第10話 美夜の選択
◇◇◇【5月3日】
“ねえ美夜、そのリボンどうしたの?”
“これね、小さい時にパパにもらったの”
“パパいないんじゃなかったっけ”
“ある日ね、公園で一人で遊んでたら、「よう」って声掛けてくれたの”
“それパパじゃないんじゃ……”
“ううん、私には一発でわかったよ、パパだって。親子ってそういうものでしょ?”
“うーん……変な人についていかないようにね”
“でね、1日中ずっと遊んで、最後に魔法でリボン作ってくれたの。これがそれ!”
自室のベッドで、半ば夢の中で回想される思い出。
まだ小学校2年生だった私達が、校庭で遊びながら交わした会話だ。
私は美夜にすごく似合っているなと思って、質問したのである。
毎日つけてくるということは余程のお気に入りなのだろう。
最後に魔法でリボン……?
なにかおかしな点を見つけ、近所の人外を思い出す。
鳳凰。
彼女も、魔法みたいに変身していた。
まさかこの一件、神々が絡んでる……?
だとしたら、美夜の能力だって説明づく。
「あれ、私今……」
とんでもないこと、考えてた?
今日からゴールデンウィークである。
毎年は、美夜と遊んだり、本を読んだり、なかなかインドアな過ごし方をする私だが、今日はやることがあった。
美夜のお見舞いである。
お見舞いに行くとおじさんに伝えてから玄関を開ければ、御先さんがまるで昨晩から待ってたかのようにいた。
起立、礼、着席の礼の部分で動かない。
「おはようございます、瑠璃さま」
「……おはようございます」
いつもこうだ、ロボットのように挨拶を交わすのが私たちの関係だった。
しかし昨晩のあれはなんだ。
見たことない乱れように、美夜への声掛けーー知らない御先さんだった。
車に乗り込むと、意外な人物がいて驚いた。
「な、なんで先生が……」
小鳥遊朱祢先生が、今日は白衣の代わりに春物のコートを羽織って座っていた。
「よぉ、元気か?お友達のことはあんまし気にすんなよー」
ニカニカした笑顔で私を出迎えていた。
「えっ、お知り合い……」
“アカネさまの元へ向かうのですよね。とても素晴らしいお方です。
ひ仲良くしてくださると、私としても嬉しいです“
あ、なんかそんなこと言ってたな。
どういう繋がりなのか全く分からないが、主人のつながりみたいなことも言ってた。
「御先くんはあーしの主人の下僕なんよ」
「先生旦那さんいるんですか」
「おうよ、超イケメンでびっくりするかんなー!」
聞いてない情報まで出してきた。
よほどラブラブなようだ。
乗り込んで、車は発進していく。
「……病院までお願いします」
「承知しております」
「……」
「……」
私たちの無言に耐えられなくなったのか、先生がわざとらしく聞いてきた。
「あー、あーのー、美夜ちゃん?とは昔から仲良かったのかな?」
「小学一年生のときから」
ぐうぜん、学校を休んでいた美夜は、惨事を見ることなく、悩んでいた私に「じゃがんってなあに?」と聞いてきたのだ。
リルを失ったばかりの私にとって、美夜は心の支えにするには十分な存在だった。
異端な能力を持っていて、自分に等しい存在。
私の中にその存在はどんどん大きくなっていき、現在にいたる。
……小さい頃から、決して母親を悪く言わない彼女を知っている。
だからこそ、昨日の光景は悲しかった。
ごめんなさいと頬をぶたれて泣く彼女は、見てられなかった。
「……ネグレクトを受けてたのを知ってたなら、なんでもっと早く児相とかに相談しなかったんだ?」
「……本人が嫌がったので……母親といることを望んでたので」
「本当にそうか?もしかして他の選択肢があったらーーそっちを選ぶんじゃねーかもなあ」
指を1本から2本にぶいっとしてから、ニンマリ笑った。
「他の選択肢って?」
「父親のところに行くっつー選択肢だよ」
あっさり、手札を見せてきた。
拍子抜けしてると、彼女はさらにつけ加える。
「あたしらは父親を知ってるーーその父親も受け入れる覚悟があるって言ってる」
病院に着いたらしく、駐車場に入っていく。
休日なので外来受付をしてないため、昨日よりずっと空いていた。
「え、お父さんが受け入れる覚悟があるって?」
「おー。
元よりそのつもりだったんだけど、別れる際に子供だけは取られたくないって思った山本由美……母親な?それが、妊娠を隠したらしいんだ」
