第三世界 モノクローム第三話 秘密
「…それで、その大犯罪者様は私達にどんな頼み事をするんですか?」
シキさん。頼むから目の前のやつに挑発しないで。と、心の中で唱えていた。
「ふふ、そんな警戒しないでください。国を消す手伝いでもされると思いましたか?」
冗談を言ってるようだが、冗談に聞こえなくてすごく怖い。
「私達〈ゼクス〉は、全六人で構成されてるんですよ。その中でも、私を含めた温和派の三人と過激派の三人で分かれてるんですよ。」
温和なやつが国消すなよ、と心の中で突っ込んでしまった。
「…それで少し前、私たちの中で少しいざこざがありまして。過激派の人達が、どっか行っちゃったんですよ。」
どっか行っちゃったって、えぇ…見たいな顔をするとシキさんが少し睨んできた。
「で、最近その過激派の人達がさっきいた国、レブロンを潰そうとしているっていう情報が、ありまして。まぁ、私達温和派としては、あまり無意味な破壊は望んでないんですよ。」
国潰しておいて、どの口がほざいてるんだろう。
「とどのつまり、私達は過激派の人たちを止めたいんですよ。そこで、貴方達に協力をして欲しいんですよ。彼らを止めることを。」
言葉の真意はわからない。…でも、ポルカの顔を見ているとすごく手を貸してみたくなってしまった。
そう思いシキさんに視線を向けると…
「…とりあえず、わかった。それで何をしたらいい?」
その言葉にポルカが驚いていた。
「さっきの警戒が嘘のようですね。」
「またして欲しいなら、今すぐしてあげてもいいよ。」
「ふふ、それは遠慮させて頂きます。では、この作戦をするにあたって、〈ゼクス〉のメンバーの名前と魔法についてお話ししますね。」
ポルカは、淡々と話した。
「まずは私から。私は骨の魔法を使い、地面や壁などに骨を生やせる広範囲殲滅型です。次にこの子。リュウは、風の魔法を使う自己強化型、体に風を纏わせ戦います。…次に温和派最後の子、ネム。人形魔法を使います。その名の通り人形を操れます。」
一泊置いてまた話し出した。
「…そして過激派、ロゼ。彼女は、影の魔法を使う悪魔。基本的に影を自由自在に操れます。次にシリィ、彼は命令魔法を使う。命令魔法は、声の聞こえる範囲にある生物やものに、魔力のある限り全てに命令できます。けれど彼の魔力量的に直接「死ね」などの命令はできません。…最後アルマ。彼に関しては、私もよくわかりません。魔法が自己強化型ということしかわからず…」
そういうと少し表情が強張った。
「…でも多分彼が〈ゼクス〉の中で一番強いです。」
すごい情報量に頭がパンクしかけた。
「で、アーティファクトについては?」
すると、ポルカの話が少し脱線した。
「本来、今言った通りの戦力では、スフィアみたいな小国は潰せても、レブロンの様な大国を潰すことはできないんですよ。…さらに私とリュウ、ネムを抜いた状態で。…なのに彼らは、やろうとしている。」
シキさんが何かに気づいた。
「三人を遥かに超える強力な、何かを手に入れた?」
「そうです。私もそう思ってます。その強力な何かが、貴方達の言っているアーティファクトだとしたら…彼らの行動に説明がつく。」
「わかった。それで今からレブロンでその過激派の、奴らを迎え撃ちに行くの?」
「いえ、一度スフィアに戻ります。」
シキさんが不思議そうに見るとポルカが小さな人形を取り出した。
「ネムの連絡用人形からの信号が無くなりました。多分…スフィアで何かあったんだと思います。」
「過激派の奴らの仕業?」
「…おそらく。」
そう聞くとシキさんは少しため息をしながら移動の準備をしていた。
「どうされたんですか?」
不思議そうに聞くポルカに当たり前のように答えた。
「どうって行くんでしょ。スフィア。」
少しポルカが黙った。
「…はい」
こうしてスフィアに向かった。道中シキさんのアーティファクトについての話があった。
「そういえば、私のアーティファクトについてレンにも言ってなかったね。」
結構走りながらの会話だったからあまりそれどころでは、なかった。
「そ、そうっすね。」
「ポルカ達に説明するついででレンも聞いといて。私のアーティファクト『記憶の書』は、使用者の見た能力なり、力なりを使えるアーティファクト。」
僕含め、その場にいる全員が引いた。
「…まぁでも、私が使えるのは見たものの中で私に適性のあるものだけだから。見たらなんでも使えるって訳じゃない。…あと使える能力も、いろんな制約みたいのがあるから。どこでも使えるわけじゃない…よ。だからその、そんな引かないで欲しいんだけど。」
シキさんが軽く落ち込んでいった。
「その制約みたいのってどんな感じなんですか?」
流石にシキさんが可哀想だから話を広げようと思った。
「ほんとにいろいろあるから、そこ知らなくていいよ。でも制約のないものも少ないけどあるよ。例えば『カテナ』、『夜空の繭』、あとエネルギーの集約弾みたいなのは制約なしで使える。…けど、ゆるい制約の技も多いからその場その場でいろんな技使うから頭の隅にでも置いておいて。」
話を聞いて唖然としていたらシキさんがこっちを見た。
「レンのも説明しといて。」
シキさんの話しで、僕もアーティファクトを持ってることを忘れかけていた。
「僕のアーティファクトは、この指輪です。この指輪に呼びかけると武器が出るってやつです。」
なんか期待外れみたいな反応で少し悲しくなった。
「あと…や、なんでもないです。」
僕のアーティファクトには、まだ秘密がある。それは…
「(おい!俺の説明雑じゃないか?もっと詳しく言えよ!)」
このうるさいのは。この指輪にいる剣の意志?みたいなのだ。
…前、初めて指輪を触った時に聞こえた声の主。アーティファクトの修行中に意識が飛んだ時があった。その時に意識内の俺の前に、騎士の格好のこの女が出てきた。
そのことをシキさんに相談したら、「アーティファクトは、喋らないよ…?」と結構マジで心配された。
それ以来モードレッドの話は正体とか外因がわかるまで誰にも言わないようにしていた。
「今は、これでいいの。」
そう小声で答えた。
そんなこんなで話をしていたらスフィアの城が見えるまで、もう少しって距離になった。
「もうすぐ見えるよ、私達の城。」
実は僕、ファンタジー系が好きだったから城というものにすごい期待をしていた。特に廃城とか。国消したんだったらその城もいい感じの廃城だったらいいなとか。
…けど流石に不謹慎だから心の隅にしまっておいた。
「あれが我々…のし…」
僕の期待は、最悪な形で叶ってしまった。城黒い煙が上がっていた。
外壁は、もともとあったにしては真新しそうな穴が多かった。
あの城は今、進行形で廃城になってるんだ。それを見たポルカ達は、顔色を変え最善の臨戦体制をとった。
「リュウ!!」
ポルカがリュウを呼びリュウは風を纏った。ポルカはリュウを呼ぶと同時に地面から大きな骨の手を出し投石器の容量でリュウを飛ばした。
「私達はすぐ向かいます。先に状況を!」
そういいリュウを飛ばし、全速力で城に向かった。
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