第12話 私達の未来

 隣を歩く幼馴染、近づく我が家、そして一歩ずつ怯えながら歩く僕、


「.......」

「.......」


 基本無言で歩く事が多いが、今はその基本が1番怖い。

 雪葉の事を今考えると、



 メールを送信した雪葉

 それを無視した僕

 それを見越して待っていた雪葉

 それでも逃げようとした僕

 

 捕まった僕



 流石に終わった。長年の付き合いで当然理解していたが、この様な事が起きた場合の対処方法は、


「雪葉?その.......ごめんなさい」

「何が?」


 横から見える幼馴染の顔は綺麗だったが、それ以上に圧が僕の肩を潰していた。いや実際に雪葉の両手が僕の肩に存在していますけどね。





「(ごめんなさい)」


 静かな帰り道に突然隼が私に言ってきた。



嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌




 私の.................未来は詰んでいた。





 この状況はなんだろう?

 少し歩いたら我が家、そしてコンクリートの壁にぶつかった僕の背中、目の前には一仕事やってきた様な顔の幼馴染、


「(より悪化している。謝ったのに)」


 謝罪、自分の過ちを受け止めて相手に対して自分の気持ちを伝える行為、謝罪の言葉を理解している僕は混乱していた。



「..........」

「雪葉?...........あ、あそこにUFO」



「すみませんでした」



 逃げる手段が一つ消えてしまった。僕の考案したUFO作戦は絶対に決まると自負していたが、雪葉は僕の目をずっと見ていた。目というか僕の口を見ていた感じもする。


「........」

「(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い)」


 逃げ出したい。もう見えている我が家を生まれて初めて恋しく思いながら、僕は目の前の幼馴染(狂気)に抗う事にした。


「雪葉、僕は怒ったよ」

「ナニガ?」

「自分の不甲斐なさにです。すいませんでした」

「そっか」


 幼馴染が怖い。立場が逆なら犯罪だが、今見ている通行人は微笑ましそうに通り過ぎていた。僕の心のSOSは空中分解していた。



「(はぁはぁはぁはぁ........隼かっこいい、さっきまで怒りで少し我を忘れていたけど、今はこの状況が生きてきた中で、3本の指に入るくらいに幸せだよ)」

「その........家に行きませんか?」

「行く」


 あれ?今までの格闘は何だったの?雪葉は少し距離をとってくれて少し前を歩いている。もしかして正解引き当てたのかな。



「隼...........行くよ」

「はい」



 僕達はやっと目的地に辿り着いた。これで救われた。家には絶対母さんが居る。もし雪葉が怖くなっても母さんなら対処できる。



 ガチャ........、


「母さん帰ったよ」


 僕の声にリビングから近づいてくる人物、


「あら、お帰り。雪葉ちゃんもお帰り」

「冴子さん久しぶりです」

「うん、雪葉ちゃんは綺麗になったね」

「ありがとうございます」

「もし良かったら隼也のお嫁さんになってくれないかしら?」


 この状況は慣れている。いつも雪葉に会えば婚姻を迫る母さん、この後僕が仲裁に入る流れなので、


「母さん失礼だよ。雪葉とは結婚なん」

「どうしたの?隼也」


 背筋が凍る瞬間が偶にあるが、今は絶対に凍っていると言えるくらいに背中が寒い。僕の後方に居るのは、雪葉だから絶対に振り向けない。


「どうしたの?雪葉ちゃん少し怖いよ」

「すいません。少し考え事をしていて」

「そうなの、ならゆっくりリビングで居たらいいわよ」

「ありがとうございます」


 考え事でリビング..........逃げたい。



「(今何を言おうとしたの隼?隼のお母様からのアシストを隼は最悪の形で消そうとした。隼は私と居たくないんだ。でも結婚はまだ早いのかな?でも..........近い未来に起きるんだから..........................絶対に逃さない)」



「隼也?どうしたの汗かいて」

「何でもないよ母さん」

「そうなら私は少し用事があるから家を出るけど、しっかり守りなさいよ」

「え、母さんどっか行くの?行かないでよ」

「可愛い顔してもダメよ。それじゃあね」


 消えた母さん、後ろから見てくる幼馴染、


 絶望感




「(隼..........私にも言ってくれないかな?行かないでよを、もしかして私と二人っきりは嫌なのかな?でも慣れてくれないと困るよ隼、数年後にはずっと居るんだから)」



 いつもより思いドアノブを持って僕は、



「どうぞ入って下さい」

「うん」


 静かな幼馴染を我がリビングに誘った。


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