第4話:それぞれの生い立ち

マーテルベルはアルモースに来る前はレンデルースと言う森に家族と暮らしていた。


彼女は一人っ子で、子供の頃はよく、おじいさんに連れられてロバのマイロに

乗って、 森の外によく旅に連れて行ってもらっていた。

マーテルベルは、知らない土地を旅するのが好きだった。


彼女のおじいさんの名前は「エランドル」


ある日、突然のことにレンデルースの森が襲われた。

襲ったのはマーテルベルと同じ種族のエルフだった。


エルフの中には平和を重んじる種族もいたが、中には徒党を組んで

遠征しながら森や村を襲って縄張りを広げていくような悪いエルフもいた。


オリバルドと言うエルフを頭にした集団がレンデルースの森に攻めてきたのだ。


レンデルースの森が襲われた時、マーテルベルとエランドルは森の外に出ていた

ため、被害を免れた。


マーテルベルとエランドルは旅の噂でレンデルースの森がオリバルドの

一団に襲われたことを知った。


森に帰った時は、美しかった木や花は倒され家は焼かれ、無残な状態だった。


森のエルフのほとんどがオリバルトの一団に命を奪われた。

マーテルベルの両親も、この襲撃によって命を落とした。

彼女は悲しみにくれたが、いつでも嘆いている暇はなかった。

オリバルドの一団はかならずまた森に戻ってくる。


家族を弔ったあと、ここにいては危険と思ったエランドルはマーテルベルを連れて、

再び旅に出た。


そしてたどり着いたのがアルモース地方の片田舎だった。


エレンデルは、その村はずれに一軒のお店をオープンした。

最初は小さな小屋で、何でも屋さんみたいなことをしていた。


人から家の修理や庭の手入れや宅配などの仕事をもらって生活をしのいでいた。

その間もロバのマイロが活躍した。


その時期にエランドルは宅配の旅先からドワーフを一人連れて帰ってきた。


エランドルは自分には商売があるのでマーテルベルの面倒を見れないことが

多かったので、孫娘の世話をしてもらうこととボディーガードを兼ねてドワーフを

連れ帰ったのだった。


そののちエランドルは行く先々で手に入れた小物を陳列して雑貨屋をはじめた。


でも雑貨屋もたいして商売にはならず、客も、ボツボツ訪れるくらいだった。

生活は貧困だったが、それでも可愛い孫と一緒に暮らせて彼は幸せで心だけは

豊かだった。


雑貨屋がそれなりに評判になるようになったのはエランドルが持ち帰った

不思議な箱が店に来てからだった。


それはエランドルがロバのマイロを連れて山に山菜を取りに行った時のこと、

その山で深い傷を負って倒れていた、ひとりのドワーフを助けることになる。


ドワーフは村が洞窟の化け物に襲われると言うので、一人果敢に化け物に

立ち向かって、なんとか化け物を倒したが自分も瀕死の重傷を負ってしまった。


そこへ通りかかったのがエランドルだった。

エランドルはすぐに治癒系に特化した精霊を呼び出してドワーフを治療した。

そのおかげでドワーフは一命を取り戻して元気になった。

ドワーフの命を救ったエレンデルはドワーフの村で大歓迎を受けた。


エレンデルが山を降りる時、そのドワーフから命を救ってくれたお礼にと

魔法の宝箱と馬車をプレゼントされた。

そしてドワーフとその家族に見送られながらエランドルはロバのマイロに馬車を

引かせて山を降りて行った。


それ以来、エランドルの雑貨屋さんは、なんでも揃うと評判になっていった。

魔法の箱は店の奥にあって、今も客の要望に答えているのだ。


店の商いもそこそこ順調よく安定していったのだが、エレンデルの

体力が極端に落ち始め、このへんで世代交替と悟り自ら現役を引退した。


基本的にエルフは不死もしくは非常に長い寿命を持ち、事故に遭ったり

殺害されたりしない限り、数百年から数千年生きるとされている。

ただし徐々に活力がなくなるなど、少しづつ老化が進んで行くようだ。


その後、エランドルはエルフが最後に行くという至福の地、ブレスガーデンを

目指してひとり旅だって行った。


エランドルにずっと一緒にいてほしかったマーテルベルは彼のブレスガーデン行きを

反対したが、もともと放浪癖があったエランドルは彼女の言うことを聞かなかった。


そしてエランドルがこの地を去る時、雑貨屋と魔法の箱は孫娘のマーテルベルに

引き継がれることになった。


つづく。

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