第四世界 数奇なフリージア 第七話

 僕達の目的は面喰を見つけること。…と言ってもまだ情報が何もないから、まず初めに、面喰が最初に現れた場所に向かった。

 道中、真幌まほろ享楽きょうらに何かを聞いていた。


「享楽、幻代面七枚の内容わかる?」


 すると少し困った顔をした。


「…いえ、どこのクランの人達かはわかってるんですけど…向こうのクラン情報くれないんですよね。」


 顎に手を置き、考えこんだ。


「まぁそうだろうね。一応、僕たち敵対組織だもんね。で、どこのクラン?」


 享楽が腰から資料を取り出して、読み上げた。


「シグマ、ダクト、フォル、そしてニューズが二枚、あとグレイホーンが二枚です。」 


 それを聞くと、真幌が少し驚いた顔をした。


「…ある程度は、有名どころのやつだろうなと思ってはいたけどグレイホーンも?」

「はい、二枚ほど…」


 真幌の表情が曇った。


「…規模はエンペラーの方が大きいけど、一人一人の戦闘力で言えば今のエンペラーより強いのに。」


 僕は、真幌達の話についていけず、シキさんに話を振った。


「…そう言えばその面喰の見た目とかって分かったりしてないんですかね。」


・・・・・


 僕の発言に少し場が凍った。

 何かまずいことを言ってしまったのか…と困惑しているとシキさんが耳打ちで教えてくれた。


「…レン、これだけ暴れていて目撃情報がないのは…出会ったもの全てを消しているからだよ。」


 反射的に口を押さえた。


「…まぁ、これから情報は集めるから。その時貢献してくれればなんの問題もないよ。」


 真幌が少し庇ってくれて、その場は収まった。その後は他愛もない話をしていた。

 

 雑談が続いていると現場についていた。そこは一言で言えば、何もない。それぐらい平らで何もない。むしろ美しいとすら言える広場だった。


「この広場に現れたんですか?」


 広場の真ん中ら辺に立ち質問すると、少し間があった。


「…ここは一ヶ月前ビル街でした。」


 ・・・全身の血の気が引いた。僕は、かなり舐めていたらしい。

 今立っているこの広い景色が相手がどんな化け物かを物語っいた。

 

「…ははっ」

 

 僕が絶句していると、真幌が僕の肩に手を置き少し微笑みながら話を進めた。


「確かに面喰は強い。…けど僕たちにはかの狂鬼様がいるんだから、大丈夫さ。」


 その後、まだ復興していない、真新しい最近面喰の被害にあったところに向かった。


「…これは、また違った荒れ方ですね。」


 目の前は、荒れ果てた廃工場といったようで全体の七割は欠損していた。

 周りを見ると、ところどころに深い傷跡なんかもあった。


「とりあえず、どんなのか知りたい。手分けして見て回ろう。」


 そういい、真幌と享楽は周りを見にいってしまった。

 面に関して知識がない、僕とシキさんは、ここ一ヶ月の面喰が出た場所などの資料を享楽にもらった。

 が、シキさんは僕に資料を押し付け、工場を見にいってしまった。


 ふと周りを見ると、ある壁の傷が目に入った。


「ーッ!!」


 何かに気がつき真幌が急いで享楽を呼んだ。


「…享楽、グレイホーンは情報をくれないっていったよな?」

「…はい。」


 享楽の質問の意図が分からず困惑していた。


「応答はしてくれたんだよな?」


 困惑しながら、恐る恐る答えた。


「…はい。ただ今上の人がいないから、とか言ってまともには取り合わせてくれませんでしたが。」


 それを聞くと真幌がしゃがみ込み大きくため息をついた。


「帰るよ。」


 唐突に言われまた享楽は困惑した。


「はい?急にどうしたんですか?」


 すぐに帰ろうとする真幌を止めた。すると止めた手を振り払って僕に言ってきた。


「これは今の僕たちに扱える案件じゃない。」

「それはまたどうして?」


 すると真幌は壁と少し特殊な傷跡に指を刺した。


「あれはなんだと思う?」

「傷?ですかね。それも少し変な形の。」


 真幌が手で頭を押さえた。


「…あの傷は、僕の知ってる限り、ある面でしかつけれない傷なんだよ。」


 何かを察し享楽が動揺した。


「もしかして…」

「そうだよ。グレイホーンのクランマスターの面だ。」


 そのまま真幌が壁の傷に触れた。


「…普通クランマスターが単独で動くはずがない。…多分グレイホーンの奪われた二枚の面のもう一つはサブマスターだ。」

「…確かに、クランの2トップが突然消えたら面喰どころじゃないですもんね。」


 すぐにレンの元に向かった。


「何か分かった?」


 戻ってきた真幌達の様子を見てシキさんが聞いた。


「いろいろと…すまないが一度拠点に戻るよ。」


 シキさんと真幌がそんな話をしている中、レンが資料をずっと読み漁っていた。


「どうしたの?」


 おかしなレンに気付きシキさんが声をかけた。


「いや、なんか変だなって思って…」


 そういい、資料の面喰の出現位置とその日にちが書いてあるところを見せた。


「ここなんですけど…」と位置と日にちをなぞった。


「これが?」


 困惑する真幌達に説明した。


「…いや、おかしいじゃないですか。真幌達の言葉が正しいなら幻代面って結構レアなものじゃないですか。…なのになんでこんな早く、しかもピンポイントで見つけられるんですか。」


 その言葉を聞き、真幌が急に資料を凝視し、そしてまた大きくため息をした。


「…面喰の次の出現位置が分かった。」


 視線が真幌に集まった。


「ここだ。」


 次の瞬間、ものすごい轟音と同時に土煙が舞った。

 目を開けると、変幻した享楽が壁にめり込んでいた。

 …目の前には白いドレスを纏い、灰色の髪を靡かせた、不気味で黒い仮面をつけている少女が立っていた。

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