三 女の実態
午後、横村から連絡が来た。
「今日の夕飯、いっしょに食べない?あなたと話したいの」
「ああ、俺も話したいと思ってた。電話でもすむことだ」
「良くないこと?」
「良いとか悪いとかじゃない。叔父が俺にアンタとの見合いを勧めたのはなぜだ?」
「叔父さんがあたしの母と親しくて、あたしが婚期だと言って、あたしにあなたを紹介するって、見合いの話になった・・・」
「叔父とアンタの母親の関係は何?」
「友人だよ。父とも友人・・・」
「アンタと叔父はなに?」
「叔父さんが母と友だちで、あたしは娘」
「何でアンタに直接見合いの話が行った?順序からいったら、アンタの両親が先で、俺とアンタが会う前に、両親が顔見せするだろう?なんで両親を飛ばすんだ?叔父は両親に見合いの話をしたんか?」
「叔父さんに聞けばわかるだろうから、話しとく。
両親は知らない。あたしと叔父さんだけで見合いの話を進めた」
「叔父とアンタの関係は何?」
「知り合い」
「どういう知り合い?」
「友だち」
「どういう友だちだ?正直に言え。調べればわかることだ」
「ああ、わかったよ!セフレさ。満足したかい。あんたにゃ母親が付いてるけど家付きだし、アンタがいい奴だからと説得された。あたしが婚期なのは事実さ。だから、叔父さんがあたしを心配した結果さ」
「今まで、何人とつきあった?」
「手と足の指の数、全部を超える。多すぎて憶えてないよ」
「叔父の女房にしてもらえ。あそこも倦怠期だ」
「話はわかった。叔父に話しとく」
電話が切れた。
俺は頭にきた。叔父の奴は何を考えてる。女房に、若い女と寝てるのがバレるのを恐れて、自分の尻ぬぐいを俺にさせる気か?
待てよ。奴はそんなに馬鹿か?軽弾みに、女房にバレるような事をするか?もしかして、奴は横村美枝に誘われて嵌められたか?その方が有り得るぞ・・・。
俺は古田和志に電話した。
「今、話せるか?」
「ああいいよ、野球を見てたとこだ。横村美枝の話か?」
「横村美枝に何か言われなかったか?」
「なにを?」
「寝た後で、何か条件をつけられただろう?何だった?」
「ああ、あのことか。結婚してくれといわれた。他の奴らも、みんな同じ事をいわれてた」
「それでどうした?」
「みんな、寝た後で、横村美枝の相手の数を知らされるんだ。結婚話の前に。みんな唖然として、話はそこでオジャンさ」
「結婚したいのに、次々に相手が逃げてゆくのか?」
「ああ、何か妙だよな・・・」
「どうした?」
「拘りが強いんだと思う。横村美枝の生活の中に他人が入る余地がない」
「妥協しないのか?」
「まったく無しだ。見合いなんかしたら、最悪だな?」
「わかった。他にも何かわかったら、教えてくれ」
「ああ、いいよ。横村美枝から電話があったんだろう?」
「ああ、そうだ。他言無用で話す。いいか?」
「わかった。誰にも話さない」
「横村美枝が叔父を嵌めたらしい。俺との結婚話を勧めるように」
「叔父さん、横村と寝てたんか?」
「ああ、それで、横村美枝に俺との結婚話を進めるよう強要されたらしい」
「その逆も有りだな。亮との結婚話を餌に、叔父さんが寝た」
「横村美枝の口ぶりだと、一度や二度じゃないらしい」
「互いにセフレか?」
「そういうことだ」
「ということはだぞ。二人で、亮をカモにしてるって事だ」
「その線は大いに有りだ。しかし、なぜ俺をカモにする?」
「家付きのいい男なんだろうな。横村美枝は亮に惚れてんだろうな」
「それは困る。しかし、どうやって見合いを断わるかだ・・・」
「簡単さ。セフレは困る、と言えばいいさ。誰のセフレだなんて言わなくていい。身に覚えがあれば、自分で結論をだすさ」
古田和志がそう言っている間に、玄関で伯父の声がして、ズカズカと叔父が家に入ってきた。
「噂をすればだ。伯父が来た」
「俺もそっちへ行く!揉めるはずだ。あの叔父は短気だ。ケンカンぱやいっから、気をつけろ!」
「わかった。すぐに来てくれ」
「了解!」
電話が切れると同時に、勢いよく、俺が居る応接間のドアが開いた。
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