車から降り、カッカッと軽やかにヒールを響かせながら病室へ向かう。
私たちの明るい髪色に振り返る人もいたが、我関せずといった様子。
慣れてるのだろう。
「昔、それを知って会いに行った時、とても元気そうだったから、自分の出る幕では無いなと思って、忘れたことにしてたらしい」
「……あっ、昔、小さい頃パパに会ったんだと喜んでました」
「そーそれ」
病室につき、ガラリと扉を開ける。
中には起き上がって教科書を読んでる美夜がいた。
良かった、起き上がるまでには回復したんだ。
髪型はいつものポニーテール。
リボンをつけていた。
「あっ、瑠璃!」
私の姿を見つけて嬉しそうにしてから、怪訝そうに先生を見つめる。
「あ……の?」
「私のボディーガードの保健室の先生だよ。
私と同じく、人間じゃない神様」
その一言でビクッとし、警戒心を強める美夜。
「どーもー
そんな怖がんなくていいよ、ただの鳳凰っちゅー鳥だから」
病室につかつかと入っていき、彼女のリボンにそっと触れる。
「……偉いね、ちゃんと大事にしてたんだ」
「な、なんですか……!」
「美夜、本当にこの人は怖い人じゃないから……私たちよりの人だから」
そう言うと、まだ警戒心は解かないが、さっきより顔が柔らかくなる。
病室の椅子に座り、ふー……とため息をついてから。
「美夜ちゃん。
神様って信じるか?」
「信じてます」
そうだ、この子は信じる子だ。
何があっても希望を捨てない、そういうところが魅力的なのだ。
「あたしはその神様だ」
自分の胸を指さし、そう宣言した。
「……え?」
あんぐりと口を開ける美夜。
「鳳凰って知ってるか?それが人間に化けた姿ーーそれがこの姿。
はじめまして、山本美夜ちゃん。
小鳥遊朱祢、鳳凰の朱で、貿易を担当してる者だよ」
そんな難しい自己紹介をして大丈夫かと思ったら、美夜は口元を手で多い打ち震えた。
「神様は本当にいたんだ……!」
あ、そっちに感動するか。
「私ずっと祈ってたんです!いつか神様が現れて、私を救ってくれるんじゃないかって!」
手を祈りのポーズにして、心底喜んだ。
変な詐欺とかに引っ掛からないだろうかと不安になった。
「……というわけで、瑠璃は玉藻前の器ってわけ」
簡単に私の説明をして、わかったのかわかってないのか微妙な顔をしてから。
「なるほど、だから邪眼なんですね」
「それがね、ほかの散らばった邪眼を全部集めれば、玉藻前が完全復活して私は人間になれるかもしれないんだ」
私がそう付け加えると、ぱんっと手を叩いて喜んでくれた。
「……それは良かった!!人間になるのが瑠璃の夢だったもんね!」
心底喜んでくれてるようで、満面の笑みだった。
「さっき言った通り、霊力が欠けた状態で復活すると体がなかったりしちまうんだ。小さくなったり、記憶がなくなったり」
「それで瑠璃もアカネさんも大変だったんですもんね……」
「記憶を無くすって、自分が鳳凰だったという事まで忘れちまうんだよ。
それでな、」
一呼吸置いて、先生は、覚悟を決めたように話した。
「鳳凰が鳳凰だって忘れてた状態でできた子供、それがお前だ」
その瞬間、美夜が私の手を握ってきた。
驚きと戸惑いとーーその気持ちは計り知れない。
「わ、私は……半分……」
「そー、人間じゃねー。
鳳凰だ。
お前、人の心が読めるだろ」
ぎゅ、とにぎる力が強くなる。
「うちらの特徴のひとつにな、同種族の心が読めるっていうのがあるんだ。
お前は意識してないかもだけど、鳥と人間のハーフのお前は鳥の声と人間の声が聞こえるはずだ」
「と、鳥の声も聞こえるんですか」
「意識するか触れると聞こえるようになるよ」
美夜は、しばし黙って。
私のことを抱きしめて、嬉しそうに言った。
「やった!よかったね!!私たち、おんなじ半分だけ神様同士だったんだ!」
そう言われて、なにか私の心の中にあったズドンとしたものが軽くなった。
ひとりじゃない。
半神は、私だけじゃない。
「美夜……ありがとう……」
あなたはまた、私を救ってくれた。
暫し抱きしめあったあと、ハッとしたように、先生に問う。
「ってことは、パパを知ってるんですか?」
「あーまーそうなんだけど」
気まずそうに、頬をかきながら。
「今そいつ、私の旦那なんだ……」
えっ、と小さい美夜の声がして、しばし固まる。
「ちょっと訳を説明させてくれ!
