第三世界 モノクローム第二話 大物

 目の前にいるフード達にシキさんが答えた。


「こんにちは、挨拶をするにしては、少し殺気立ちすぎてる気がするんだけど。」


 前にいるフードがほくそ笑んだ。


「これはすいません。ちょっと外でお話ししませんか?」


 会話内容と空気の重さのギャップに胃がもたれそうだった。

シキさんは少し考え込んだ。


「わかった。『お話し』しに行こう。」


 言葉と裏腹にシキさんの目は威嚇していた。


 城門を出て結構歩き、人気の少ない森に着いた。


「随分遠くまで連れてくね。」


 ずっしりとした空気の中でシキさんが口を開いた。


「すいません。あそこら辺は、街が多いですから。」


 不気味なフードの威圧が、僕でもわかるくらいに強くなった。


「いい森でしょう。ミレニアというのですが、ある日をきっかけに、人が全く来なくなったんですよ。ここならいい『お話し』が、できると思いまして。」

「『お話し』ね。まぁその威圧に関しては置いといて、話し合いだろ?顔見せろよ。」


 シキさんの口調が変わり僕は少し、ビビった。


「これはすいません。」そういい二人は、フードを、とった。

横に居た無口なやつは、中性的な顔だちで同い年くらいの奴だった。それは別にいい。問題は、前にいる女だ。緑の鋭い目にオレンジがかった白い髪。スーツのようなドレスのような黒い服。独特な雰囲気に、飲まれそうになる。言葉で表すなら、そうだな、悪魔、または、神かな。とにかく化け物だ。今、ここで立っているだけで精一杯だ。少しでも気を抜けば逃げ出してしまいそうになる。


「私はポルカ、こっちはリュウ、改めてよろしく。」


 シキさんは全く動揺せず答えた。


「よろしく。それで早速本題に入ろう。何がしたい?」


 空気がより一層重くなった。その時、ポルカが大きく息を吐いた。


「すまない、そこまで警戒されると、さすがの私も少し気が引ける。こうしよう。あるゲームをして君が勝ったら、君の欲する情報を渡そう。私が、勝ったら私の頼み事を一つ聞いてもらう。どうだろう?」


 意外な相談に拍子抜けした。でもシキさんは、急に動揺した。


「いいよ。でも、どうして私達が情報を欲してると思ったの?」


 確かに何でこいつは、僕達が何も知らないということを知っているんだ。


「単純な話さ。君達の力は明らかに異質。それに、他にも魔力を知らないとか諸々で。君達は、どこか遠くの人たちなんだろうとは思ったよ。」

 

 そんなわかりやすかったかなー、みたいな感じで凹んだ。


「それで、ゲームって?」


 少し凹みながら聞いた。


「そんな難しいやつはしないよ。説明するね。ある三枚のカードがある。その内、先攻の人に一枚、後攻の人に二枚配る。そして先攻の人が、後攻の人のカードを引く。そして、そのカードの柄が揃ったら勝ち。わかった?」


 シキさんが何回か聞き返してルールを確認している時、僕はある一つのことを考えていた。あ、これババ抜きだ。


「わかった、やろう。」


 そしてゲームが始まろうとしていた。


「先攻、後攻、どっちがいい?決めていいよ。」

「なら遠慮なく、先攻。」


 ポルカが少しニヤッとした。


「じゃあゲームを始めよう。」


 カードが配られた。シキさんはポルカの顔を見て考えていた。


「君の表情は、まるで絵画のようだね。何考えてるか全くわからない。」

「褒めてもら当たるのかな?それならありがとう。」


 他愛もない会話。でも、言葉と裏腹に、お互い腹の探り合いが、まるで戦場のようで、その一端すらほとんどわからない自分がただ悔しかった。


「これかな?」


 シキさんが引いた。


「あー残念、違ったか。」

「それじゃあ私の番だ。」


 シキさんのカードに手をかけた。


「人の顔を言う割には、あなたも随分不気味な顔をしている。」


 シキさんはニコッと笑いかけた。それに合わせてニコッと笑い、カードを引いた。


「はい、私の勝ちです。」


 シキさんは、一瞬驚いて、次に笑った。


「ははっ、やられたね。」


 シキさんが、カードを刺した。


「初めから、私の勝つ未来はなかった訳だ。」

「いやいや、初めだけ少し、不利なだけですよ。」


 何が何だかわからなかった。困惑しているとシキさんが説明してくれた。


「要は、あいつの初め配られたカードは、揃ってたんだ。」


 余計わからなくなった。


「つまり私が初めに配られた黒いカード、これを揃えるものだと思っていだけど、あいつが持っていたカードは、二枚の赤いカードだったんだ。先攻の人は、もちろん揃うはずもなく、さらに先攻の人は、黒を引かれてはいけないと思い、赤を引かせにいく。つまり、後攻のやつは相手の引いて欲しいやつを引けば勝てるっていう、よくできてるよ。」

「そんな人聞きの悪い。先攻を選んだのは、あなたでしょう。」

「私が後攻を選べば、二枚のカードを黒赤にしてたでしょ。まぁもういいわ。」


 シキさんが少し呆れてた。


「フフ、わかりました。こうしましょう。引き分けということにして、貴方達は知りたい情報を、私達は、お願いを。」

「初めからこのつもりだったのか。」


 しらをきり話を進めた。


「ではまず、貴方達の目的を。」


 ため息を吐きながらシキさんは伝えた。


「私達は、この世界と違うところからきた。目的は、この世界に本来あるはずのない、紛れ込んでしまったアーティファクトって物を回収しにきた。」


 シキさんは迷いながら聞いた。


「本来、いろいろ聞きたい所だけど、まぁいいや。このアーティファクトに関して、何かそれらしい物や情報を教えてほしい。」


 ポルカが考え込んだ。


「その件に関しては心当たりはあります。けど、それは話すつもりでしたから。他に知りたいことがあれば、それを聞いてください。」


 意外な返答にシキさんは少し戸惑っていた。


「といっても急に言われたら、思いつきませんよね。でしたら先に、私達の頼み事を聞いてください。」


 ポルカが話そうとするとそれを遮ってシキさんが聞いた。


「ちょっと待って。アーティファクトの件の次に気になってだことがあるんだけど。これを聞かなければ、貴方達の頼み事というのも聞けない。」


 シキさんが、大きく深呼吸した。


「貴方達、いや、お前達は何者?」


 ポルカが笑った。


「ハハハ。気づいてたんですか、そうですよ。一夜にして国の住民を殲滅し、国を消滅させた、大犯罪集団〈ゼクス〉、その創設者。私は〈ゼクス〉リーダー、ポルカです。」


 あまりの大物に絶句した。


「改めてよろしくお願いします。」



 

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