異母兄であるライカよりも、蒼を優先する。
「ちょっと待って! なんで、そんなことっ……」
「第三王子はまともな教育を受けていない、ということにして。王子としての教育を受けているシエロへ第二王子としての正当性を持たせる……おおよそ、そのようなつもりだったのだろう」
「ええ。そうであれば、わたしの王子としての適性自体が疑われますからね。シエロ兄上の方が優秀で、第二王子に相応しい。という印象を周囲へ与えるつもりだったのでしょう」
「そ、そんなことしたら、王室規範がめちゃくちゃになりますよっ!?」
悲鳴のようなライカの声。
ライカがどれくらいクソ親父ことレーゲンへ尊敬だか好意、幻想を抱いていたかは知らないけど・・・ごめん。それ、多分ぶっ壊れる。
だって、レーゲンがやってること、これまでやって来たことは、ハッキリ言ってクズの所業だもの。更に言えば……ゲームでのレーゲンルートですることは、外道。
レーゲンは
お姉ちゃんは確かに立派に発酵した腐女子で、ヤンデレスキーではある。でも、さすがに前世で実の弟……今世では異母兄なシエロたん(中身蒼で、実は百合スキーだけどノーマルに女子が好き!)に、今世母の身代わりとしてクソ親父の寵姫になれとは言えないわ。
だって、そこに愛は無いんだものっ!?
まあ? 蒼がBLを受け入れて? 「レーゲン素敵、ぽっ♡」ってなってたら、腐女子として熱く応援することも
あたしはお姉ちゃんとして、蒼を守る。
キラキラぷにショタには、本気で悪いと思っているけど・・・異母兄であるライカよりも、蒼を優先する。そう決めている。
「国王自身が寵姫に溺れ、シエロを第二王子にすると言った時点で、既に滅茶苦茶だ。本来なら、第二王子はネロであるべきだからな」
「……そして、その規律を滅茶苦茶に乱したクソ親父の代わりに、噴出する貴族達の不満を抑えて平定し、現在この国を必死で支えてくださっているのが、アストレイヤ様です」
「え? 母上、が?」
きょとんと自分を見上げるライカへ苦笑するアストレイヤ様。もしかしたら、息子を放ったらかしにしていることに対し、少し思うところがあるのかもしれない。
「まあな。わたしとて、仮にも正妃という立場があるのでな。国が荒れると判っていて、放ってはおけんだろう?」
「貴族達に快く思われていないであろうシエロ兄上と、わたし達の存在を許容してくださっているアストレイヤ様へ、心よりの感謝を」
「ご
蒼と一緒にアストレイヤ様へ礼をした後。
「というワケで、ライカ様」
にっこりと、ライカへ微笑む。
「な、なに?」
不安そうな表情と返事。
「シエロ兄上は、王位継承権など要らない。けれど、このままだとあのクソ親父がシエロ兄上……というより。自身の、亡き寵姫への未練のため、わたしを第三王子としたように。いずれライカ様の王太子としての地位を脅かすこともあり得ると思うのです。なので、その前にクソ親父を蹴落としませんか?」
「ライカ様は、俺らと違って正当な跡取りだからな。それが順当だろ?」
「っ!?」
あっれ~? おかしいにゃ~? ネロたんの妖艶美ショタキラースマイル♡をお見舞いしたというのに、なぜにそんな、おばけでも見たように引き攣った顔で青ざめるのかしら? ここは、ちょっと驚きながらも頬を染め、決意の眼差しでネロたんとシエロたんに頷く場面では?