私たちは元々恋仲だったんだ!
それで、眠る時にお互い大量の霊力を使って、私は体が、奴は奴の記憶が無くなったんだ!
その間にできたのが山本美夜ちゃんってわけ!
で、最初は引き取る気でいたんだけど、妊娠を隠されて……引き取ることが出来なかったんだ」
必死にわけを説明して、頭を抱えた。
「お前のことを放置してた訳じゃない。
そのリボンがお前のことを救うように祈りを込めて作られたものだ。
小さい頃1回だけ会っただろ、それで元気そうだから、大丈夫って判断しちまったんだ……」
泣きそうな声で。
「すまねえ……まさかこんな事になってるなんて……」
本当に反省してるらしく、声がか細くなっていった。
しばらく、しんとして。
「あの、私は……このままお母さんといた方がいいんでしょうか?」
美夜が手を挙げながら質問してきた。
「見てのとおり、母親は限界です。
おそらくこの入院費も払ってくれないでしょう。
もしそのパパが私を認めてくれたら、私はそっちに行きたい」
美夜が、初対面の人にしては珍しくハキハキとした態度で話した。
「半神がどうなるかわかりませんし……」
ちら、と私を見てから、先生を見た。
「パパに、会えませんか?」
「いいんだな?」
先生がいつもつけてる星型のネックレスに、軽くキスする。
「鳳凰、黒庵」
それを地面におくと、光が溢れてきた。
その光の中から、全身真っ黒のパンクロックな格好をした少し長髪気味の男の人が出てくる。
そんな仮面ライダーみたいな格好が似合うのは余程の顔の整い具合がないと厳しいのだが、バッチし着こなすほど美しかった。
ていうか何この召喚みたいな魔法!
私が感動してると、彼は瞑っていた目をあけて。
真っ先に美夜の元へ駆けつけ、神様らしくものすごく美しい顔をべちょべちょの涙で濡らしながら叫んだ。
「大丈夫か!?」
真ん中にいる私を無視して肩を抱きしめ、叫んだ。
「ごめん、ごめんなーーあの時無理にでも連れ去ってればよかった!クソ親父を許してくれ!!」
背中を摩擦でも起こすつもりかと言うほど撫ぜてから、ぎゅうっと全身を抱きしめる。
「……愛してたよ、ずっとずっと、会いたかったし愛してた。
心配してた。
本当にごめんな」
その言葉に、美夜は私の手を離して、彼の背中を抱き返した。
「私も、ずっと待ってたよ、パパ」
ぽろぽろと涙を流しながら、何年ぶりかの親子の再会を果たしたのであった。
「ねー瑠璃ー!私の父親顔良すぎないかな?」
「確かに、すごく整ってると思う」
「ねー!そうだよね!」
美夜はものすごく嬉しそうにそう言う。
「え〜そんなこと言われたらパパ照れちゃうな〜」
娘にデレデレな鳳凰である。
彼は鳳凰の黒と武を担当し、黒庵さんというらしい。
普段はラーメン屋で仕事をし、たまに神様同士の争いなどを武の力で制圧してるらしい。
お父さんというものを全く知らない私にとって、なんだか奇妙な光景だった。
「だありん、あんまりでれてんじゃねーよ」
「ごめんねマイハニーアカネちゃん!」
今度はヤキモチを焼いた先生に抱きつきに行く。
忙しい人だ。
「あの、再度質問なのですが」
私がそろそろと手をあげると、全員の視線が私に集まる。
「美夜は、今後黒庵さんがそだてるってことでいいんですか?」
「そーだその話だ。
お前がデレデレしてっから話が進まなかった」
カッ、とよく転ばないものだと感心するピンヒールを鳴らし、黒庵さんを振り払ってこちらに向かってくる先生。
「あたしらは人間じゃねー。
