宜しい! では、諸君らに選ばせてやる!


 そんなこんなで、即行で書類をまとめ上げて清書して提出。


「ケチの付けようがありません」


 と、文官に言わせてやったぜっ☆


 ふっ、こちとら元銀行員。経営に関する企画書作りなんざお手の物よ!


 それから、目を付けていた農場、牧場主との交渉で合意を得て、土地の権利書やらなにやらをまとめ……たり、代金の支払いをしてもらうのは、アストレイヤ様のとこの交渉係兼、経理係の人にお願いしてやってもらった。ほら? 代表はライカにしてもらうとは言え、第一王子(美少年成り掛けのぷにショタ)が大金持って直接行くのはさすがに無理だし。


 農場主や牧場主には、希望するならそのまま住み込みで農業や畜産の仕事を教えてもらうという契約を締結。そのまま残って素人従事者……大半が子供であることを承知で、一から仕事を教えてくれるという人達もいれば、まとまったお金で余所に家を買って移り住むという人達もいた。


 お互いにとって、割といい感じに話は付いたと思う。


 というワケで・・・やって来ました、孤児院にっ!


 ちなみに、護衛兼荷運びを頼む予定の退役軍人さんなどはアストレイヤ様のコネを使って集めて頂きました。さっすが、国内軍閥トップの公爵家おうちのお姫様(そのせいでクソハズレなレーゲン押し付けられて尻拭いに奔走させられてるけど)ね! ナイス人望! ナイス人徳! 「我らが姫アストレイヤ様、及びご子息ライカ殿下の為なら!」と、強面ムキムキなおっちゃん、おじいちゃんな元軍人さん達が快く引き受けてくれたみたいです。あざっすっ!! めっちゃ助かります!


 ま、ネロたんあたしシエロたんの様子を探る目的もあるんでしょうね。というか、鋭い眼光が睨み利かせてるけど。その辺りは全く構わん。蒼もあたしも、中身はアラサー近い。むしろ、人手よもっと寄って来い! どんどん手伝わせてくれるわ!


「それで、どうするの? ネロ」


 と、ネロたんなあたしに、少し不安そうなお顔を向けるキラキラぷにショタライカ。


「まずは、院長や責任者……代理辺りと交渉ってとこか」


 応えるのはシエロたんこと蒼。


「ええ。そうですね。宜しくお願いしますね? ライカ兄上」

「え? 僕なの?」

「はい。責任者はライカ兄上ですので。わたしとシエロ兄上は、子供達の説得を試みようと思います」

「あ、そうだったね。責任者が了承しても、行くかどうかを決めるのは彼らだった」

「ええ。なので、ライカ兄さんは責任者の方をお願いします」

「わかった」

「ライカ兄上をお願いします」


 と、ライカと文官組、あたしと蒼組の二手に分かれ――――


 なんだか怯えたような、そして荒んだ雰囲気の子供達に向き合う。


 まぁ、満足に食事が出なくなれば……お腹が空けば、普通の人だって不機嫌になったり、体調が悪くなったり、精神が不安定になったりもする。


 それに、今日はあたし達の後ろには護衛の人が付いてるしなぁ。騎士さんプラス、ちょい強面な退役軍人さんなおっちゃん、おじいちゃん達を怖がっている可能性も否めない。


 ざっと見た限り、酷く痩せたり、衰弱しているような子がいないのが救いだ。


『な、な、ねーちゃん。俺ら、なんか怖がられてね? 主にオッサン達が』


 ひそひそと話す蒼に、


『これは仕方ないわね。あたしと蒼、中身はあれだけど、ネロたんとシエロたんは王族だし? ライカは第一王子様だし? 守られる義務が生じているというワケよ』


 ひそひそと返す。


『ぁ~……そりゃ仕方ねぇか。で、どうすんだ?』

『ふっ、見てなさい』


 蒼に宣言し、あたしは大きく息を吸い・・・


「ごはんをお腹一杯食べたいかーっ!?」


 腹から出した声に、目を丸くする子供達。そして、固まっている子。小さく頷く子。か細い声を出す子。反抗的な目であたしを睨み付ける子。


「声が小さいっ!! ごはんをお腹一杯食べたいかーっ!?」

『って、そっちの方向かよ……』


 小さくぼやいた蒼も大きく息を吸って、


「おうっ!!」


 と、返す。


「声が小さいっ!! もう一度聞く! ごはんがお腹一杯食べたいかーっ!?」


「「「おーっ!!」」」


 蒼につられたのか、数名の声が重なる。


「まだまだ声が小さいっ!! 本気でごはんが食べたいと思ってるのかっ!?」


「「「「「おおーっ!!!!」」」」」


「ちゃんと声が出るじゃないかっ! では、継ぎ当てやほつれのない服が着たいかーっ!?」


「「「「「おおーっ!!!!」」」」」


「宜しい! では、諸君らに選ばせてやる! 農場で美味しい野菜やポテト、小麦を育てて暮らしたい者はあちらへ並べ! 美味しい果物を育てて暮らしたい者はあちらへ並べ! 牧場で牛さん馬さん羊さん、牧羊犬のわんこと戯れ、ミルクやチーズ、バターを作って暮らしたい者はあちらへ並べ! また、力自慢や誰かを守る為に強くなりたい者はあちらへ並べ! 動物が苦手、体力に不安がある。けれど読み書き計算ができる、それなら自信がある、是非とも学びたいという者はあちらへ並べ! 兄弟姉妹、友人と離れたくない者は、あちらへ並べ! 離れたくない相手と相談し、よくよく考え、どこへ行くかを決めろ! そして、この機会を諸君らへ与えたライカ様へ感謝せよ! 以上だ!」


 と、六択で並ぶ場所を決め、護衛の人を割り振って整列させる。


「はい、農場へ行きたい子はあっちに並べっ!」

「牧場へ行きたい子はこっち!」

「果樹園……果物を育てたい子はこっちだ!」

「騎士、戦士志望はこっちへ来いっ!」

「悩んでいる子はこっちへ来なさい!」

「読み書き計算ができる子はこっちだ!」


 さっきまで元気のなさそうに見えた子達は目を輝かせ、自分が行きたいと思う場所へと並ぶ。おどおどしていたり、悩む顔で保留、相談の場所へ並ぶ子。疑いの眼差しで動こうとしない子などなど様々。


 うむ。さっきよりは活気があって宜しい♪


――――――――――――


 茜「さすがに、高笑いは自粛したわ。怖がらせちゃいそうだったし」ꉂ(ˊᗜˋ*)


 蒼「自粛してアレかよっ!?」Σ(゜Д゜)


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