金の成る木

ついに今日僕は僕ではなくなる。

そこに僕の意思はなく、生きていればいいだけの存在を強要されることになる。

ただ搾取され死を待つだけのお人形になれない人間。


先生はいつもより大きい注射を準備していた。それで僕の血をとっていった。「すぐに君の血が素晴らしいことを見せてあげるからね」

そんなことどうでもよかった

ただひたすらに僕は腕が痛くてしょうがなくて泣いていた。

お姉さんは僕の血を持って部屋を出ていった。




「ひぃぃ、ぁあああ゛あ゛あ゛あ゛」「どうしましたか」「大丈夫ですか」「ぃぃやぁああぁあ"あ"あ"あ"あ"あ"」「数値が」



すごい悲鳴が何度も、色んな人の慌てる声、足音が聞こえた

僕は少し嬉しかった。これが失敗したら僕はまた痛い注射をされないと思ったから。こんな痛くて僕の望んでいないことをしなくても済むんだって

先生も呼ばれてどこかに行ってしまった。

両親は呆然としていた。

そりゃあ、お金になると思ったのに悲鳴があがって違うのだろうと気づいたんだろう。


数時間経って先生が「もう一度血をとらせてほしい。検査をし直す。」

あの興奮したようなギラギラした恍惚な笑顔ではなく、僕の知ってるお医者さんの先生のお顔だった。

だから僕は今度は大丈夫かなって思って頷いて血をとってもらった。



もう両親はあの日から僕を見ても変にならなかった。

でも2人に触られるのも何もかもが嫌でどうしようもなくて、でもどうすることもできなくて大人しくしてしばらくそう過ごしていた。

病院から連絡が来て、またみんなで病院に向かった。


開口一番に先生は「彼は黄金の血と反対かもしれない。誰の血も受け付けない可能性がある。」

びっくりした。まさかの真反対の血液だったけど、嬉しくて安心した。


「ご両親の血も合うか分からないので検査させてください。」

2人も血をとって僕に合うか検査になった。

結果、両親でさえもダメだった。


お医者さんは真面目な先生のように

「彼を過保護にすることはあまりおすすめしません。子供は好奇心旺盛で抑えられると反発でなにをするかわからないです。ですができるだけ怪我や危険から遠ざけることが大切です。」

2人は泣きながら頷いていた。

僕はあんまり遊べなくなるのかなって不安になっていたけど、ママが「ごめんなさいね、ママとパパが変な事を考えて貴方に酷いことをしたせいよ。ごめんなさい」パパも同じようなことを言って謝っている。

正直僕はあの歳であの1週間で2人がどうしようもなく、ひどく恐ろしかったから、今更謝られたところであの事実は消えないし、どうしようもないと思ったけど頷いておいた。

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