24話 金髪美少女とちょっとしたデート
『――で、なんでお前がついてきてるんだ』
着替えを買いに外に出た俺、何故か金髪美少女がついてくる件。
夕焼けに街の明かりが灯り始める中、俺はイヴとともに不規則な人の波を縫っていた。
『ママだけシュウトと二人きりはずるい』
『イヴとはその前からずっと二人きりだっただろ』
『それはそうだけど……』
どうやらまだ妬いているらしい。
唇を尖らせながら、まるで自分のものだとでも言うように俺の腕をぎゅっとしている姿が愛らしくて困ってしまう。
思わず苦笑してしまった。
『ただ服を一着買いに行くだけだぞ?』
『それでも一緒にいたいのっ』
『我儘だなぁ』
そう言いつつも、俺はイヴを引き剥がすようなことはしない。
我ながら段々とイヴに甘くなっているような気がする。
彼女に素っ気なく当たるのは胸が痛むようになったし、彼女と肌を寄せ合うのは心地よくなった。
……これが、惹かれるということなのだろうか。
俺は誰か異性を好きになったことがないので、どういう感情が「好き」に値するのかがよく分からない。
少なくとも、彼女は俺にとって大切な人だ。
それはもう認めなくてはならない。
でもその括りなら彼女を傷つけて自分が傷つくのも、彼女と触れ合うのが気持ちいいと思うのも当たり前に思える。
そしてきっと、好きな人にもこういった感情は抱くだろう。
だからこそ余計に分からなかった。
好きな人だけに抱く感情はあるのだろうか。
もしあるのだとしたら、それは一体どういう感情なのだろう。
……好きな人が自分のそばを離れた時、果たして俺は正気でいられるのだろうか。
『――シュウト?』
『な、なんだ?』
思考の渦にイヴの声が突然入ってきて、思わず目を
見ると、彼女は心配そうに眉尻を下げていた。
『さっきからずっと黙ってるけど、何かあった?』
彼女を不安にさせたくない。
そんな思いすら芽生えてしまって、俺は咄嗟に口元に笑みを浮かべた。
『大丈夫だよ。ちょっと考え事をしてただけ』
『……シュウトって、考え事をしてたら苦しそうな顔をするの?』
『し、してたか?』
全くそんな気はなかったため問い返すと、イヴは何かを言いたそうにしながらコクリと頷いた。
『いろいろと考えちゃうのはしょうがないかもしれないけどさ、今は笑っててよ。デートしてるんだし』
最後にサラッと付け足した言葉を、俺は見逃せなかった。
『これはデートなのか……?』
『男女がショッピングに行くのは、完全にデートでしょ!』
『ショッピングって……俺たちはただ服を買いに行くだけで――』
『ごちゃごちゃ言わない! これはデートだから、目一杯楽しまなくちゃいけないの!』
『ちょっ、引っ張るな!』
グイグイとイヴに腕を引っ張られる。
どうしてこういつも彼女に振り回されてしまうのだろう。
そう思うも抵抗するのは憚られ、俺はズルズルと彼女に引っ張られていった。
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