第11話:とりあえず平和だね。

次の朝、オリバーが牛乳を配達して雑貨屋にやってきた。


オリバーはマーテルベルと一緒に店にいた見たことない男をみて首をかしげた。


オリバーを見つけたマーテルベルは彼にパーシルエンドを紹介した。

オリバーは戸惑っていたがそれでも、顔をひきつらせながら愛想笑いしながら

パーシルエンドに挨拶した。


腹の中では「なんだこいつって思っていた」

マーテルベルに気があるオリバーは多少なりとも心穏やかじゃない。

つまりオリバーはパーシルエンドに嫉妬したのだ。


マーテルベルと毎日平和にやってたのに、いきなり現れた魔法使い。


オリーバーはマーテルベルから事情を説明されて、不承不承納得した。

とりあえずパーシルエンド西の魔法使いだと知ったことと、パーシルエンドが

雑貨屋には必要な存在だと言うことも・・・。


複雑な気持ちのオリバーはマーテルベルの、いつもの「配達が終わったら寄ってね」

って言われて、手を振りながら自転車で去っていった。


それから三日ほどして、おばあちゃんがマルファーラと一緒に雑貨屋にやってきた。


孫を探してくれたお代を払いに来たらしい。

欲のないマーテルベルは、マルファーラが無事に戻ったことが嬉しくて、料金は

いりませんからって言った。

おばあちゃんはそれでは気がすまないと言ったが、マーテルベルは


「そのお金でマルファーラになにか買ってあげてください」


って言って結局料金は受け取らなかった。


おばあちゃんとアルファーラはマーテルベルに、何度もお礼を言って帰って行った。

マーテルベルはふたりの姿が峠の向こうに消えていくまで見送っていた。


それから半年ほど経った頃だろうか。

マルファーラがひとりで雑貨屋に訪ねてきた。


店の入り口で立っているマルファーラをスモールアンクルが見つけて店の中に

連れて来た。


「あら・・・どうしたの?」

「マルファーラ、あなたひとり?、おばあちゃんは?」


「おばあちゃんは三日前に亡くなりました」


「え?おばあちゃんが?お亡くなりに?」


「おばあちゃんがね、私にもしものことがあったら、ファーゴット雑貨店に

エルフのお姉さんを頼って行きなさいって・・・」


「そう、それで来たのね」


「おばあちゃんが亡くなちゃったから、私行くところがなくて・・・」


そう言うとマルファーラは涙をこぼした。


「身寄りはおばあちゃんだけだったもんね」


「わかったわ・・・泣かないで・・・マルファーラ」

「あなたの気の済むまでここにいていいのよ、ここで暮らしなさい」


「よろしくお願いします」


その様子を見ていたパーシルエンドが言った。


「お嬢ちゃんのその、マルファーラって言うお名前は大地母神マルファーラと

同じ名前なんですね 」


「はい、私のお母さんの名前はナシェルって言って大地母神のマルファーラの

司祭だったんです」

「それでなんだと思いますけど、私は大地母神のお名前をいただいてマルファーラ

ってつけたみたいです」


「ああ、ナシェルさん・・・あなたのお母様をよく知ってますよ」

「コルドアスの戦いでお亡くなりになったとか・・・ナシェルさんは将来

マルファーラ教団の最高司祭になられる方でしたのに・・・残念です」


「そうなのね・・・大地母神の・・・」


「この雑貨屋さんも一気に人が増えましたね」


スモールアンクルが言った。


「そうね賑やかになっていいんじゃない?」


ってことで、エルフにドワーフに魔法使い、それに人間の女の子。

人が増えて生活が困窮するかと思ったが、そこはそれ魔法使いがいるからそんな

心配はなかった。


一つの出来事でいろんな人が繋がってるんだとマーテルベルは思った。


今日も雑貨屋には、お客が訪ねて来ることもなく朝早くからスモールアンクルと

マルファーラは一緒に花壇の花に水をやり、オリーバーはいつものように牛乳を

配達にやって来てマーテルベルに見送られながら元気に牛乳配達に出かけて行った。


で、パーシルエンドはと言うと箱が置かれてあった場所に椅子を持ち出して

朝から、うたた寝をしていた。

そこが彼の定位置。


今日も澄み切った青空に白い雲・・・西に向かって飛ぶ鳥の群れを見ながらマーテルベルは思った。

とりあえずだけど、ここは平和だよねって・・・。


おっしまい。

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エルフの雑貨屋さん。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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