第2話 ラーマーヤナ
武器庫のような部屋に「転移」させられた俺達。相変わらず窓からは日本一高い電波塔が見えていた。変わらずそこにあるモニターが点灯する。青い肌の仮面の某は語る。
『武器ノ使用ハ自由、シカシ戦闘中ハ能力ヲ行使シ続ケル事』
とだけ告げて画面が真っ暗になった。一人の少女が声を上げる。
「なによ、それ」
一人の少年が声を返す。
「殺し合え、ってことだろ?」
飄々とした口ぶりで武器に手を伸ばす。そこに――
「マツヤ!」
魚群が殺到した。光で出来た魚の群れはその手に噛みつき肉を貪る。
「いってぇ!?」
魚群を召喚した少年と、襲われた少年。前者は小柄で華奢、後者は大柄で強靭に見えた。立場は逆だったが。
「てめぇ……パラシュ――」
「喰い千切れ! マツヤ!!」
光の魚群は今度は大柄な少年の喉笛を掻っ切り空を泳いでいった。小柄な少年は目の前の凄惨な光景を自分が引き起こしたのだと自覚しているのだろうか。大柄な少年は既に事切れている。
魚群は今度は四方八方に広がり、残る三人へと向かって行く。俺はそれを見て真っ先に間に立った。
――何故、どうして、それは、俺が、俺だから。
「クールマ!」
魚群を光の防壁で叩きながら突き進む。死角に回られないように防壁を三百六十度展開しておく。
万が一、奴の魚群が地面を掘り返して来る可能性も加味しての判断だった。そしてそれは功をそうした。魚群は俺に近寄れずにいる、そしてそれを見て慌てるマツヤの少年。
「悪いけど、人を殺したなら、殺される覚悟はあるよな?」
「何を、お前、来るな!!」
――どうして? 何故? それは、俺が、俺だから。
光の防壁でマツヤの少年を壁まで追い詰める。魚群は勿論、俺の防壁に阻まれ寄ってはこれない。
彼は防壁と部屋の壁に挟まれる形になる。それが意味するところは。
「悪いけど、苦しまずに死なせる方法を俺は知らない」
「やめろ、やめ――」
圧死。
壁と壁に挟まれて血と骨と臓物を壁にぶちまける。
俺は肩で息をする。
――ころした、コロシタ、殺した。俺が殺した。
そう自覚したところでモニターが点灯する。
俺達の顔の表示、大柄な少年とマツヤの少年がカラーからモノクロになっている。
そして――
「こんにちは!」
異形の姿――ライオンの着ぐるみを着た某――がシルエットから色づき円卓の間に登場していた。
武器の部屋からそれらの情報を統合し、判断する。敵が増えたのだと。モニターが切り替わり青い肌の仮面の某が映る。
『脱落者二名、移行者一名「アヴァターラの選定」続行可能ト判断、再試行シマス』
デスゲームは終わらない。
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