第4話 高倉華英

 

「判ったよ、部員も半数ほど集まったから、皆も聞いてくれよ。……実はな、彼女の祖父が今年七十七歳になるので、実家で喜寿のお祝いをするから、帰らなくてはならないと言うことなのだ」

「なんだー、困ることなんて何もないでしょ」と、佐伯真梨子さえきまりこがからかう。

「いや~、里帰りには問題ないんだけれど、彼女の家と言うのが由緒ある平安時代から続く名家らしくて、地元ではものすごい権力を持つ家系なんだそうだ。そして困ったことと言うのが、その家族及び家系にあるらしいのだ。高倉家の家族は現在は祖父、父親、母親、兄が一人いて、自分だろ、そして、血の繋っていない双子の姉がいて、つまり父親が外で産ませた子供たちなのだと言うことなんだけど、以上七人家族が家で暮らしていたらしいんだ。祖母はもう早くに病気で亡くなっているらしい。後、執事が一人、メイドの女性が二人、お抱えシェフが一人いるらしい。問題はこの家族の事らしいんだ。両親以外は彼女から見ると、何かおかしいらしい」

「おかしいって、どういうことよ?」巨勢君があくびをしそうに言った。その時、入口が開いて、

「私が直接話すわ」と言って、噂の部長の彼女高倉華英たかくらはなえさんが入室してきた。男共が、“おおっ❗”と驚愕し、のけ反った。巨勢君も”う、美しい! 成る程これでは髙梨先輩が言うのも尤もだな~“と、心の中で感嘆した。



「おおっ、女王登場だな、それでは何がおかしいのか、教えて貰いましょうか」副部長の蓮先輩が言った。

「説明するわ、おかしいのは何も皆の事じゃなくて、祖父の事なの。私の家族は別に普通よ、父は地元で新日本工学機器の会社を経営しているし、つまり天体望遠鏡とか顕微鏡とか無線機器の製作などをやっている会社の社長だし、母はその父の専業主婦だし、兄は父の会社で営業課長をやっているの。ただ腹違いの双子の姉がいると言ったけど、実は二人のうち一人が生まれつきのダウン症候群なのであるけれども……、まぁ、それは関係ないか、とにかく危険なのが祖父の事なの、祖父は高倉正剛たかくらせいごうと言って、土御門家の分家になるの。土御門家というのは、実は安倍晴明が起こした、鎌倉時代のみやこから、明治維新の時に合わせて京より江戸へと居場所を写し、明治時代初めまで陰陽寮(おんようりょう)を統括した安倍氏流土御門家の祖なの。今のおじさんの名前が土御門新之助つちごもんしんのすけと言って、陰陽寮から発達してきて出来た宗教団体である『天体のひかり』の教祖でもあるのよ。この新之助おじさんと、家の祖父が物凄く仲が悪くて、お互いに憎しみ会ってるから、いつどんなことが起きるか判らないことになっているの。だから私は怖くて、帆蟻さんに相談したの」

 そこで副部長の蓮先輩が更に訪ねた。

「怖くなってって、何が起こるんだい? 怖いことって例えばどんなこと?」華英さんは、一息付くと、また話し始めた。



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