いっぱい食べて、大きく育て~♪


 うむ。さっきよりは活気があって宜しい♪


「ネロ様」

「はい、なんですか?」


 なにやら、呆れというか若干畏れの混じったような眼差しが、新人のナイスミドルな執事さん(アストレイヤ様の手先)から向けられた。


「どこであのような……煽って士気を高めることを学んだのですか?」

「騎士さん達の訓練所で、あのように声を上げて、上官が部下の騎士を訓練をさせていたので。参考にさせて頂きました」


 伊達に王宮をうろちょろしてないぜ☆


 いい男を眺め、あれこれうふふでむふふ♡な掛け算を妄想をするのが腐女子の嗜み! 正統派美少年から、不良風、イケメン、フツメン、イケオジ、もやしな貴族子息風から細マッチョ、ムキムキゴリマッチョまで、いろんな系統の殿方がいて目の保養! マジでご馳走様! ごはん何杯でもイケましたっ!! ありがとうございますっ!!


 と、それはおいといて。


 実際に騎士達の訓練を見学していたことにプラスして、前世で野外イベントに行ったときに、コール&レスポンスで観客を煽るのが上手かったアーティストを参考にしてみた。


 煽り上手なアーティストって、なんかカリスマがあるのよねー? あれは思わず熱くなっちゃうわ!


「み、見られていたのですかっ……」


 と、なんだか恥ずかしそうな護衛のおじさまに微笑む。


「ええ。あちこち散歩をするのが好きなので」


 趣味(イケメンウォッチでむふふ♡な妄想)と実益を兼ねた情報収集がてらにね! 洗濯場や女性使用人の休憩所辺りとか、ガチの井戸端会議なんかで、めっちゃいい情報が手に入るのよ。


 そうこうしていると、


「えっと、これは……どういう状況、かな?」


 少し戸惑った顔でやって来たのはライカ。後ろで文官がサムズアップしそうないい顔をしているので、きっといい感じに話がまとまったのだろう。


「ああ。ネロが食べ物やらなにやらで……子供達を煽って、自分がどこ行きたいか決めさせてたところです」


 蒼の端的な説明に、


「煽る?」


 不思議そうな顔。にゅふふ、きょとん顔も可愛らしいわね♪


「場を温めておきました!」


 ふふんと胸を張って言う。


「物は言いようだな……」


 やれやれ顔の蒼。


「注目! こちらのライカ様が、諸君らへこの機会を与えた方だ! 感謝するように!」


 と、また腹から声を出して子供達へ告げると、バッ! とその視線を一斉に浴びたライカがぎょっとした顔であたしを見やる。


「え? ネロ?」

「ほら、笑顔ですよ。ライカ兄上」

「そうですね。笑ってください」


 ぽんぽんと蒼がライカの肩を叩き、


「みんなでお礼を言いましょう! さあ! ありがとうございます、ライカ様!」


 大きな声で言い募ると、


「「「「「ありがとうございます、ライカ様!」」」」」」


 素直に復唱する子供達。うむ、素直で宜しい♪


 と、こんな感じで孤児院や救貧院を巡り、身体が動いてやる気のある子供や女性、お年寄り達を農場や牧場へスカウトして送り込んだ。


 身体の不自由な人達や、病気や怪我で動けない……動かせない人達は、手先が器用なら刺繍や細工物を作ったり、読み書きができるなら書類仕事や代筆、外国語ができるなら翻訳などなど、各々ができることを示してもらい、それぞれに合った仕事が割り振られる。


「傷病人を扱き使う気かっ!?」


 と、アストレイヤ様とライカに驚かれたスタイルだ。でも……


「もしもの話ですよ? もし、アストレイヤ様が少々体調を崩したとして。『なにもするな、身体が治るまでは絶対に、なにもしないで動くな。大人しく寝ていろ』、と強要されるのはお好きですか? または、『なにもできないだろう』、と。そう決め付けられることに腹は立ちませんか?」


 そう聞くと、


「確かに。それは退屈だな」


 溜め息と共に頷かれた。


「ええ。ましてや、怪我や病気が治らない方もいますからね。『死ぬまでなにもせず、ただ大人しく寝ていろ』という強制はどうかと思いますよ?」

「そうだな」

「それに、案外……」

「案外、なんだ?」

「傷病人は、自分が役立たずであるということに罪悪感を抱いていますからね。家計の足しになる、自分で稼げることができるなら、喜ぶと思いますよ?」


 ネリーちゃんの格好で、「あなたの力が必要なのです」とか、「あなたにもできることがあるのです。是非力をお貸しください」って上目使いでお願いすると、みんな快く了承してくれたぜ☆


 さっすが、神秘的妖艶ロリな美幼女♡


「側妃宮での経験か?」

「そうですね。あのクソ……いえ、母の八つ当たりに巻き込まれた人へ医者を手配して、ある程度動かせるようになると、その人達、家族にすっごく謝るんですよ。『役立たずになって申し訳ないって』何度も何度も……中には、迷惑を掛けるのが嫌だと自殺した方もいたそうです。なので、傷病人は役立たずではない、と。自分で食い扶持を稼ぐことができるのだ、と。そう証明しようかと思いまして」


 そして、本当になにもできない赤ちゃんや……ただ死を待つだけという人のみが、最後まで残って世話をされる。


 以前よりは待遇が良くなったと思うので、残りの人生を穏やかに全うできるといい。


 ちなみに、赤ちゃんは随時里親を募集中。里親候補は、ちゃんと審査して決める。里親が決まらなくても、施設で物心付くまで育てて、選んだ場所へ行ってもらう。


 いっぱい食べて、大きく育て~♪


 なんて思いながら・・・気付いたこともある。


 最初に予想していたような、酷い状態の子供や女性達は見当たらない。まあ、痩せてお腹を空かせた子供を見て、ライカは若干のショックを受けていたようだけど。それくらいは、許容範囲と言ったところか。


 でもやっぱり、幼児で王子という立場で配慮がされているのだろう。ライカ、あたしと蒼の社会見学という要素も含まれているであろう、今回の施設立て直し。


 社会見学で、ある程度の孤児院や救貧院の現状・・を見せることは許可されたとしても、外道共の作り出した惨状・・を見せることは善しとはしなかった、ということかしら?


 外道共がやったことは実際に見てはいないけど。それはきっと、子供が見るべきことではないわよね。あたしとしても、そういったことはライカと蒼には見せるべきじゃないと思ってるし。


 アストレイヤ様の、大人として、母親としての配慮と優しさで隠されたということだろう。ま、この配慮も、ある程度は予想していたことだけど。


 酷い状態の子供や女性達は既に入院措置が取られているのかもしれない。確りとカウンセリング、またはリハビリを受けているといいんだけど・・・


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