第2話―フィクショナル国立高校―

暗闇から浮上する感覚。寝ていたのか。

それはそうとなんていう倦怠感けんたいかん


(酷い目にあった。

頭の中が半分……なんだか泥を浸かっている気分の悪さにいるみてェーだ)


まぶたを上げる。

居るのは自宅の寝台ではなかった。

見渡してここがすぐ特定する。

大分県内にある杵築市きつきしのどこか。

やや古い病院の寝台。

看護師からいうには朝まで俺はそこで眠っていたらしいこと。

俺が最後におぼえているのは河川敷で倒れたまで。それと若い男性の高校生が目撃して救急車を呼んだらしい。


(で、それが仮に現実として受け取るなら。

あの高校生が俺を殴っておきながら病院まで運ぶように電話をかけてくれたと。

だとしても優しいのか間抜けなのか)


矛盾している行動を起こさせる。

愛宕美桜あたごみなをいかがわしい視線を向けてから。

あれ、もしこれが現実の出来事としたら俺の不注意があっても仕方ないことだ。


(誰だって、あの真っ白な足を凝視するだろ!

しかたない。

男子たるもの逆らえないんだ美脚には。

あー今になって腹たってきたぞ。

でも、あんなに強く殴ることはないだろうが!!)


なかなか現実と夢の区別がつかない。

判別つかないながらも今後どう人生に歩んでもあの二人との再会はない。

だって俺の人生は生まれてからずっと、そうだ。

廃棄物のような環境の中に身を置いているからだ。


「そうさぁ。

フィクショナル……創作ではすっかり廃れて今はジャンルとしては過去形の異能。

それに覚醒しても俺は腐ったままだ」


俺は高校へ上がる前に公式的な名称のフィクショナルという異能を発言した選ばれた人間。

そう選ばれた人間と飛び上がるほど嬉しくて期待していた時期があった。その夢は木っ端微塵になっているが。

格別であっても異能者と並んだら大したことの無い異能だった。


「体調はいかかですか。

斑鳩平次いかるがへいじさん朝の食事です」


「あっ、はい」


看護師が運んでくれた食事を手にして俺はそれを黙々と食べる。

彩りのなにもない薄い味。

静謐に包まれる部屋。

そして不快にさせる看護師があまり隠しきれず俺を汚物のように見てくる表情。

食べ終えた食器類をサイドテーブルに置き。その端に置いてある上に高校のパンフレットを広げる。


「……古代種と言っていたな。愛宕美桜は」


支給されるパンフレットに記載される内容に古代種を目を通す。

こんなもの見なくても前線なんか危険を突入するバカとは違い俺は賢く頭を使う方に回る予定だ。

でも古代種をわざわざ知る必要は無いと思ってはいたが結晶で人体が古代種に変貌していたら興味を持たざる得ない。


(なになに。古代種は、かつて古代に地球上にいた滅んだとされる伝説上とされていた生物。

それがよみがえったのは2009年アメリカので最も治安がいいと定評があったニュージャージー州。

そんな平穏な日々が広がる州に古代種が最初に復活したか)


書かれているのはせいぜい概要だけ。

詳細な内面ではない。


(アメリカか……一度は行ってみたい)


もっと知りたいがわざわざスマホでネットを調べる手間はする必要は無いし面倒くさい。

俺は、誰も気づかないようヘッドホンをしてスマホにダウンロードしているエロゲを楽しむのだった。

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