第9話:マルファーラ。

ベネディクト修道院があるモンテミオスは郊外に位置する標高519mの岩山にある。

パーシルエンドとマーテルベルとおばあちゃんは修道院の玄関前に現れた。


三人はさっそく修道院の門を叩いた。


しばらくすると中から初老の修道女があらわれた。


「ここに一般の方が訪ねてくるのは珍しい・・・」

「何かご用ですか?」


すぐにおばあちゃんが要件を切り出した。


「あのこの修道院にマルファーラって女の子がいると聞いて訪ねて来たんですが?」


「はあ・・・たしかにマルファーラはこの修道院にいますが・・・」


「え?いるんですね、よかった」


「あなたは?、マルファーラとどのようなご関係?」


「ああ、申し遅れましたが、私はマルファーラの祖母です」

「マルファーラからこの修道院に元気いるかれらって手紙が来たんです」

「ああ、マルファーラが、おばあ様へとお手紙をしたためていたことは私も覚えて

います」

「まあ、そうなんですか、マルファーラのおばあ様」

「それで?、わざわざこんな山の上までマルファーラを迎えにいらっしゃった?」


「はい、本人が望むなら連れて帰ってやりたいと思いまして・・・」


パーシルエンドもマーテルベルもおばあちゃんと修道女のやりとりを黙って

聞いていた。


「少々お待ちください、今マルファーラを呼んできますから」


そう言って修道女は奥に引っ込んでいった。


「おばあちゃんよかったね・・・お孫さんに会えるよ」


「ファーゴットさん、ありがとう・・・あなたのおかげね」


「いいえ、私一人じゃなにもできませんでした」

「タイミングよくパーシルエンドがいてくれて、本当によかったです」


その言葉を聞いてパーシルエンドはうなずきながら微笑んだ。


しばらく待っていると、修道女に連れられて一人の女の子が現れた。


「マルファーラ・・・」


「あ、おばあちゃん・・・」


マルファーラは歳の頃なら10才くらいか。

マルファーラは戦争時以来、祖母に会えたことで感極まってつぶらな瞳から

涙があふれた。


「泣かないでいいよ・・・迎えに来たからね」

「私と一緒にアルモースに帰ろう・・・」


おばあちゃんは、お世話になった修道女にお礼を言って深々とお辞儀をした。


「おばあちゃん、この人たちは?」


マルファーラはパーシルエンドとマーテルベルを見て言った。


「おまえを迎えに来るのをお手伝いしてくださった人たち」

「こちらは魔法使いのパーシルエンドさん・・・でこちらが雑貨屋さんの

マーテルベルさん・・・お二人にお礼を言って」


「あの・・・このたびは、おばあちゃんがお世話になりました」


そう言ってペコッとお辞儀をした。

なかなかしっかりしている子だとマーテルベルは思った。


「さて、ではアルモースに帰りましょうか?」

「マーテルベル・・・私は先にお二人を連れて帰ります」


「あなたをひとり残して帰るのは不本意ですが、しかたありません」

「充分気をつけて帰ってきてください」


「分かった、心配しないで、パーシルエンドはちゃんとおばあちゃんと

マルファーラちゃんを送り届けてね」


「それでは、またあとで・・・」


そう言うとパーシルエンドはおばあちゃんとマルファーラを連れて一足先に

アスモールのおばあちゃんの家に一瞬で飛んだ」


つづく。

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