第13話 強く願うほど脆い
「はぁはぁ、なんで速く走れないのよ。」
私は家に着いてから、いつもはみんなと宿題を終わらせてテレビを見てるところを家の裏で走る練習をしていた。
自分には何もない、他の5人ができることができない。
それがみんなから置いていかれるようでどうしようもなく辛かった。
みんなのことはもちろん大好きだけど、一緒にいるのが辛いと感じる、それがどうしようもなく嫌だ。
橙愛は運動が得意だし他のみんなだってそれなりにできる、勉強だと愛紫は頭が良くてテストはいつも満点で他のみんなも高得点をとっている。
それなのに自分は全部中途半端な気がしてしまう。
どうしたら良いのか答えは出ない、できるのは闇雲に走る練習をすることだけだった。
すると、家の方から誰かがやってくる。
「誰?」
「おーい、俺に手伝わせてくれないかなー?なんて…」
□□□
子供達が学校から帰ってきた後いつもとは異なりなんだか暗い雰囲気だったのが気になっていた。二階から橙愛が降りて来る。
「しろにい!碧愛がなんかおかしいぞ…。そのせいでクレ姉もなんか変なんだぞ」
「今日、学校とかで何かあった?」
「今日は朝道にいた猫が可愛いかったぞ!それから、学校についてからクレ姉と心実ちゃんとお話してて、朝の会でテストが返されたぞ。あと、給食が美味しかったからおかわりしたぞ!あ、放課後に運動会あるから走ったぞ!」
「そうか話してくれてありがとな」
今話した中に何かあるだろうか。
あるとしたら、テストか?テストの点数低い暗い気にしなくていいとも思うけど。来月運動会あるのか、見にいくのが楽しみだな。
あの子達が喧嘩するとも思えないし、妹想いの紅愛だからなんとかしようとしたんだろうな。なんとかできることはしてみよう。
「橙愛、俺に任せてくれ」
「頼んだぞ…」
碧愛は外にいるようなので、家の周りを探す。畑の周りにある道路で一人走っている姿が見えた。
「何しにきたのよ」
「いやー、走る練習してるなら手伝いたいなって。運動会あるんでしょ?練習するなら何かしたいな」
「別に良いわよ。私1人でできるわ」
「何があったか教えてくれないか?みんな碧愛の事心配してると思うよ」
「あなたには分からないわよ!6人もいて私1人だけ何もできないのに!私だけ走るのが遅い、私だけテストでいい点が取れないのよ!何も分からないのに関わってこないでよ!」
碧愛はみんなよりできないことを気にしていたみたいだ。誰だって自分と人を比べてしまうことはある、特に六つ子の姉妹だと比べてしまうだろう。できないことが苦しくてでもどうしようもない、そんな感じが伝わって来る。
「碧愛が今感じてる辛さを全部わかることはできないけど俺もでき無かったこがたくさんあるよ。
だから少しはわかるかもしれない。昔、サッカーをやってたんだ。
中学生の時から初めて毎日練習してたんだ。でも周りはみんな経験者で俺だけ初心者で、いつかレギュラーになってやるーって思ってたけど公式試合に出れたのは3年生の最後の試合だけだったんだ。
それも最後の10だけ。
悔しいしなんか恥ずかしいって思ってその後、全部意味なく思えて何もやる気にならなくなったんだけど、透子姉さんが「いつまで凹んでんだ」って励ましてくれて。無理やり遊びに連れてかれたんだけどなんかそれで吹っ切れてさ。
その後も色々頑張れるようになったんだ。
高校は陸上やったんだけどサッカーの練習で毎日走ったおかげで結構良い感じだったんだ。
だから、今できなくても気にしなくて良いと思うよ。
俺に手伝わせてくれないか?」
「…でも、それでもできなかったら私何も…」
「大丈夫。俺を信じてくれ。なんてったって俺は透子姉さんの弟だからな。俺は普通の中の普通、世界特徴ないランキングがあればTOP10に入れると自負してるけどなんとか毎日生きてるからね」
「なにそれ、どこからそんな自信が湧いて来るのよ。大体そんなわけわからないことまで言われたら悩んでた私がバカみたいじゃない。
いいわ、ちゃんと練習して。
もっと頑張るってみるわ。
できるまで手伝ってよね?」
「任せい!」
2人で走った道はいつもより夕焼けが綺麗に見えた。
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