第3話
―― 午後3時30分。
ボク担当の管理ロボがメンテナンスタイムに突入したのを見計らって、いつものように、ボクは外出した。署名を集めるためだ。零児の野郎は、勤児様、優児様、そして、ボクのひいじいちゃんが誇りにしていた『勤勉学園』を取り壊して堕落の園を建設することを独断で決定した。『勤勉学園』は優秀な人財を育成するための自己啓発スクールで『勤勉学園』を卒業した人々は、政治、医療、起業、ボランティア、芸術など、多種多様な分野で大活躍をした。そんな由緒ある『勤勉学園』を、零児の野郎はぶっ潰すと言っているのだ。しかし、時の為政者に盾突く勇気がある者などいるはずもなく、署名運動は難航していた。
この日、ボクは、取返しのつかない大きなミスをやらかしてしまった。普段は、パトロールロボに感知されないよう光学迷彩の衣服を身に纏って活動をしているのだが、ミノルおじいちゃんが更生施設送りにされてしまった衝撃は、ボクが自覚している以上に大きかったらしく、ボクは着替えるのを忘れて家を出てしまったのだ。『勤勉学園』の取り壊し反対に賛同するというご婦人に出会うことができたボクは、舞い上がってしまい、パトロールロボに囲まれていることに気付くことができなかった。
「ハンギャクシャ、ハッケン! ハンギャクシャ、ハッケン! タダチニ、コウセイシセツヘト、レンコウスル!」
もう、何もかもが手遅れだった。婦人は署名をする前だったので、厳重注意を受けた後で解放されたことだけが不幸中の幸いだった。
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