神様だ。
神様としての仕事もある。
美夜、お前が“こっち側”に来る覚悟があるなら、全然養うし育てる。
普通の人生はおくれない。
ただ、」
黒庵さんの肩を抱きしめ、ラブラブっぷりをアピールして。
「ただ、
あたしは浮気相手の娘とは全く考えず美夜を娘みたいに愛する覚悟はあるし、
そこら辺の家庭よりすこしわちゃくちゃしてるけど、幸せで楽しいと思わせる自信がある」
「……」
あんぐりと口をあけて、美夜はリボンを解いて、掌に収めた。
「……人の心が読める時点で、普通の人生おくれないのは覚悟してます」
「美夜……」
「瑠璃も、“そっち側”なんでしょ?」
私の顔を見て、ニコリと笑う。
「それなら私は迷わない」
リボンを胸に当て。
「不束者ですが、よろしくお願いします。
ママ、パパ」
そう言ってから、頭を下げる。
「いいのか?母親を捨てることになるぞ」
「そうだ。
一応あいつも母親なんだから、もう少し考えてもいいんだぞ」
美夜の覚悟に不安そうな顔をする2人。
罪悪感があるのだろう。
けれど、美夜の意思は固かった。
「昨日、心配より頬を真っ先にぶたれました」
そしてその次に金の心配をした。
「あの時点で、母親じゃないです……」
悲しそうな顔をするから、私まで悲しくなってしまった。
「小さい頃からお母さんの望むように生きてきたけど、1度も見返りはなかった。
気味悪がられて拒絶された」
読めてしまうからこそわかる、母親の本音。
「パパに振られて、妊娠を隠してたのも、少しでもパパのものを残したかったから。
でも実際そんな邪な気持ちで子育てなんでできなかった、だんだん疎ましく思われていって、それがとてつもなく悲しかった」
私がその立場だったらどうなるだろうかと考える。
私なんて父親すらいないのだから、疎ましく思われてても全くおかしくない。
それでも自分の娘として愛して育ててくれてる私のお母さんには、感謝しかない。
「少しでも幸せになれる可能性があるなら、わたし、人間捨てるくらいなんてことないです」
美夜にしては珍しくハッキリと、ものを言った。
「……そーか」
嬉しそうに、少しだけ悲しそうに。
黒庵さんを肩に抱きしめたまま、美夜のもとへ行き、もう反対の手でぎゅ〜とだきしめた。
「ようこそ!!鳳凰のおうちへ!!!」
ようやく、美夜の幸せが始まるのである。
◇◇◇【5月4日】
「黒庵……?」
美夜のお母さんが、持っていたショッパーをバタバタと落としながら問う。
見舞いに来たのか、それとも早く退院を促しに来たのか。
とにかく彼女が現れた。
「黒庵!」
高いヒールで駆け寄り、抱きつこうとするが、ゲシッと先生が足蹴にした。
「俺、散々聞いたよなぁ?子供いるって嘘か本当かって」
「で、でも、美夜がいたからまた会えた」
美夜のお母さんは相当心酔してるようで、声を震わせながら、今は何より彼に会えてることが嬉しくして仕方ないようだ。
「黒庵!わたし、黒庵のこと忘れたこと一日だってなかった!
黒庵がいないとダメなの……!お願いだからそばに「ちゃんと子供を育てられない女とか?」
先生や美夜に向ける態度とは打って変わって、低く、唸るような声だった。
「それは、私もちゃんと食べさせなきゃって働いてて……お金も渡してたし……」
「その結果がこれかよ」
はー…とため息をつく。
美夜のお母さんは必死に取り繕う。
「あなたのせいよ!貴方が現れたせいで、無断欠勤が重なって銀行員をクビになって、水商売に漬かって……あなたのせいじゃない!
