第四世界 数奇なフリージア第六話
頭がぼんやりとしている。起きあがろうとすると頭に雷が落ちてきたかの様にズキズキと痛む。
痛みで少し頭が起きた。すると見知った声が僕に聞いてきた。
「起きた?」
目を開くと俺の顔をのぞいている
「おはようございます先輩、っとお二人は?」
そのとても礼儀正しい話し方に、僕は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてしまった。
「え?だ、だれ!?」
「すいません、名乗り遅れました。僕はエンペラー特別実働部隊隊長、狂鬼の
ますます困惑して、真幌に視線で助けを求めると丁寧に説明してくれた。
「たまにいるんですが…面をつけてる間その面に引っ張られて性格が変わる人がいるんですよ。」
その言葉を頭の中で咀嚼していると、真幌が話を進めた。
「それよりどうしてお前がここにきている?享楽。」
一気に重い空気になった。
「それは…先輩を呼び戻すためです。」
それを聞くと真幌がボソッと「あの自己中蛇が…」と呟いた。
シキさんが重い空気に割って入ってあることを聞いた。
「…話遮ってごめんね。さっきから言ってる先輩ってどう言うこと?」
その言葉にハッとして真幌の重い空気が抜けていった。
「あぁ、言ってませんでしたね。僕は彼、エンペラー特別実働部隊隊長の前任なんです。」
僕とシキさんが言葉を失った。でもその後また僕の方をニヤニヤと見出したので無視した。
少し雰囲気の軽くなった真幌が享楽の方を見た。
「ごめん、君に当たることじゃなかったね。」
少し考えこみ、真幌が享楽に聞いた。
「…冷静に考えればわかることだった。そもそも僕を呼び戻すにしたって、エンペラーの最高戦力である君が来るのはおかしい。何があった?」
その問いに享楽の顔が少し曇った。
「ここ最近、街で大量の面者が狩られていて…」
つっこむように話を遮った。
「よくあることじゃないか。」
そう言う真幌に言い返すように享楽が話した。
「…いえ、今回は被害かなり多く。現代面が二十枚、古代面が十二枚…」
享楽が息を吐いた。
「幻代面が七枚ほど…それもここ一ヶ月で、です。」
その言葉に少し真幌の態度が変わった。
「…確かに強いね。でも君一人で十分対応できるでしょ?なんで僕を呼び戻しに来たの?」
すると享楽の唇が少し震えていた。
「いえ、本題はそいつが"面喰"の可能性があることです。」
真幌の雰囲気が急に変わった。
「…ありえない。」
「僕もそう思いますが、可能性として…」
遮るように言った。
「ありえない。ありえるわけがない。」
また重い空気にを切り裂いてシキさんが聞いた。
「何度も話遮ってごめんね。その面喰ってなに?」
すると深呼吸して少し冷静さを保ちながら説明してくれた。
「面喰を説明する上で、面の力の根源と変化の先の力について先に説明しますね。」
「そもそも面の力というのは、霊界にいる生き物の霊たちが人に貸している力の結晶のようなものなんです。…まぁ、霊達が貸している力っていうのはとても些細な、人で言う…つめの先とか髪の毛一本程度のものです。」
上を見上げた。
「霊たちにとって僕たちの戦いはただの暇つぶしなんですよ…」
少し悲しそうに笑い話し続けた。
「話がそれましたね。つまり、変化とは霊のほんの少しの力で行われているんです。だからもし霊の全て、霊の魂まで全てを人に貸すと…それが面の最終形態"変神"です。まぁそんなこと、殆どの面ができないんですけどね。」
どうして?と聞こうとしたら顔に出ていたらしい。
「…だって当たり前でしょ?遊びに命をかける人を見たことがありますか?」
何か声をかけてあげたかったが…あいにく僕は享楽にかける言葉を見つけられなかった。
「そこで面喰です。面喰はその名の通り、面を喰らうことでその面の全ての力を奪い取ることのできる行為です。」
「強すぎだろ」と心の声が漏れてしまった。その声に真幌が反応した。
「できたらね。」
不思議そうにする僕に説明してくれた。
「面喰…面を喰らうという行為を行うにはある一定の条件があるんだ。」
「条件?」
すると真幌の表情が変わった。
「…面の本体の霊に生身の状態で勝てるかどうか。」
「ーッ!!」
その言葉に体が震えてきた。
「…実際に戦うわけじゃない。ただ比べるんだ。生身のそいつと面の本体とを。」
点と点が繋がるやつにさっきの話を理解して、ただ恐怖を感じた。
「君は生身で肉食動物に勝てると思うか?もし勝てたとして恐竜は?そのはるか上、神獣に勝てるか?いや無理だ。…つまり不可能なんだよ。面喰は。」
その話にシキさんが反論した。
「…じゃあ、もしそいつが普通じゃなかったら?この世界を明らかに逸脱したものを持っていたとしたら?」
その言葉に真幌はハッとした。
「アーティファクト?」
シキさんがみんなの前にきた。
「目的が決まったね。さぁ始めよう面喰討伐だ。」
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