第3話

女性は少し怒ったようにカイル君をたしなめると私に向き直った。

「タクミさん、今から大事な話をしますね」

「はい……」

女性の真剣な眼差しに私は居住まいを正した。

「いいですか、タクミさん。今この村は大変な事態に直面しているんです」

女性は深刻な表情で私に語りかけるのだった。

2日目(冬)

窓から差し込む朝日で目を覚ますと、私はベッドから起き上がった。

隣にはカイル君の姿がある。

どうやら昨晩はそのままここで眠ってしまったらしい。

背伸びをすると体中から骨の鳴る音が聞こえる。

どうやら疲れはまだ完全に抜けてはいないようだ。

「おはよう、カイル君」

「んあ?もう朝なのか?」

カイル君は寝ぼけた様子で体を起こすと大きなあくびをした。

どうやら彼も昨晩はここで眠ってしまったらしい。

私はベッドから降りて窓際まで歩くとカーテンを開けた。

眩しい朝日が差し込むと同時に小鳥たちの囀りが聞こえてきた。

実にさわやかな朝だと思うのだが、私にはどうしても気にくわないことがあった。

(やはりおかしい……)

私は窓に顔を近づけて外の様子を確認した。

するとやはり自分の考えが正しいことが分かった。

「カイル君、どうやらこの村は外から隔絶されているようだ」

私の言葉で目が覚めたのか、カイル君は大きな欠伸をした。

「ん?どういうことだよ?」

カイル君は私に尋ねながらベッドから降り立つと窓まで歩いてきた。

そして外の様子を確認していた。

「何を見ても変わらないさ、この家も他の建物と同じく周りをぐるっと柵が覆っているようだ」

「ふぅん、つまりこの村は柵で囲まれているってわけか」

カイル君は興味なさげに欠伸をした。

どうやら異世界召喚物のお約束イベントはもう飽きたようだ。

そんなカイル君の様子を尻目に私は自分の荷物を確認した。

(よかった、ちゃんとある)

荷物の中から日記を取り出しパラパラとめくり始めた。

特に昨日書いた最後のページを確認するためだ。

「おじさん、何してるんだ?」

私の様子を見てカイル君が尋ねた。

「いやなに、昨日の出来事を日記に書いておこうと思ってね」

「へぇ、マメなんだな、おじさん」

カイル君は意外そうな声を上げると私の手元を覗き込もうとしてきた。

「こら!勝手に見るんじゃない!」

私は慌てて日記を隠した。

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