第9話 おれごん買い出し紀行

 すみませんね、このところ暗い話ばかりで。第8話ですでにあの重さ、極まっていますぜ。おれごんのドス黒い闘いはこれからだ!


 でもね、いつも隣にあるわけじゃないですか、暗いものって。目を背けて暮らしているだけで、視線さえ向ければいつも隣にあって。それは健康診断の結果や地震なんかをきっかけに、ある日ドッカリと正面に出てきて通せんぼをする。


 今回はおれごんの偏見たっぷりで述べた場合の話です。『世の中がこうですよ』ではなくて、おれごん個人の私見でお送りします。




 都会とは言わないまでも、人が集まるところはいいものです。何かしらに合格し、転居し、転職し、お付き合いが始まり、ときには発展的に別れ、結婚し、赤ちゃんが生まれて。何かしら明るい、あるいは先がみえる場所。


 田舎とは、そうではない場所とおれごんは定義します。

 収穫の喜びがあるほかは、死が常にそばにある。昨日はあそこで、今日はここで。

 古めかしい家は更地になり、田んぼは駐車場になり。まだ利用価値のある土地でそれですから、価値が低いと断ぜられる土地では朽ちるにまかせて。心なしか空もどんより。


 人口が減少するばかりの土地は、滅びが待つばかりなんですね。身体のどこが悪い、誰が入院した、彼が施設に入った。田舎で暮らしているとそんなことばかりを聞きます。


 昭和に日本全国くまなく1億2800万人。それが頂点。そこから都会に人口が集中するように変化して。

 昭和の末に過疎化が進んで。

 平成で高齢化が進んで。

 令和で少子化が進んで。


 まだ1億2500万人くらいなので一見キープできているのかと思いきや、それはかつて早々にお亡くなりになっていた老齢の方が長生きになっただけ。働き盛りはなんと、戦後すぐと同じくらいにまで減少しているんです。あの若者たちがバンバン亡くなった直後と変わらないんですよ。私も数字を調べて驚いたのですが、そりゃあ衰退しない方がおかしいです。


 これから滅びゆく、たそがれ時の日本。でもこの国にはお似合いじゃないですか、どこか情緒があって、わびしさがあって。

 まるでヨコハマ買い出し紀行の世界に迷いこんだかのよう。この週末は15年ぶりくらいに、かの本を開いてみたいと思います。ま、発掘するところから始めなきゃなんですけども。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る