from Dream to Real ~夢と自由のアリア~

Haika(ハイカ)

from Dream to Real ~夢と自由のアリア~

 「ごきげんよう」


 少女アリアは、この国での貴族生活を、満喫している。


 煌びやかなドレス。

 豪華絢爛な食事。

 美しい庭園。


 そんなアリアの、毎日の日課は、お外を歩くこと。



 「うふふ」


 アリアは今日も、外で遊んだ帰り、海へと向かった。


 波打ち際まで、砂浜の上を駆ける。



 「今日も届いてるわね。パパの言う通りだわ」


 砂浜の一角に、1本のコルク式のボトルが、流れ着いていた。


 海水が入らぬよう、しっかり閉められた、メッセージボトル。

 アリアはそれを拾い、コルクの栓を引き抜く。


 楽しげな表情で、ボトルから取り出した紙筒を広げ、その手紙を読んだ。




 元気にしているか? アリア。

 パパは元気だ。

 いつもごめんな。外国での仕事が、中々終わらなくて。


 前にも、話したけどさ。

 新しい土地で、パパと一緒に暮らさないか?


 不安な気持ちは分かる。

 きっと、今みたいな生活はさせてあげられないかもしれない。

 それでも、アリアが行きたい所へ連れていってやるから。

 

 愛してるよ。

 パパより。




 アリアは、僅かに残念そうな顔をする。


 ため息交じり、持参の新しい紙に、スラスラとペンを走らせた。




 愛するパパへ。


 私は元気よ。今日も楽しく過ごしているわ。


 だけど、この国から出ていくのは嫌だ。

 やっと手に入れた、夢と自由だもの。

 もう、あんなママと一緒の生活には戻りたくないの。


 パパ、いつこの国に来れるの?

 一緒に、ここで暮らしましょう。ここなら、どんな願いも叶うわよ。


 アリア。




 アリアはその手紙を、筒状に丸め、ボトルに封じた。


 再びコルクをさしたボトルを、海に流した。


 アリアは、地平線へと流れていくボトルを、静かに見つめた。

 父と、この国で暮らせることを、願って。




 …。




 病院の一室。

 植物状態となり、今も静かに眠る娘の頭には、脳波を読み取る線が張られている。


 仕事帰り。

 エドワードは今日も、娘の見舞いに来ていた。



 室内のモニターに、着信音と、一連の文章が流れた。




 「アリア」




 娘が流した、メッセージボトルだ。




 エドワードは今日も、娘が目覚める事を願い、返信文を打ち込む。


 夢の中で、必ず辿り着く、メッセージボトルとして。


【完】

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