第4話
更生施設内は怠惰の極みだった。ゴミだらけの部屋は足の踏み場がなく、何日前に食べたのか分からないカップ麺の残り汁からは異臭が漂い、菓子の食べ残しには害虫が群がっていた。寝転がりながらファーストフードを食べる人、一日中酒を飲んでいる人、何もしないで眠り続ける人……皆、覇気がなく、死んだ魚のような濁った目をしていた。ボクがあてがわれたのは二人部屋だった。ここに収容されている人々は皆、犯罪者として扱われ、名前は剥奪され番号で呼ばれた。看守ロボットは、確かに「二人部屋だ」と言ったのに、居室内には人がいる気配がしない。
「今日から、ご一緒させていただくことになった”ヒナタ”といいます。よろしくお願いします!」
ボクが元気良く挨拶をすると、うず高く積まれたゴミ山ががさがさと動き出し、中から、ボクと同い年くらいに見える男がのっそりと顔を出した。
「ああ、めんどうくせえ。ちょっと、新入りくん、ボクを引っ張り出してくれない?」
ボクは仕方なく、ゴミ山を掻き分けて彼を救出した。彼は、身長はボクと同じくらいなのに横幅はボクの三倍以上あった。
「あの……ボク”ヒナタ”っていいます。良かったら、あなたの名前も教えてください」
「ああ、よろしくねえ。”361番”くん」
「やめてください、ボクには”ヒナタ”っていう、ちゃんとした名前があります」
「だって、君の囚人服に”361”って書いてあるじゃん。ここでは、それが君の名前だよ。っていうか、名前なんてどうでもいいじゃん。君も、じきに慣れるから安心しなよ」
そう言うと、”342”と囚人服に書かれた男は、大きないびきをかきながらゴミ山の中で眠ってしまった。
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