第40話 進路

 俺は、文化祭後に部活を引退してから、受験勉強に本腰を入れた。既に夏から、颯太やゆかりと一緒の塾に通い始めており、皆で切磋琢磨したおかげで、冬頃には第一志望の私立大学がA判定を取った。その勢いのまま2月の受験を迎え、無事明慧めいけい大学の社会学部に合格することができた。健は既に東京体育大学にスポーツ推薦で合格しており、また、ゆかりも私立大で、同じタイミングで合格になったため、この三人で颯太に気遣いながら遊んだりした。

 颯太は美夜子先輩と同じ大学を志望しており、国立の東煌とうこう大学の経済学部に挑戦していた。


 俺は自分が何学部に進むべきか随分悩んだが、結果として明慧大学の社会学部社会学科を受験し合格した。虐待されている児童を救うために児童福祉司や児童心理司になるための福祉系の大学も検討したが、最終的に社会学部を選んだ。理由は虐待等の問題は個々に対応することも大事だが、俺は社会全体で解決を図っていきたいと考えたからだ。なぜ虐待が起きるのか、なぜアネ広のような場所が生まれるのか、その時の社会構造と、それらに社会はどう向き合えば良いのか、どう支援ができるのか、そういったことを学びたいと思った。それに、個人で子どもたちを救おうとしたら、また先生みたいに無茶をする人が出てきてしまうかもしれないという恐れもあった。


「もうあんな哀しい人は見たくないんだ」


 ぽつりと口から出た言葉が入学書類の上に落ちた。



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