アヴァターラの刻印

亜未田久志

第1話 乳海攪拌


 降りかかる銃弾の雨、それを甲羅の様な物で防ぐ俺。名前はそうだな、クールマとでも呼んでくれ。そもそもなんでこんな事になったかというと。




 目が覚めた時には窓から日本一高い電波塔が近くに見えた。辺りを見回せば独房のような場所に入れられている。

 天井からモニターがぶら下がっており、それが突如、点灯する。

 青い肌の仮面を被った何者か。

『アナタ達ハ救世主ニ選バレタ』

 それはそう告げるとモニターが明滅した。

 ガチャンと何かの金属音がする。それが唯一部屋にある扉の鍵が開いた音だと気づくのに数十秒かかった。

「……なんだこれ」

 自分自身の事もよく思い出せない。手の甲を見る。複雑な紋様のように見えてそれが世界を支える亀を表している事が何故か直感で分かった。

「クールマ」

 唱えた瞬間に目の前に光の紋様が現れた。それが防壁だと気づくのには数分かかった。

 自分には何故かこの紋様が「読める」らしい。そしてその「力」を操る事が出来る。

 恐る恐る防壁を張りながら、扉を開ける。すると――



 

 銃弾の雨に襲われたという訳だ。誰かにとっては一瞬の事だが、俺にとっては長い長い時間を要した。光の防壁から銃弾の発射元を見やる。そこには銃器だけがあり人の姿は無かった。

「だったら――!!」

 俺は一直線に駆け出した。防壁で銃器を圧し潰す。その強度があるかが唯一の懸念事項だったがそこは確信を持って大丈夫だと判断した。圧壊しバラバラになった銃器類、俺には皆目、種別の見当もつかない。部屋から出たらまた薄暗い独房のような部屋だった。強いていうなら最初の部屋より広いくらいか。またモニターがぶら下がっている。

『合格デス』

 また青い肌の仮面の男が現れ告げる。どうやら俺は試されているらしい。

『能力ノ使イ方ハ覚エタト判断「マーク:クールマ」ヲ最終試験ヘト移行」

 どうやら俺は合格してしまったらしい。しまったというのはそれが良い事だとは思えなかったからだ。

 またガチャンという音と共に扉の鍵が開く。俺はまた恐る恐るその戸を開く。そこは会議室のような場所だった。円卓が真ん中に置かれ、周りに椅子が配置されている。

 そこに居たのは俺含む五人の少年少女。


「あん?」

「ひっ」

「あらまた人が来たのね」

「ようこそ」


 円卓の上にはモニター。そこにはこの円卓の間に居る少年少女と俺の顔も表示されていた。さらにシルエットの五人、計十人の顔がそこには表示されている。

 中には明らかに人間のシルエットではないものいた。とりあえず此処にいる五人は人間だったが。

 モニターが切り替わる。青い肌の仮面の某がまた現れる。

『規定人数ニ達シタ事ヲ確認、コレヨリ「アヴァターラの選定」ヲ行イマス』

 アヴァターラ、どうやらそれが俺達に与えられた役割のようだった。

 そして青い肌の仮面の某は宣言する。

『合格条件ハ唯一ツ、生キ残ル事』

 円卓の部屋は再び閉じられ、俺達は別の場所に「転移」させられた。

 そこに在ったのはナイフ、銃器、日本刀、爆弾などなど。そこで俺はようやく理解した。これは――

「デスゲーム、か」

 殺し合いに巻き込まれたのだと。

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