでくれないとメンタルよわよわ俺は泣いて教室を出るぞ。
(はは、俺のこと嫌いすきだろ)
少しばかり教室を空けて来ていないからって。
誰も彼もが
度を超えすぎていないかな。
あまりにも扱いに泣きそうになる。
俺は席に着いて寝たフリを敢行する。
「ねぇ、気持ち良さそうにお昼寝して邪魔かもしれないけど。
もしかして斑鳩くんだよね」
「えっ?えーと、そうですが。
あの……俺に何か御用でしょうか」
腕を壁にして突っ伏していた俺は顔を上げる。
どういう風の吹き回しか俺に対しても親しみのある声調で話をかけてきた。
「あっ!いきなり声を掛けたから驚かせたよね。
えへへ、よく話の手順を一段や二段も省いてしまったよね」
ぐっ、なんて眩しい笑顔なんだ。
そこまで踏み込んで手順を飛ばせるのは、おそらくリア充の特権みたいな共通認識で成り立っているのではないかな。
そんな素朴な疑問をもし口にしたら格下の分際でとか思われる。
彼女はまだ言葉を続けるようだ。
「貴重だよ。
これがわたしの欠点だよコレはね。
それでこんな騒がしい女の子のこと覚えていないかもだけど――」
「――
「おぉー。覚えてくれていたんだね斑鳩くん。
なんか知名度が高いってテングになりそう。
それで少しの間に休んでいたけど。
もう元気になっている?」
「げ、元気です」
「そう。元気なら良かったよ。それじゃあね」
嵐のような女の子だった。
五穀舞はスクールカースト最上位。
地位を確立してクラスでは知らぬ者はいない……って俺の中ではそう見ている。
(それにしても本当にいるんだなぁ。
誰に対しても
肥満体型でボサボサな髪型。
そんな汚い顔している俺なんかにもフレンドに接して心配までする。
まず目を惹かれる容姿端麗。
髪はカラスの濡れ
長い髪を左右に垂らしたツインテール。
その右に髪飾りは丸い形をした花だ。
なんていう花が
「あの白くて丸い花はなんていうのだろう……」
独白は、ここにいる生徒の雑談に呑まれる。
それから授業が始まるまで俺は歯牙にもかけない態度を装いながら寝たフリを続けるのだった。
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