解せぬ。
「クッ……ハハハハハハハハハハハハハっ!! まさかっ、お前らのような幼児共に
おおう、いきなりアストレイヤ様が悪役のように笑い出した! なんかすっごく楽しそうねー。
「わたしは、簒奪などという物騒なことはお勧めしてはいませんよ? ただ、国を乱す愚王は必要無いと思いませんか? と、そう聞いているだけです」
「まぁ、誰が見ても邪魔だろ。要らんことしかしないアレは」
と、吐き捨てる蒼。
「ハッ、幼児共が簒奪の意を知り、レーゲンを愚王と言い切るかっ!?」
「無論。賢王とて色恋に現を抜かして道理を欠き、私欲を優先すれば愚王に成り果てる。よく聞かれる話です。そのときに、都度諫める。もしくは、国を荒らす前に王自体を取り除いてしまうのも、臣下の務めではありませんか? アストレイヤ様」
「全く、お前達と話していると、子供と話していることを忘れる。惜しむらくは、ネロ。お前の王位継承権が低いことよな? ライカより、レーゲンより、余程お前の方が王らしい!」
「いえいえ、そのようなことはありません。わたしより、余程ライカ様の方が……いえ。むしろ、女王陛下の戴冠も視野に入れては如何でしょうか? アストレイヤ様ならば、数多くの方が支持すると思います」
「あまり……本格的に簒奪を勧めんでくれ。つい、頷いてしまいそうになる」
「俺も、アストレイヤ様が戴冠した方が平和な気がするが?」
「アストレイヤ様がトップに立つのなら、全力でお支えしますよ?」
「この幼児共は、人を煽るのが上手い! が、残念ながら、わたしは国王という器でないよ。わたしが立てば、無用な争いが起こるだろう。女に従って堪るか、という輩もまだまだ多いからな。これ以上、諸侯にそっぽを向かれては困る」
「どう見ても沈み行くだけの泥船より、断然益があると思いますが?」
「くだらねープライドとやらなんじゃねーの? 損得より、自分の見栄や意地のが大事っつー馬鹿野郎って、なにげに多いからな」
「君もなかなか辛辣だな」
そして蒼が、ぼそりと言った。
『ねーちゃんだって、覚えあんじゃねーの? 前に生きてるときとかさ。なにするにしたって、突っ掛かって来るオッサンとかいなかった?』
『ぁ~……確かに。いたわねー。なにするにしろ、女が上に立つのが気に食わないらしく、女はお茶酌みだけしてろ勢』
『前だって、男女平等を謳いながら、普通に男尊女卑なことを当たり前の顔で言う人とかよくいたじゃん』
『男女平等は、言うは易し。然れど行うは難し……ってことかー。仕方ないわね』
やれやれという気分で、口を開く。
「やはり、クソ親父を引き摺り下ろして、その後継にライカ様。そして、ライカ様の後見にアストレイヤ様が付いた方が無難というワケですか」
「無難、というなら。それが一番無難ではあるな」
「わかりました。では、わたしとネレイシア。そしてシエロ兄上は、派閥など一切関係無くライカ様を支持し、アストレイヤ様のことを全力でお支えすると誓いましょう。宜しいですね? シエロ兄上」
「はい。俺も、ライカ様が王位を継ぐこと。そして、アストレイヤ様をお支えすることに、なんら異存はありません」
すかさず同意する蒼。
「ということで、ライカ様はクソ親父……レーゲン国王が次になにかやらかそうとしたときには、是非とも国王になって頂きます。どうぞ、お覚悟を」
「……は、母上っ!?」
−−−−−−−−−−−−
蒼「な、な、ねーちゃん。前から思ってたけど、ねーちゃんなんでそんなにアストレイヤ様に肩入れすんの?」(´・ω・`)?
茜「え? だって、アストレイヤ様めっちゃ頑張ってるじゃない。前世のあたしと大して変わらない歳で必死に働いてるの見たら、すっごく応援したくなるじゃない。がんばれ、働く女子♪」(p`・ω・´q)
蒼「えっ?」(゜д゜)?
茜「うん? アストレイヤ様、アラサーで、多分二十……六、七くらいじゃない?」(*^▽^*)
蒼「マジかっ!?」Σ(O_O;)
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