第8話:魔法使いパーシルエンド。

マーテルベルは店の奥に言って「なんでも箱」に話しかけた。


「今のお客様のお話聞こえたでしょ?」


「お孫さんに会いたいんですって・・・でもね、いくらあなたでも無理よね・・・

物なら分かるけど、箱の中から人を出すなんて今までなかったもん」

「困ったわ・・・なんとかしてお孫さんに会わせてあげたいんだけど・・・ 」


「大丈夫だよ、マーテルベル」


いきなりのことだった、なんでも箱がしゃべったのだ。


「え?なんでも箱がしゃべった」

「今まで一度もしゃべたことなかったのに?・・・・」


「私にかかった魔法が解けてきたようですよ」


「魔法?・・・魔法って?」


すると、今までずっと箱だった「なんでも箱」が、ゆっくり形を変え始めた。

マーテルベルが目を丸くしてる前で、それは徐々に人間の形の変わっていった。

マーテルベルはただ唖然として見ているしかなかった。


完全に人間の形になった箱はマーテルベルに言った 。


「どうやら、ようやく私にかけられた魔法が完全に解けたみたいですね」


「あなた誰?」


「マーテルベル、あなたが「なんでも箱」って呼んでたモノの本当の正体です」

「私の名前はパーシルエンドって言います、よろしくねマーテルベル」

「西の谷の魔法使いです」


「魔法使い?」


パーシルエンドはまだ若く、マーテルベルとさほど歳は違わないように見えた。

髪が長く、グレーの衣装にモスグリーンのローブを纏っていて、そして手に杖を

持っていた。


「どうなってるの?」


「マーテルベル・・・私にかけられていた魔法を解いたのはあなたですよ 」

「あなたは元々、癒しのオーラを持っていらっしゃるようです」

「あなたと日々一緒に暮らすうちに私にかけられた魔法が少しづつ解けて

いったみたいですね」


「私がなんで箱なんかになっていたのか、その説明はまた後にしましょう」

「とりあえず今はお婆さんの願いを先に叶えてあげましょう?」


「そんなことできるの?」


「私は魔法使いですよ、マーテルベル」


あまりの思わぬ展開、突然の出来事にとまどうマーテルベル。


「私も西の出ですから、ベネディクト修道院なら知ってます」

「おばあさんをこちらに連れてきてください」


そう言われてマーテルベルはおばあさんをパーシルエンドのところに連れて来た。


「さて、おばあさん、私はパーシルエンドと言う魔法使いです・・・」

「あなたのご希望通りお孫さんに合わせてさしあげますからね」

「これから私と一緒にベネディクト修道院へ行きますよ」


「え?どうやって行くんだい?」


「おばあさんは少し目をつむってるだけでいいんです」

「ロバも馬も使わず、一瞬でベネディクト修道院につきますからね」


「そんなことできるの?」


「マーテルベル・・・言ったでしょ私は魔法使いです」


「じゃ〜私も一緒に行きます」

「お客様のことを責任持ってちゃんと見ててあげないと」


「それはよいですけど私が一度に運べるのは私を除いてふたりまでです」


「向こうでお孫さんを見つけて帰って来るとなるとマーテルベルが行ったら

三人になってしまいます」


「ああ、でもそうですね・・・おばあちゃんとお孫さんを連れて帰ったら

またマーテルベルを迎えに行きましょう」


「いいえ・・・それはパーシルエンドに負担をかけちゃうから私は風の

シルフに頼んで風に乗って帰ってきます」


「ああ、マーテルベルはエルフだから精霊を呼べるんですね」


「シルフとお話をしながら帰るから心配しないで」


「分かりました・・・そうと決まればさっそく行きましょうか」


「あ、待って、スモールアンクルに事情説明しておくから」


マーテルベルがスモールアンクルの詳細を説明して戻ってくると、

パーシルエンドはマーテルベルとおばあちゃんを連れて西へ旅立った。

と言うか、あっと言う間にベネディクト修道院のある場所に瞬間移動した。


つづく。

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