第3話 ガチャ廃は本人の責任です
「アナタ、今の生活から抜け出したいと思っていませんか?今の生活に満足していますか?」
「いや、何の勧誘だよ」
目を瞑り悩むリュクスの周りを、ダルルンはクルクルと周りながら煽ってくる。
「ほらほら、ここまで来たらやるしかないでしょ?君ならいっぱい稼げるよ?」
「うるせぇな!お前、ぜってー風俗斡旋業者だろ!!」
正直、未だコイツの言う会社情報は胡散臭さが限界突破している。マジで裏系の会社だったりしたら、違う需要の無い物語がここから始まってしまうのだ。絶対に騙されてはいけない。
しかし、コイツに不思議な力がある事はまず間違いは無さそうだ。
リュドラスは決断を迫られていた。
「……しょうがねぇ。確かにこれを逃したら、あとどれくらいこの地獄が続くのか分かんねぇしな 」
「では、ご契約という事で宜しいですな?」
ダルルンが食い気味に契約を迫る。
「ちょっと待て」
ダルルンを押しのけ、リュドラスが待ったをかけた。
「ひとつ聞くが、その魔法少女ってやつはどういう姿なんだよ……」
リュドラスは懸念を口にする。
自分がなる事を譲歩したとしても、このままの姿でフリフリの服を着せられた日には地獄だ。
「……」
「おい?」
ダルルンは押し黙っていたが、ゆっくり口を開く。
「……強いて言えば、マスコットキャラクターの好みで決まりますな 」
二人の間に沈黙が流れる。
「はぁあああ!?それってお前の趣味って事か!? 」
「まあ、そうと言えばそうですな。姿形は完全にアバターの様に変化しますぞ 」
コイツの好み……どんな好みなのか全く検討もつかねぇ。ニッチなヤツを持ってこられても対処しきれないぞ!?
「極端なマスコットキャラクターの例で言えば、そのマスコットが熟女好きな場合は、魔法少女は熟女になりますな 」
「……どんな例!?少女はどこに行った!?」
「少女の格好をした熟女なんで。これはマシシンの趣……あっ、これ以上はプライバシーに関わりますので質問はお控え下さい 」
恐らく、コイツの身近な仲間の事を例に出したのであろう。仲間に熟女スキーがいる時点で、コイツの趣味も怪しく思えてくる。
「意味がわからねえんだよ!!このジョブ名で少女以外にする意味あるか!? 」
「魔法少女ってジャンルが確立してるだけで、平たく言えば魔法戦士でも別に…… 」
「じゃあ少女にすんなよ!!頭沸いてんのか!!」
確かに見た目としては華やかで可愛い女の子が懸命に戦っている姿は、思わず応援したくなる。だが、それをコンセプトにするなら、そこを徹底してくれ。オモシロ色物枠を作って遊ぶんじゃない。とリュドラスは心の中で悪態をつく。
「ちなみに、ワタクシの場合だと……」
「……!」
もったいつけるダルルンに、リュドラスはゴクリと生唾を飲む。
するとダルルンの身体が徐々に大きく光りだし、その背後には丸いパネルが浮かび上がってくる。
「全てランダム!希望のミラクルダーツガチャでアナタも素敵な魔法少女ライフ~」
ダルルンはパフパフ~とセルフで謎の音を鳴らしている。
「……は?」
リュドラスは訳が分からず、その場で固まった。
「ワタクシの場合、もう己の性癖とか卓越してしまってるので……というか数を捌きすぎてもう正直少食気味で。現在は全てご本人にお任せしてますぞ。でも本人の希望を聞くと、あれがいいこれがいいと煩い
一体ランダムとはどういう事なのか。
ポカンとした顔をしているリュドラスに、ダルルンは補足する。
「これを使って、髪色から目の色、服の系統、イメージカラー、魔法属性、使用武器、容姿系統まで全てランダムで決めていくんですぞ」
「め、めんどくせぇ〜~!!」
こういうのは、なんかピカッと光って変身完了ではないのか。全人類ガチャが好きと思うなよ、このクソ運営!!
リュドラスの気分は萎えに萎えまくっていた。
最早、クソ上司その他諸々を倒してこの世界から離脱出来れば、後はどうでもいいと思い始めてすらいた。
「ああ、もうテキトーでいいからお前が決めろよ 」
その言葉に、ダルルンが言い淀む。
「ええ……ワタクシがやって汚いオッサンになったら責任とれないので…… 」
「いや!!どうやったら汚いオッサンになるんだよ!!おかしいだろ!!?」
「ランダムなので 」
コイツが担当なってしまった少女が、夢と希望の中ランダムでオッサンにされたら、絶望で死ぬだろ!!俺でも嫌だわ!!
「でも汚ッサンは確率で言うとSSRよりもっと上、超UAR(ウルトラアルティメットレア)なので今迄一度しか出たことないし…… 」
「一回誰かが絶望してるじゃねェか!!」
ダルルン曰く、これはチュートリアルガチャと言うらしい。
「因みに、最初だけ3820GでSR以上確定+オマケ付きの有償10連ガチャに変更出来ますぞ 」
「いや、金とんのかよ!しかも税金上がり過ぎじゃね!?一体今、西暦何年なんだよ 」
ダルルンとこんな対話しているうちに、知らない言葉への違和感はほぼ無くなってきていた。
ふと思い出す、不思議と懐かしい面影。
昔、どこかで毎日こういう会話をしていたきがする。
ああそうだ。この感覚は、今は亡き魔王と話をしていた時に近い。
そう……この世界にかつて君臨していた魔王は結構ヘヴィなオタクだったのだ。
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