第19話 苦しくない場所――――(作者コメント有)
文化祭当日、俺のクラスはお化け屋敷をやった。俺は白い布を被って物影に隠れ、近くを人が通る度に立ち上がり、わっと大声を出した。キャーッと興奮と恐怖と快感が混じり合った声を何度も聞いた。そのうちに俺の出番が終わったので、クラスメイトと交代した後、部室に向かった。
「お、来たな。じゃあ、僕はそろそろ出番だから、店番よろしくな」
颯太はそう言って部屋を出て行った。しんと静まる8畳の部屋。音が壁に、本棚の本に溶けて消えていき、埃が太陽光でキラキラと輝いている。開いている窓から賑やかな声が入ってくるが、その輪郭はぼんやりしてはっきりしない。
窓側の椅子に腰掛け、何もせず、ただ呆けたように息をする。読み手のいない冊子は無気力に机の上に横たわっていた。結局、俺は適当な詩を作って提出した。一応良い物を作ろうとはしたが、頭にノイズが流れて上手くいかなかった。先輩が言うには、我が校の文化祭は一般公開しているが、文芸同好会の来客者数は毎年1桁とのことだった。
「……」
とりとめのない記憶や感情が浮かんでは虚空に消えていく。そんな様子を眺めていたら、突然扉をノックする音が聞こえた。
「はい?」
「ああ、新。良かった」
「一池?」
扉を開けた一池は、ほっとした顔をしていた。
「ちょっとお邪魔していいか?」
「良いけど」
一池は部室に入ると、俺の真向かいの席に座り、参考書を持ってこう尋ねた。
「なぁ、ここで勉強してもいいか? 今日は自習室が閉まっているんだ」
「あ、ああ。いいよ」
「ありがとう」
そう言って本を開いた一池の姿が眩しくて、思わず目を閉じる。
しばらく部屋にはシャーペンと紙の擦れる音だけが流れていたが「なぁ」と一池が話しかけてきた。
「新。お前、最近あまり元気がないようだが、それって例の件のせいだろ?」
「……ああ」
「……何がそんなに嫌なんだ。お前は過去のことなんて気にしなくて良いじゃないか」
「……俺にも、うまく説明出来ないんだ」
「なんだ、それ」
「わからない。けど、感覚的に、何かが嫌なんだ。とにかく苦しいんだ」
一池はふむ、と考えた後、俺を見つめた。
「それ、苦しくない瞬間はないのか?」
「学校だとないけど」と言いかけて、ふと、気が付いた。
◇◇◇◇◇
【親愛なる読者の皆様へ!!】
結構キツい話が続きましたが、ここまでお読み頂き、本当にありがとうございます!
「俺の作品が読まれている」、この事実だけで飯が3杯食えるし、夜は20時間寝れます(ウソです、6時間睡眠です)
ここからまた色々あるので、引き続き、お付き合い頂ければ幸いです!
また、ここまでで「いいな」「続き気になる」と思われた方は
♡、★、コメント等、応援頂けると俺が泣いて喜びます!
あと、作者の勝手な所感ですが、一番キツい部分はこれで終わりました。
これからもハードな所はちょこちょこあるんですが、
今回みたいに「何話も連続ハード」ってことはないので、安心してください。
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