第5話 雪葉の視線
ゆっくり教室に帰っているが、今大きく存在しているのは坂井の罪悪感であり、僕は伝書鳩以下だと自責の念で擦り潰れそうだった。
「雪葉め、邪魔するなんて.........アレ?」
もしかして...........やっぱりそうだよな。これって世紀の大発見な気がする。もし僕の勘が合っているなら坂井は、この学校で生きていけないな。
「雪葉はヤキモチで坂井のラブレターを僕から奪い取ったんだな」
幼馴染の恋心に少し親の気分にもなったが、親友が喜ぶであろう現象を目の当たりにした僕は、...............二人のキューピットになれるかな?
そんな事を考えていると、ニヤケ顔で歩いている坂井を発見した。例えイケメンでもニヤケ顔は少し微妙だった。
「坂井?どうしたんだ」
「聞いてくれるか?」
「おう」
「なんと.........美人な先輩と付き合う事になりました」
「...........マジか」
純粋な笑顔を見て僕は、少し戸惑ってしまった。坂井は切り替えたのか?なら雪葉はまた失恋したのか、嫌......多分僕の推理では初めの失恋も坂井だから、
「坂井君、君は罪深き男だね」
「そうだな......入学して数ヶ月泣かせた女性は数え切れない。そう考えたら罪深いな」
「そうだな、少しウザイがおめでとう」
「ありがとな」
祝福したい気持ちもあるが、少しウザイので雪葉の事は黙っておく事にした。でも雪葉には申し訳ない。幼馴染が失恋する所を目の当たりにするのは、やはり心が痛い。
「それじゃあお幸せに」
「おう、午後の授業も頑張ろうな」
「はいはい」
そんな会話を終えて僕は自分の席に座った顔、後ろから冷たい視線を感じた。長年感じている視線は誰から発信されたかは、一瞬で分かった。
「(怖い怖い怖いよ雪葉)」
雪葉は昔から耳が良い。その為さっきの会話も聞かれているだろう。その為不甲斐ない僕に殺気を剥き出しにして今にも半殺しにされそうな強い殺気を送って来ている。
「(雪葉さん違うんですよ。坂井を好きなのを知らなかったので、僕は何も悪くないんですよ)」
後ろは向けないので背中で語っていると、より一層強い殺気が僕の背中をエグった。
私は隼より先に教室に着いて隼の帰りを待っていると、笑顔満々な坂井君と少し戸惑っている隼が入って来た。
「(隼..........さっきアレ見たけど、ねぇ?私達って幼馴染以上の存在に近い未来なるのに、今から浮気は当然、ユルセナイかな)」
さっき隼から奪い取った手紙をトイレの個室で拝見してみると、私の想像通り彼へのラブレターだった。さっきまで涙で視界が悪くなっていた私もラブレターを見て一瞬で涙が蒸発していた。
「(やっぱり許せない。私は幼稚園の時から隼一筋なのに、隼は違ったのかな?でも隼は私の私だけの人だから絶対に絶対に渡さない)」
隼が私の少し前に座ったのを見て私は隼を凝視した。その効果はすぐ現れた。隼が少しビクッと体を窄めたので私は、
「(やっぱり可愛いな。小さい時から私が睨むとオドオドする姿が私を駄目にする。これが私と隼の結婚生活が上手くいくと感じさせる一端でもあり、逆に隼が亭主関白でも私は全然構わない。でも絶対に隼は私を見下さいし、絶対に離さないはず.......だよね?)」
あ........そうだ。坂井君って何で笑顔だったんだろう。まぁあいっか。それより隼には聞きたい事が無限にあるから学校が終わったら楽しみだね。
今日の全ての授業が終わり、坂井は何故か笑顔で教室を出て行った。そんな親友を見て少し寂しく思ったが、僕は今日お気に入りの漫画が発売される日なので、急いで教室を出ようとしたら、
「隼、来て」
冷たい声が僕を呼んでいたので、恐る恐る後ろを向くと、当然雪葉が立っていた。間違いなく嫌な気がする。さっきも怖かったけど、今はその比じゃなかった。そう思った僕は、
「ごめん」
急いで教室を出ていつも歩いている道をダッシュで逃げる事になった。そんな僕の耳には、
「隼...........待って」
「待ちなさい」
「待て」
「ま」
少しずつ薄くなる恐怖は僕の足を加速させた。雪葉に睨まれると体が凍るが、今は雪葉を見ていないので、僕は必死で目的地に行く事ができる。
「(隼....................何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で)」
私は...............彼以外見えない人間だった
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