第18話 一番星


 お昼ご飯を食べ終え午後の競技が始まっていた。

 私は自分の走る組に順番が回ってくるのを1人で待っている。

 クレ姉やみんなは碧愛なら大丈夫って言ってくれていたし、あいつ、真白くんも碧愛は頑張って練習したから心配する事ないって言っていたし?できるのかしら。

 なんか、クレ姉に言われるより真白くんに言われた言葉の方が頭に残るのは何故かしら、最近は真白くんのことばかり考えてしまう。クレ姉たちは大事な姉妹だしいつも元気をくれるのだけれど真白くんはなんか安心感があるけどなんか胸の奥があったかくなるというか、なんというか…。

 べ、別に好きってわけじゃないのだけれど?もう、なんなのよ真白くんは…。


 走る組は全部で10個あり碧愛はその5番目だ。

 どんどんと進んでいき碧愛の番となる。

 ふーと大きく息を吐き深呼吸をするのは真白くんが教えてくれたから、緊張しないためのおまじないだ。

 いよいよ始まる。

 スターターピストルの大きな音と共に横一列に並んでいた状態から一斉に走り出す。


「きゃっっ!」


 碧愛も皆と同じようにいいスタートが切れたかと思ったが、2、3歩進んだところで隣の子にぶつかられ転んでしまった。


 いきなり転ぶなんてやっぱり私は最後までダメだったんだわ。

 あれだけ練習に付き合ってもらったのに…。あぁ、なんで私はこんなにダメなのだろう、やっぱり何をやってもうまくいかないんだろうは。


 碧愛の頭の中は暗い気持ちでいっぱいになった。だかその時、客席の方から大きな声が聞こえてくる。


「碧愛ー!!!!

        頑張れー!!!!!」


 真白くんだ、声がする。

 そうね、あんなに頑張って練習したんだから、まだ終わってない。最後まで諦めずに走り切るしかないじゃないか。


 碧愛は、転んだがすぐさま立ち上がり走り出す。他の子達とは距離が広がっていたが、全力で追いつかんと一生懸命腕を振り足を動かして走る。どんどんと加速していきついにはゴール目前で先頭を走っていた子に追いついた。


「碧愛ー!!!」


 どこかから名前を呼ぶ声と共に先頭でゴールテープを切った。


 はぁはぁ…。やった!やってやったわよ!

 碧愛はこれまでに味わったことのない達成感と高揚感を感じ、走った疲れや転んだ痛みなど全くと言っていいほどなくなってた。

 一位がもらえるシールを先生に付けてもらうと、真白を探す。こっちを見て大きく手を振っていた。


 真白くん、

 どう?ちゃんと見てた?私だってできたんだからね!


 碧愛は真白に向けて1番の笑顔でピースをする。

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る