プレバト俳句(2023年12月14日放送)について

滝口アルファ

プレバト俳句(2023年12月14日放送)について

今回もプレバト俳句を楽しく拝見しました。

今回のお題は「小さい手」。

今回の査定は、3名でしたので、

3名全ての俳句を分析してみました。


それでは、

まず、現状維持と評価された、

特待生5級の水野真紀さんの俳句を見てみましょう。


冬うらら小さな手に砂の地球


そんなに悪くないと思いますが、

夏井先生は、次のように添削されました


泥だんご光れ地球の冬うらら


俳句っぽくはなりましたが、

原作にもう少し寄り添った添削例を挙げてみます。


A 小(ち)さき手が砂の地球を作る冬

B 小さき手が砂の地球を投げる冬

C 泥だんごの地球を投げて冬夕焼

D 子が冬の泥の地球を投げている


添削例C、Dは、

題の「小さい手」を使わないパターンです。

そして「作る」や「投げる」などで、

躍動感を出してみました。


次に、

現状維持と評価された、

特待生3級の犬山紙子さんの俳句を見てみましょう。


冴ゆる夜やコントラバスに小さな手


「冴ゆ」が、冬の季語です。

確かに、この表現では、

コントラバスの何処に触れているのか、

音が鳴っているのか、分かりませんね。

ですから、

夏井先生は、次のように添削されました。


子の指や冬のコントラバスぼぼん


コントラバスの音のオノマトペとして、

「ぼぼん」は、分かりにくいでしょう。

「子の指」というのも、あまりぱっとしません。

添削例を挙げてみます。


A 冬の夜やコントラバスを子が弾(はじ)く

B 子が弾くコントラバスや雪の夜

C 子の弾くコントラバスやクリスマス

D 子の弾く冬のコントラバスの弦


「弾(はじ)く」を使うと、

「小さな手」と言わなくても、

「小さな手」は見えてくるでしょう。

あとは、

季語を雪やクリスマスにして、彩ってみたり、

最後に「弦」を据えて、より細緻に表現してみました。


最後に、

ボツと評価された、

永世名人のフルーツポンチ・村上健志さんの俳句を見てみましょう。


レノン忌や小さき手にまだ利き手なし


「レノン忌、レノンの忌」が、

ジョン・レノンの命日12月8日のことで、冬の季語です。

着眼点のいい俳句です。


夏井先生は、この句を褒めながらも、

次のように添削されました。


レノン忌やまだ利き手なき小さき手


確かにこうすると、

「小さき手」の映像が見えてきます。

40歳で凶弾に倒れたジョン・レノンと

これから未来を作っていく子供の小さな手。

コントラストの鮮やかな1句になっているしょう。


しかし、悲劇性の強い「レノン忌」ですから、

なんとなく不穏な感じが「小さき手」まで響いてしまって、

この「小さき手」は、

もしかしたら戦争か何かに巻き込まれて、

亡くなった子供のものなのではないかと、

推察してしまう読者も少なくないでしょう。

もちろん、それは悪いことではなく、

そういった幅の広い読みが出来ることも、

この句がそれだけ優れている証左なのだと思います。


ですが、

村上さんの原作と、夏井先生の添削例は、

そういう意図で作ってはいないはずですから、

マイナスイメージに読まれないような、

添削例を考えてみました。


A 冬の虹まだ利き手なき小さき手

B クリスマスまだ利き手なき小さき手

C 初詣まだ利き手なき小さき手

D まだ利き手なき小さき手冬の虹

E まだ利き手なき小さき手クリスマス

F まだ利き手なき小さき手初詣


添削例A、B、Cでは、

「レノン忌」というカッコイイけれど、

悲劇性の強い季語を断捨離して、

むしろ、ベタな冬の季語を使ってみました。

添削例D、E、Fでは、

語順を入れ替えてみました。

こうすると、

「小さき手」に希望が薫るのではないでしょうか。


今回は以上です。








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