第三世界 モノクローム第五話 

 えっと、うん。うわぁたかーい。下の景色を見るとこの現実から逃げてしまいたくなった。

 上から見ると、あのボロボロの城も絵になるな。うん新たな発見。


「で、これいつまで上がんの?」


 一瞬現実逃避してしまった。や、でもこの景色見たらしたくもなるでしょーよ。


「うゎー!!」


 一回叫んでみた。


「(落ち着けバカ)」


「落ち着けって言われたって、見てこれ、まだ上がってるよ?てか、大体なんなんだあの化け物ども。一人はこんな高くまで人を飛ばせるし、あの猫耳はポルカと協力してんのに全然倒せないし、なんなんだあの広範囲防御。あれ突破するのにどんだけスピード必要なんだよ。」


「(そうやさぐれるな。まずこの状況の解決策から考えようぜ。)」


 そう話してる間に上空5000メートルほどまで上昇していた。


「なんかここまでくると逆に安心してくるな」


 モードレッドの呆れる声が聞こえた気がした。多分気のせいだろう。


「(安心しろ。ちゃんと呆れてる)」

「そう言ったってどう…しー!!」


 その時、『落ちろ』その声と同時に一気に地面に引っ張られた。


「うゎー!!」


 やばいやばいやばい。本当に死ぬ。どうする、どうしよう。


「(レン!!)」


 モードレッドの声で少し冷静になれた。


「(お前の信念はなんだ?)

「なんだこんな非常時に。」

「(いいから答えろ)」

「シキさんの助けになりたい、シキさんのやりたいことの手伝いたい、シキさんを助けたい!」

「(なら今、お前がやることは!?)」


 大きく息を吐き冷静になろうとした。


 考えろ、考えろ、今俺ができる最大限を引き出せ。どうすれば助かる?そもそも助かった後どうすればあの猫耳を倒せる?

 てか、このスピードだったらあの猫耳ぶっ飛ばせそうだな。でも、まだ足りない。位置も結構ズレてるしって、何考えてんだ、まずは助かる方法を…、


「(深く考えんな!お前の本能に従え!!)


 この時、僕は脳のネジが外れかかっていた。それもそうだろう。初めての旅で初めての敵。そして上空5000メートル程に飛ばされて、普段体験することのない体験で僕の感覚がいかれてきていた。

 そのせいで、モードレッドの言葉が僕の頭のネジを吹っ飛ばしてしまった。


「アッハッハ、もういいや。このスピードじゃあのクソ猫は倒せない、あげてくぞ。」


 レンは剣を上に向け青い炎を爆発的に発生させ落下速度を加速させた。


「(おいこの位置じゃ当たんねーぞ。てか着地どうすんだよ)」


 モードレッドが楽しそうに突っ込んだ。


「ハハッ、知るか、シキさんがどーにかしてくれるよ。」


 シリィの分身が消えると同時に「落ちろ」の効果が消え立てるようになった。


「レンは?」


 そう言いシキが上を向くと上空に一つの小さな光がこっちに向かってきているのが見えた。


「なにあれ。」


 そうすると小さく声が聞こえてきた。


「シキさーーん!!」

「レン!」


 レンが無事なのを見て安心したのも束の間、レンがえげつないことを言ってきた。


「あの猫耳まで運んでください!」


 はぁ?何言ってんだあの小僧。はこべ?なにを?あのスピードのレンのことではないよね。

 すごいため息が出た。でも少し嬉しかった。これってレンが信頼して頼ってくれたってことだよね。やるしかないか。猶予はレンが落ちてくるギリギリ、今使う技は1秒しか発動できないから、もし私がミスったらレンは死ぬ。


「任せて。」


 レンが城に落ちる瞬間!


「『空門』」


 空門は、レンの落下地点とロゼのある方向に現れ、レンが空門を通り落下の勢いのままに、ロゼに突っ込んだ。


「ブルーバード!!」


 とてつもないスピードの剣にロゼは反応できず、吹き飛ばされた。


「大勝利。」


 そういうレンの後頭部を軽くシキが叩いた。


「ああいう危ないのは絶対やらないで。」

「スーッはい。」


 長いようで短い戦いが終わり気が抜け一気に疲れた。僕以外も疲れが出たのか、リュウに関しては膝までついていた。


「ネム!」


 ポルカが眠っているネムを見つけて連れてきた。


「あれポルカ何してるの?」


 ネムはまだ寝ぼけていた。


「安心してください、もう終わりました。」


 するとネムは一気に飛び上がった。


「ポルカごめん。私は囮にされた。ここにいるシリィは、ロゼの魔法の分身だったの。本物のシリィたちはもう街に向かっちゃった。」


 その言葉を聞いてポルカは目の色を変え、レブロンに向かった。

 レブロンにつき街を見ると唖然とした。街の人々がみんな倒れていたのだ。ポルカらはすぐ街の人の状態を見に行った。


「はぁー。よかった。まだ生きてます。ただ魔力が殆どありません。」

「どういうこと?」


「簡単に言えば、ここにいる人たちの生きる為に必要なエネルギーが殆どなく意識が飛んでいる状態です。」


「ごめん。私が捕まらなければ…」

「大丈夫です。まだ間に合います。今の状態なら2日ほどで皆無事に意識を取り戻します。なのでここからです。ここからこの街を私達で守ります。」

「うん。」


 ポルカが覚悟を決めた顔をした。


「ポルカ、私多分あいつらの計画聞いた。」

「内容は?」

「確か、「第一段階で魔力の補充し、第二段階は、明けない夜に実行しましょう。」って。」

「明けない夜、ワルプルギス…」

「ワルプルギス?」

「ワルプルギスというのは、ユースティティアと言う小惑星が最も近くなる日のことです。」

「へー、いつくらいにそれがくるの?」

「今日です。」


 ………。


「え?」

「今日です。今日の夜多分シリィたちが来ます。」


 流石に心の準備が間に合わなかった。

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