第三世界 モノクローム第六話
その後、とりあえずレブロン近くの森で夜が来るまで時間を潰していた。
「ねぇポルカ、一個聞いてもいい?」
「なんですか?」
「さっきシリィが言っていた『自己犠牲の権化』って何?」
そういうとポルカは少し黙り込んでしまい、それを見てシキさんが僕を止めた。
「レン、いたずらに人の過去を聞くのはダメだよ。レンだって人に言えない過去はあらでしょ。」
シキさんが注意していると、割ってポルカが止めてくれた。
「いえ、いいんです。あなた方をこの戦いに巻き込んだ責任もありますからね。話しましょう、この戦いの始まりと私達の過去について。」
そう言ってポルカは長い話を語ってくれた。
「もともと私達三人はゼクス創設前から関係があったんですよ。」
私達三人はある国で魔獣の被害にあった人たちを助ける〈ガード〉と言うお仕事をして過ごしていました。
そんなある日、奇妙な救援を受けました。事前情報や依頼内容があやふやで助けてほしい人数すら言われず、おかしいと思いつつもその場に向かいました。
現場に着くと、なぜか救援をした人たちが棒立ちで立っていました。不思議に思い声をかけるようと近づきようやく私達は異変に気がつきました。眼球は赤く、歯は鋭く、そして血の匂いを纏っている。
後に調べてわかりましたが、それは伝説の指定災害魔獣ヴァンパイアでした。私達は目の前に居たヴァンパイアを討伐してからこいつらがどこからきたのか調べました。結果、そこから南方向にある小国、スフィアという国の方から流れてきたことがわかりました。すぐに私達はスフィアに向かいヴァンパイアを討伐しようしました。それが悪夢の始まりでした。
スフィアに着いてすぐ、私達は驚愕しました。スフィアは、国民はすべてヴァンパイアに感染していました。すぐさまギルドや国に協力を求めましたがどこもイタズラや戯言だと取り合ってくれませんでした。
私達は考えました。私達だけでヴァンパイアを殲滅するには戦力が足りず、けれどここで見過ごしてしまえばこの世界が滅んでしまう。そこで私達は闇の世界の住人の力を利用しようと考えました。ヴァンパイアとは伝えず、ただ虐殺をしようと誘い。そうして集めたのがシリィとアルマ、そして拘束されリュウに担がれてる悪魔のロゼです。
「ポルカ一個いい?」
頷くポルカを見てレンが聞いた。
「ヴァンパイアってそんなに強いの?」
「いえ、強いとは少し違います。ヴァンパイアは指定災害魔獣といわれる、存在そのものが世界を滅ぼす程の種に付けられる名称なんです。ヴァンパイアの戦闘力自体は普通の人間よりちょっと強いくらいです。」
「じゃあ、なんで指定災害魔獣なの?」
ポルカの顔が暗くなった。
「理由は二つ、一つ目はその繁殖力です。ヴァンパイアが人を噛むと、瞬時にその人間はヴァンパイアになってしまいます。そしてまたそのヴァンパイアが人を噛み…
要は、倍々ゲームのように爆発的に増えるという点です。つまりヴァンパイアが一人でもいれば、すぐにその国はヴァンパイアの巣窟になってしまうんです。
そして二つ目、これがヴァンパイアが指定災害魔獣と言われる最大の理由。それは見た目が人と殆ど見分けがつけられない点です。たった一匹いるだけで国が壊滅するヴァンパイアが、素人目ではほとんど見分け方が付けられない、となるとどんなことが起きると思いますか?」
少し考え込んでいるとシキさんが答えた。
「人と人との関係すべてが崩壊する。」
「そうです。はるか昔、ヴァンパイアが発見されてから数十年の間、人々の疑心暗鬼が国を崩壊寸前まで追い込んだり、至る所でヴァンパイア狩りなるヴァンパイアと疑われた一般市民の処刑などが横行していました。まさに地獄絵です。」
ポルカの話を聞いて、なんと言えばいいかわからなかった。
「だからスフィアの件も一般市民の大量虐殺と言うことにしてヴァンパイアの存在を隠していました。ですがシリィたちにそのことがバレてしまい、こんな状況になってしまいました。」
そう話していたポルカの表情がとても悲しそうな顔で笑っていた。
「ごめんポルカ。僕、君を犯罪者とか言って。」
「いいんですよ。もともとそう言う覚悟でやったんですから。」
ポルカが息を吐いた。
「今回、彼らがこの街を破壊しにきた理由も私への当てつけかなんかでしょう。」
「そんなこと…」
そう言おうとすると遮られて先に言われた。
「そんなことないよ。少なくとも俺は。」
「「!!!」」
驚きながらすぐに戦闘体制をした。目の前で声を発するまで全く気が付かなかった。でもすぐにこいつが誰なのかわかった。
「アルマ!」
「おう、久しぶりだなポルカ。おいロゼ、お前なんだその格好。」
アルマがこちらを見た。
「で、君たちだれ?」
「初めまして、私はシキ!」
名乗りながらシキさんが攻撃しようとする予備動作時に腕をアルマに止められた。
「まだ話してんだから聞こうや。」
シキさんが周りを見て手を下ろした。
「はいありがとう。で、君は?」
「レン。」
「レンか、よろしく。さぁ自己紹介も済んだところでさっきの話の続きだ。」
そういいポルカの方を見た。
「お前の言ったことは半分正解で半分間違ってる。ポルカ、俺はなぁ別にお前を憎んじゃいないよ。むしろあの時のお前はすごく美しかった。何かを含んだ笑顔で国民を端から端まで殲滅していく。あれはとても綺麗だった。」
空を見上げ気味の悪い笑顔で話し続けた。
「だから俺は考えた。どうしたらお前がこちら側の世界に来るかを。で、思いついたんだ。お前がその地位、名誉、全てを賭けて守ったこの世界をぶっ壊わせば、お前はあの綺麗な姿に戻るんじゃないかってな。」
街の方を指差した。
「だからまずはあの街を、お前が最初に守ったあの街を今日、壊す。」
「もし私が闇に堕ちたとしても、あなたの元には付きませんよ。」
「いいんだよそれで。あの美しい魔女がこの世に放たれるのならば俺はこの命を捧げてもいい。」
イカれてる、あれは狂気だ。
「さぁ始めよう、シリィ。」
アルマが指を鳴らすと街の上空に浮いているシリィがお辞儀した。
「Yes, My Lord」
シリィは街の上にある小惑星、ユースティティアに手を向けた。
「『堕ちろ』新たな世界の為に!!
『
瞬間、小惑星ユースティティアが街に向かって落下してきた。
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