第5話:撃退!! 牛泥棒

ある朝のこと、いつものようにオリバーが牛乳を配達してファーゴット

雑貨店にやって来た。


「おはようオリバー」


「おはようマーテルベル・・・」


今朝のオリバーは心なしか元気がないようだった。


「どうしたのオリバー?、今朝は元気ないね・・・」


「うん・・・実は昨夜のうちに、うちの牛が誰かに盗まれたみたいで、

何頭が行方が分からなくなってるんだ 」

「今朝起きて、牛がいないことに気がついてね・・・」


「まあ、大変・・・いったい誰なんでしょ、そんなことするの・・・ 」


「たぶんだけど、ゴブリンの仕業なんじゃないかって親父が言ってるけど・・・ 」


「そう・・・それは心配ね」

「ね、じゃあ今晩、ふたりで牛小屋を張り込んでみない?」

「もしかしたら牛泥棒、味を占めてまた現れるかも・・・」


「え?危険じゃないかな・・・」


「でも、なにか手を打たないと、また牛が狙われるよ」


「まあ、たしかに言えてるな・・・」


ってことで夕方、雑貨店を閉めるとオリバーとマーテルベルは

スモールアンクルをつれてオリバーの家に、張り込みにでかけた。


オリバー家を訪れたマーテルベルとスモールアンクルに

オリバーの両親が暖かく迎えてくれた。


マーテルベルはオリバーの両親に牛が行方不明になったことへの

お悔やみを言った。


牛小屋の見張りに来ただけなのにオリバーの両親は豪勢な料理で、

もてなしてくれた。


「あの〜ほんとにおかまいなく・・・およばれに来たわけじゃ

ないんですから・・・ 」


「何言ってるの・・・エランドルがエルフの国とかに行っちゃってから、

あなた、めっきりうちに来なくなったでしょ・・・」


「それに、毎朝、オリバーがお世話になってるからね」

「たんと食べて、栄養つけなきゃね」


普段、そんな料理は食べたことがないスモールアンクルはここぞとばかりに、

ひとりでマーテルベルの分までご馳走を平らげた。


暗くなってから三人は牛小屋で、見張りについた。

スモールアンクルはお腹がいっぱいになると眠ってしまった。


緊張感のないドワーフだった。


ドワーフってのは本来そういうもの、多少のことでは驚かないのだ。


「今夜も来るかな・・・・」


「正体、たしかめないとね・・・」


そして夜中の三時ごろのことだった・・マーテルベルは誰かの足音が

聞こえた気がした。

それも複数の足音、人数まで分からなかったが、オリバーもその足音に気付いた。


オリバーはすぐに松明に火をつけて、周りを照らすと、そこのいたのはゴブリン

じゃなく、人間の男達だった。

人間が5人くらいいて、おのおの、手にロープや棒切れを持っていた。


「おまえらか・・・うちの牛を盗んだのは・・・」


オリバーはいきなり虚勢を張った。


「くそ・・・見張ってやがったか・・・」


「あなたたち、このまま帰ってくれませんか?

「争えば、どちらにもいいことなんかありませんよ・・・」


「うるせえ、エルフ・・・」

「構うこたあねえ・・・顔を見られた以上、見逃すわけにゃあいかねえ」


「マーテルベルは危ないから、下がってな・・・」


するとオリバーの前に立ちはだかったのはスモールアンクルだった。


「俺に任せとけ・・・」

「オリバーとお嬢さんに指一本でも触れてみろ、 二度とおテントウさんが

拝めなくなるぞ・・・ 」


「けっ、ドワーフまでいやがる・・・」


だが、さすがの戦いに特化したドワーフでも大の男が5人素手では、

ちと部が悪い。


「スモールアンクル・・・私が支援します」


そういうとマーテルベルは精霊を呼び出した。

現れたのは、四大精霊のひとり「風のシルフ」だった。


「お願い、シルフ、スモールアンクルの手助けをしてあげて」


するとシルフは、たちまち風の渦を巻いて人間たちを吹き飛ばした。


慌てふためいてる人間たちを、スモールアンクルは男一人から棍棒を奪い取って

一人一人ボカスカ殴って行った。


人間たちは風に巻かれ、ついでに棒で打たれ、タンコブだらけになって

降参した。


「分かった・・・分かったから・・・もうやめてくれ」

「牛は盗まねえって」


「二度と牛を盗んだり、いじめたりしませんね」


「もう、こんりんざい、ここには来ないよ・・・」


「盗んだ牛は、どうしたんだよ」


オリバーが詰め寄った。


「売っ払っちまったよ・・・」


「なんだって?・・・・牛、取り戻してこいよ」


「先方はもう、食っちまってるよ・・・」

「ほれ、牛を売った金だ・・・少し使ったから減ってるけどな、それで勘弁しろ」


そう言って人間のひとりが、巾着袋を投げて、マーテルベルやオリバーが

そっちに気をとられてる間に他の男達を連れて一目散に逃げて行った。


巾着袋を開けると、たしかに中に金が入っていた。


「なんだ・・・これぽっちか・・・」

「牛は、もう戻って来ないみたいだな・・・」


「そうだね・・・彼らも、これに懲りてもう来ないでしょう」


「シルフありがとう、おかげで助かったわ」


「どうしたしまして、じゃ〜またねマーテルベル」


シルフは優しい風をマーテルベルにプレゼントして消えていった。


「ゴブリンじゃなかったね」


「疑って悪かったな・・・見た目や噂で判断しちゃいけないな」


「そうだね・・・」


「一件落着・・・牛さんは可哀想なことしたけど泥棒撃退できてよかった」


「マーテルベルとスモールアンクルのおかげだな」


「さ、家に入りましょ」

「スモールアンクル・・・何してるの?・・・行くわよ」


「ほいほい・・・」


つづく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る