第2話 序盤で死にたくないから破滅回避計画を立てる

 どうやら俺は、異世界に転生したらしい。


 黒い髪、黒い目で、歳は10歳くらいの少年に。


 家は貴族で、裕福なようだ。


 あと、ものすごーくデブだ。


 二重顎、三段腹、ぶよぶよの指、ぶっとい足……


 顔はもちろんブサイク。


 (痩せたら意外と、イケメンだったりして……そんなことないか)


 で、一番重要なのは、この世界があのゲームと似ているってことだ。


 聖勇伝説の世界に、すげえ似てる……


 ていうか、そのままの世界だ。


 貴族だけが魔法を使えるということ、


 魔王ヴェノムロードに世界が脅かされている設定が。


 俺の名前は、アルバート・ファン・マクタロード。


 アルトリア王国の侯爵で、序盤ですぐ死ぬモブ。


 だが、実は裏ボスとしてクリア後の隠しダンジョンに登場し、主人公とプレイヤーを驚すアイツ。


 正直、裏ボスとして登場するまで、名前さえ忘れていたキャラだから、原作のアルバートの設定は知らない。


 そもそも原作にも設定とかあるのかな……?


 さすがに裏ボスだから何かあるとは思うが。


 ……ともかく、序盤で死ぬことは確実だから、


 とりあえず、原作の流れを書き出してみる。


 ・魔法学院に入学

 ・平民の主人公に出会う

 ・主人公をいじめる

 ・主人公と決闘して負ける

 ・主人公に復讐するため、魔族と手を組む

 ・魔族と一緒に主人公を襲うが、負ける

 ・アルバートは死ぬ。

 ・エンディング後、裏ボスとして復活。


 よし。破滅回避計画を立てよう——


 5年後、魔法学院に入学したら主人公たちと関わらないようにしよう。


 なるべく1人で行動して、目立たないようにして。

 

 あとは、何が起こっても大丈夫なように、レベルを上げておこう。


 主人公たちと万が一戦うことになっても、負けないようにしなければ……


「よし! さっそくレベル上げだ!」


 マクタロード家の領地に、ダンジョンがあったはず。


 本編をクリアするまで出現しないダンジョンだが、


 俺はどこにあるか、覚えている。


「あの隠しダンジョンに、金属系スライムの巣があったような……」


 クリア後のレベル上げに、よく使われる場所だ。


「よしっ! セリスっ! 来てくれ!」


 俺は専属メイドのセリスを呼ぶ。


「……はい。アルバート様、なんでしょうかぁ……」


 かなりテンションが低い声。

 

 真っ暗な表情。


 かなり嫌われているようだ。    


「俺の剣を持って来てくれないか? ダンジョンへ行くから」

「け、剣?! アルバート様が、剣を……っ!!」


 驚きすぎじゃね……?

 


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