それを何よ!今更現れて父親面して!」
「てめーがかくしてたんだろうが」
ビクッと肩を震わせる。
「……俺は何回も言ってるがアカネ以外愛せない。
美夜ももちろん娘として愛していくつもりだ」
「……私の事、愛してるって……」
「記憶が無い時はな」
「そんな……」
ぺたんと、病室の床に座り込む。
悲しいくらいにズタボロに振られ、ボロボロと涙を零してく。
「じゃあ娘、もらってくかんな」
「どうでもいいわよそんな女!」
そう発した瞬間、先生が動いた。
パシンと、彼女の頬を叩く。
「このクソ親が!!!」
「っるさい!選ばれたからって調子乗ってんじゃねーよ!」
「あたしとこいつは前世から……」
「そんなスピリチュアルどーでもいいんだよ!てめーらさえあらわれなければ!」
こんどは美夜のお母さんが食ってかかる。
しかし、先生は負けなかった。
「……私は、子供を産むことが出来ない」
「はあ!?それが何よ!」
「だからわかんねーんだが、親っていうのは子供を利用することしかできないのか?」
ハッとし、己の行いを恥じるかのように拳を握る。
「子供にだって選ぶ権利くらいあったっていいだろ。
ましてやこんな親ガチャ大失敗。
なあ美夜」
「うん、ママ」
病室のベッドで、その光景を見ながら美夜が言葉を発する。
「私、もうお母さんなんていらない」
「美夜!!」
「わかったでしょ?パパはどうしたって戻ってこないんだよ。
じゃあお母さんにとっても私は不要でしょ?」
ピシャリ、音がしそうなほど、ハッキリ言った。
「私、ママとパパと幸せになるから、お母さんなんていらない!!」
叫ぶように言って、彼女は今日、母親を捨てた。
今日、ようやく退院となった。
母親はびた一文も出さず、先生と黒庵さんが入院費を支払った。
それから、ボストンバッグ1個分しかない私物を持って、彼女は部屋を出た。
「本当に出てくの?」
「うん」
「あんたも私を捨てるんだ」
ビクッとするが、美夜はキリッとした目で言い返した。
「私だって捨てたくない!お母さんのこと、大好きだもん!」
美夜が母親のことを心の底から愛してるのは知ってる。
でもそれが、叶わなかったのも知ってる。
「でも、私を幸せにしてくれるって言うから」
泣きそうになりながら、彼女はこらえて。
「私はそっちを選ぶんだ!」
おそらく、彼女が母親に刃向かった最初の一言だった。
御先さんの黒塗りの高級車に家まで連れて行ってもらい、自宅に帰る。
「あの……これからどうするんですか?」
「んー?あたしたちの家に連れてくよ!んで、存分に甘やかす!」
子供が出来ないと言っていた先生は、子育てをこれからできるのが楽しみで仕方ないらしく、心底嬉しそうに美夜を抱きしめた。
まだ慣れてないのか、恥ずかしそうにする。
「あたしは楽しみで仕方ねーよ!
美夜のママになれて!これから楽しいことしかねーからな〜覚悟しておけよ!
まずは何食いたい?あたしらは食わなくても生きていけるんだけど、美夜はそーはいかねーからな!
好きな物を好きなだけ好きな時に食わしちゃる!」
ハッとする。
それの性能のおかげで食べなくてもあのレベルでいれたのではないか。
「そういえば御先さん、あのリボンなのですが」
なんであのリボンで黒庵さんが父親だと分かったのか、気になって聞いた。
「我が主は自分の大切なものに自分の力を糸にさせたものを渡すんですよ」
御先さんがいきなりバク転する。
いきなりのエキサイティングな動きに、ぎょっとする。
すると、御先さんが消えた。
えっ、と足元を見ると、下には大きめのカラスが1羽いた。
首元に糸が結ばれており、足が三本ある綺麗なカラスだった。
「まさかこれーー」
「“御先でございます”って言ってるよ」
美夜が通訳してくれる。
「あれ?!私鳥の声がわかる!?」
「そりゃそーだよハーフなんだから。
私たちと接して能力が強まったんだよ」
美夜の頭を撫でながらそう言う。
「彼は御先くん。
八咫烏だ。
日本のサッカーのモチーフにもなってるな。
神話では神の先導をする神々だ。
白龍も神々なんだから、これからは御先くんって呼んでいいぞ。
そっちの方が御先くんも嬉しいだろ」
ヤタガラス、聞いたことはある。
サッカーと聞いてますます合致した。
日本の象徴ともいえる神様じゃないか!
首元を気にする仕草をしていたので糸を見てみる。
「あっ、これ」
美夜が持ってたリボンと同じ素材の糸だ。
黒色だけど7色にも光る素材。
「だからわかったのか…」
「“左様でございます”って」
美夜が通訳してくれた。
もう1回バク転のような動きをすると、いつもの黒スーツのメガネイケメンが現れた。
まるで執事みたいで、従者を徹底してるのがわかる。
「お見苦しい姿を」
「いや、綺麗でしたよ。
ていうか人間じゃないならはなから言ってくれればいいものを」
「アカネさまに口止めされてましたので」
「先生が?」
「ビビるかなーって思ってね」
美夜と私を抱きしめて、嬉しそうにぎゅーっとした。
「まっ、これから知ってけばいいんだ!お前らはまだまだ子供の神々なんだから!」
そう言って、私と美夜両方にキスしてから、彼女は美夜を連れて去っていった。
美夜はこれからきっと大丈夫。
なんとなく、そう思えた。
シンデレラの一族 @sukunabikona0114
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