【第2部】大学生編

大学1年 ールームシェアー

第42話「シン、一緒に住もうぜ!」


 アヤメの枯れる季節にあずま先生は亡くなった。私の信じたものが瓦解していく音が聞こえる。耳を塞いでも塞いでも、その音は増すばかりだった。


***


 4月の3週目の日曜日、俺は雄馬とカンキ君と一緒に、一軒家でルームシェアを始めた。

 雄馬から最初にルームシェアの話を持ち掛けられたのは、受験が終わった後の3月の初めだった。急に雄馬に呼び出されて、新宿のサイデリアに向かった。


「雄馬、話って何?」

「シン、オレら一緒に住もうぜ!!」

「うん……え? どういうこと?」

「ルームシェアって知ってるか?」と雄馬は目をキラキラさせながら言った。

「ルームシェア? ああ、まぁなんとなく……」

「やってみようぜ! オレらで!」

「え、マジで言ってる?」

「ああ。三人で家借りて住むんだよ」と、雄馬が笑顔でスマホの画面を見せてきた。2階建ての一軒家の間取り図が表示されている。


「三人って、あと一人は?」

「かんちゃん!」

「えぇ……」


 カンキ君は、俺がルイに刺された事件の後、大阪の家族の元に一度帰っていたが、最近になって再び新宿に戻ってきていた。大阪ではあまり友達がいなかったのに対し、新宿では多くの知り合いが出来たので、こちらの方で生活したいと思ったようだ。

 雄馬が上機嫌で話を続ける。


「18歳になったからさ、不動産を一人で契約できるようになったじゃん。だから、サッサと家出て一人暮らししたいんだよね」

「一人じゃないけどね」

「まぁな」

「そっか、そのためにバイト頑張って金を貯めてたのか」

「そゆこと」


 聞けば、最初は一人で家を借りようと計画していたが、都会で一人暮らしは想像以上に家賃の負担が重いため、カンキ君とルームシェアを考えついたという。しかし、それでも一人当たり6万以上の家賃負担になるため、色々考えた結果、三人で一軒家を借りるのが最適解だと思ったようだ。


「この物件さ、ぼろいけど一人当たりの家賃負担が5万で済むんだよ。おまけに一軒家だから、多少騒いでも良さそうだし。俺、一人暮らししたらエレキやりたいんだよね」

「ちょっ、ちょっと待ってよ。まだ俺、やるって言ってないけど」

「え? いーじゃん。やろうぜ。絶対楽しいって!」


 目の前で浮かれている雄馬も、我が道を行くタイプのカンキ君も正直不安でしかない。家賃をちゃんと払ってくれるのかとか、家事の分担とか、雄馬とカンキ君が喧嘩になったらどうしようとか、とにかく色んな不安が湧いて出た。


 実は雄馬から3月初めにこの話をされてから、俺は高校の卒業式の時も、同中メンバーでやった合格祝賀会の時も、エレナちゃんに会ったときも、密かにこの問題に頭を悩ませていた。しかし、いくら考えても結論が出せず、母さんに話してみることにした。

 すると、母さんは少し悩んだ後にこう言った。


「でも、それだけ悩んでて諦めきれないって事は、本当はやりたんでしょ?」


 母さんのこの一言で俺の腹が決まった。その後、反対する父さんの説得に時間がかかったが、父さんも最終的には「もう成人だからな。自分の責任は自分で取るように」と言って、ルームシェアを許可してくれた。



 


◇◇◇◇◇


【親愛なる読者の皆様】


第2部も引き続きお読み頂き、誠にありがとうございます!


それと、すみません!! 調子のって、今日2話あげちゃいました!

今後は1日1話、更新です!

安心してください(^^;)


これからも色々ドラマがあるので、どうぞよろしく☆

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