7.儀式が行われる
潮騒の音だけが静かに反復する中に、湿っぽいコードが響く。この船乗りの儀? だかなんだかがどういう類いのものかは知らないが、船出にしては暗すぎるのかな? などと、自分で弾いておきながら思った。今にも船が沈みそうな、景気の悪い音過ぎるだろうか。
心配になってきたので、フードの人に目をやってねる。
しかし、彼は浜辺の方を向いており、特に私に対して注文があるようでもなかった。
なので、そのまま続けることにした。
それからしばらくは、私の演奏を聴いていそうなのは、側にいるフードの人だけのようだった。
ただ、満天の星空と月明かりの下、潮騒をバックに演奏をするのは変な充実感があって、全然寂しくはなかった。
やがて、岩のステージから何十メートルだか離れたところに、何かの行列が見えてきた。月明かりの下、フードを被った人が、一列になって海へ向かってそろそろと歩いている。
そのうち、先頭は海へと行き着いたが、そのまま船へと一直線に歩いて行っている、ように私には見えた。実際にはたぶん、途中から足が付かなくなるだろうから、泳いでいるのだと思うが。
ともかくそんな感じで、浜から船へと列になって静かに歩いて行くのを眺めながら、私は演奏し続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます